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【詩】矢


生まれた時から、
僕には赤い矢が刺さってる。


物心つけば、ドクドクと血が流れてた。


遠くのあの子も僕と同じ、
赤い矢が刺さってる。


上手く隠してるようだけど、僕にはわかる。


僕にはよくわからないけれど、
隣のあの子は、青い矢が刺さってると
誰かが囁く。
僕にはどうでも良いけれど。


やがて


不意に


無邪気に、


下卑た、


そんな笑みを浮かべた
あの子が黄色い矢を打ち放つ。


それを合図に、たくさんの子が、
黄色い矢を打ち放つ。


黄色い矢。矢。矢。



矢の嵐。


その黄色い矢は僕の胸に、突き刺さる。


生まれた時からの赤い矢。
胸に突き刺さる黄色い矢。


ドクドク  ドクドク
ああ、流れてる。


どうせお前には、
矢なんか刺さってないんだろう。


お前らごときに、
矢なんぞ刺さるわけがないんだろう。


お前ごときが。
お前らごときが。


いつの間にか、遠くのあの子も
黄色い矢が刺さってるようだ。
ああ、あの子、
隠してた赤い矢も見えてるよ。


たくさんの矢が刺さってる子。


矢なんかこれっぽっちも刺さってない子。


本当は刺さってるのに、ヤセ我慢のあの子。


刺さってるかどうかなんて
知りたくもないけど、
矢を打ち放つ子。


お前ごときが。
お前らごときが。



やがて時が経ち



僕の胸から黄色い矢が抜ける。
赤い矢は未だ刺さったままだけど。


遠くのあの子も、黄色い矢が抜けたようだ。
赤い矢は刺さったままだけど。


僕ら、血はドクドク流れたままだけど。


遠くのあの子は、
黄色い矢を抜き捨てて、
ヨロヨロとどこかへ行ってしまった。


僕はその子が捨てた、黄色い矢を拾う。


僕の身から抜き去った、
黄色い矢も握ったまま。


僕の手には、黄色い矢が、2本。
胸には赤い矢が、1本。


僕の手の中には、黄色い矢が2本。




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