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ストーリーテラーの「精霊流し」

お盆、帰省、墓参り…8月は“鎮魂の季節”です。

先祖の御霊をお祀りするお盆は、否応なく“命のつながり”を意識させられます。数えきれないほどのご先祖さまがつないできた命を、私も子や孫に伝えていく──感謝と責任を再確認する期間がお盆なのでしょう。

お盆にはいくつかの関連行事が存在しますが、長崎など一部地域で行なわれる「精霊流し」もそのひとつ。故人にとって初めてのお盆(初盆)に、藁や木で作った船にお供え物を乗せて川や海に流します。

と、偉そうに書きましたが、私は映像でしか見たことがありません。映画の「精霊流し」は、さだまさしさんの同名の楽曲を元に製作されたもの。

さださんがフォーク・デュオのグレープ時代(1974年)にリリースした「精霊流し」は、累計 130万枚という大ヒット曲です。

本人が語るところでは、水難事故で亡くなった従兄弟の話がベースとなっており、ストーリーテラー(語りべ)という特徴が存分に発揮されています。

歌は精霊流しを題材に、故人の船をゆっくり追いかける恋人が思い出を語る“さだワールド”全開です。

私の小さな弟が 何も知らずに
はしゃぎまわって
精霊流しが華やかに始まるのです♪

長崎の精霊流しは、爆竹が鳴らされたり、大きな掛け声があったりで、しめやかに行なわれるものではないようです。

あなたの愛した母さんの
今夜の着物は浅黄色
わずかの間に年老いて寂しそうです♪

歌詞がすでに物語になっていて、一篇の短編小説のようです。実際、さださんの歌は後に小説となり、映画化されたものが多いですね。

落研(落語研究会)出身者らしくトーク(噺)が巧みで、コンサートでは時に歌っている時間より長くなることも。本人曰く、モットーは「人生は明るく、歌は暗く」。

人ごみの中を縫う様に
静かに時間が通り過ぎます
あなたと私の人生をかばうみたいに♪

例によって、オカリナで演奏されている動画を検索したら、数あるなかで大平浩平さんの演奏が気に入りました。

精霊流し を オカリナで吹いてみた (youtube.com)

理由は、大平さんだけがSF管を使っていたから。「精霊流し」は鎮魂がテーマだけに、曲調がどうしても暗く重くなりがちで、その点、SF管は音が軽やか、特に高音部がきれいに出ます。

楽器としてのオカリナの特質は、鳥のさえずりような高音の美しさにあると思っているのです。

あくまでも私個人の嗜好なので他意はありません。

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