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はなのように 2
泣かない人
泣く理由が見つからない。
わがままも、悲しみもあまりなかった。
悔しいときは隠れて泣いた。意思の通らないとき、頼み事を無下にされたとき、バカにされたとき。
全てが、見返してやろうという気持ちに変わる。
世話になるものか。
なにも伝えることはなくなった。
伝える意味を失った。
伝わる喜びはなくなった。
無駄だから。
会話をするだけ無駄だから、必要なこと以外、業務連絡以外、必要はなかった。
2
「ドラマ見て泣いちゃったよ~」
「あの映画も良かったよね」
学部生の昼食はうるさい。よくそんな時間があるものだな、と感心しながら聞いている。
「…は?なに見てるの?」
聞いていなかったので、ニュースと答えた。
実のところ、テレビはあまりついていない、点いていても見ていない。
「ぶれないね~」
と笑い合う彼女らを置いて早々に学食をあとにした。
「るる~」
と呼ばれた。
「るるは大概一人だな。」
「友達いないの?」
「何人かで行動するのが友達なら、居ないかもですが。奥田さんたちは、食事ですか。今、混んでますよ。」
「いや、今日の講義終わったから、海でもいこうと」
この、天気で。
午後の確率は50%を超えている。
あきれた顔が見えたのか馨さんと笑う、るるが呆れてるよ、奥田くん、誘えないよ、これ。
「誘う気でしたか」
「だってるる、出掛けないじゃん。」
「出掛けてますよ」
「化石ほりだ、石拾いだ、だろう?石なら海辺いいじゃん」
「午後はダメですね、またにしましょう、ご好意ありがたく、じゃ。」
と笑顔で去ろうとしたら両腕捕まれた。
「ちょっと…?」ひんやりとした笑顔で振り向けば、いやに真剣に腕を掴む二人。
「るるは息抜きしなきゃ」
嗚呼…。
3
「るるは、毎日楽しくやってるの?」
馨さんと奥田さんに連れられ曇り空の下、海へと向かう。
「心外ですね~楽しそうでしょう?好きな学問やって、好きな時間を過ごして。」
そうかなぁ、と馨さんが呟く。
「るるを初めて見たときにね、ビックリしたんだよ、こんな透明な娘見たことなかったから。すぐ奥田くんに連絡しちゃったんだよね。」
どういうことだろうか…。
存在感がないということだろうか。
「壊れちゃうんじゃないかとね、硝子みたいに」
「考えすぎですよ、それをいうなら馨さんでしょう、フラフラ危なっかしくて。」
「だから俺がいる」
思わず…黙ってしまった。
4
「間が空いたね」
「言わなくていいですよ、流していいとこじゃないですか」
「流すなよ、そういうとこだよ、るるはさ、避けてるのか、人と交流することとかさ。」
沈黙。
肯定とも否定ともとらない沈黙。
「うんざりはしますね。」
「好きなひととか居なかったの?」
沈黙。これはだいぶ記憶をたどるため。
ひとを?好きになる?
「どういうことでしょうか?」
「いや、普通に。」
「普通じゃないかもしれませんね、私。」
そういって晴々と笑った。
海は雨が降っていて、石を探すどころか車から降りることもできず、結局コンビニでソフトクリームをおごってもらった。
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