見出し画像

【詩】薔薇神殿


深い夜の静寂
大海原をあてどなく流れる
一艘の小舟


沈黙の調べが
とつとつと流れ
孤独なひとつの魂が
今、じっと見据える


薔薇は散らされ
海に撒かれる


陰鬱な目をして
伏せられた漆黒の睫毛


薔薇は散らされ
海に撒かれる


虚ろな眼差しで
渇いた頬にひとすじの風


薔薇は散らされ
海に撒かれる


浮かぶ薔薇の花びらは
海と空を薄桃色に染め上げ


やがて夜は明ける


小舟は岸に漂着し
神殿の扉が開かれる


祈れ
朝日を


踊れ
永遠の薔薇の舞


朝焼けの旋律に
身をゆだねながら


やがて貴方は気付くだろう


歓喜のベールを貴方に纏わせ
安寧の布で貴方を優しくくるむ


あたたかな聖母の眼差しを


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?