バルクオムのYoutube広告のクリエイティブが非常によくできている

最近、バルクオムという男性用シャンプーのYoutube広告に接触した。とてもよくできていると感じた点を簡単にまとめておきたい。

消費者は複雑なインサイトを抱えていることがある

消費者の心理は複雑な場合が多く、今回の広告のターゲット像は恐らく、お洒落な男子ではなく、モテることに興味がない男性でもなく、モテない自覚があるが”モテようとしている”と気が付かれるのも少し恥ずかしいというタイプの男子だと思われる。この手の人を捉えるセールスシナリオはかなり難しい。

では当該の広告がどういうシナリオだったのかを紹介する。

該当の広告は、福岡の女性モデルによるYoutube広告

動画のURLが見つからないため出演者の告知ツイートのリンクを貼るが、この人がシャンプーを紹介しているバージョンの動画広告だ。

以下、構成。

・春は出会いの季節
・男性から声をかけて欲しいと思う女性はN%(そこそこ高い数値)
・地方から来た女の子は声をかけてもらうのを待っている。
・もっと声をかけたら貴方にもチャンスがある!
・でも女の子は匂いが合わないとダメ
・香水と思ったかもしれないけど人工的な香りはダメ
・オススメはシャンプー!
・でも男子が好きな匂いと女子が好きな匂いは違う
・そこで、男子も女子も好きな匂いのシャンプーがコレ!
・アマゾンや楽天だと高いけど公式サイトなら初回が安い!

どのあたりが特に重要だろうか。

消費者の思考の先回り

通販は冒頭でターゲットの悩みの解決の可能性を示唆し、その後、店頭で購入を悩んでいる人が考えるような迷いを勢いで消していく必要がある。今回は以下のような消費者の思考を先回りしている。

・俺にもワンチャンあるかな?
・博多弁の女の子って可愛いな、モテたいな
・シャンプーを変えるだけなら楽ちんだし無駄にもならんな
・男も好きな匂いなら「自分が好きだからつけてる」って言い訳もできるな
・金はかけたくねーな。先ずはお試し価格なら買ってもいいかな。

今回は、モテたいけどモテない自覚がある、という人に対して、「自分が好きだからつけている」と嘘をつけることが重要だ。

勿論他にも外部ECではなく公式ECに誘導している点や、悩みを解決できそうな点、博多弁の美女の勢いあるトークなど、いずれの項目をピックアップしても重要で、総合的によくできている。

顧客の自分ごと化、インサイトを追求するマーケター

2018年のこの記事が最近Twitterでも回ってきた。

「1年で獲得件数10倍!バルクオム社のInstagram広告成功のポイント」

https://sns4biz.com/column/7767

“ブランドのかっこいいイメージを押したクリエイティブでは、リアル感が伝わらず、顧客にとって「この商品かっこいいな」で終わってしまっていたのではないでしょうか。「実際に手に取ってこれから使いますよ」というクリエイティブにすることで、顧客の自分ごと化を促進でき、その結果、CTRやCVRの改善につながったと考えています。”(バルクオム/高橋氏)

この会社は何年も前から、媒体によってターゲットインサイトを鋭く追求する広告素材を作ってきたようだ。

A/B テストをするにしても、ボタンの色を変えてみたという小さなレベルではなく、もっと上位のターゲットインサイトから方向性を探ることが重要だ。

カッコいいブランディングが必要な商品なのかそうでないのか、自社の商品を買い続けて評価してくれている人はどういう人なのか?

メーカー側からすると商品は自分の大事にしたい子供であり、美しいブランドイメージを損なうような広告クリエイティブには抵抗があるかもしれない。しかし、ターゲットによっては寧ろ泥臭いクリエイティブでないと一向に売れないという可能性があり、顧客の複雑でときに矛盾するようなインサイトをうまく掴むことが何より大切だということをこの広告を見て改めて認識した。