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フェイスシールドの使用目的について

 このnoteは某病院に寄せられた患者様からの投書「放射線技師がフェイスシールドを着用しないのは怖い」というご意見に端を発します。

 この投書のことは一旦横において。

 ちょっと前からテレビやTwitterでよく見かけるフェイスシールドやマウスシールド。未来的な格好良さがあったり、対策してます感も出るし、なにより表情が見えると人気があり、ついには田村厚労省もおつけになってテレビに登場し、Twitter界を騒然とさせました。

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 さらにマスクに代わるマウスシールドと謳うものまで登場(※注1)。

 ではこのフェイスシールド、どの程度意味があるのか、情報をまとめてみました。

 まずは分科会の尾身会長からの発表の要点を。

 ●マスクより効果が弱いことは言える。
 ●元々マスクと併用して目からの飛沫感染を防止するのためのもの。

 つまり、まわりの人に感染させない効果はほとんどないとの認識です。尾身先生は慎重に言葉を選んで断言を避けてますが、まともな医者ならこれらの感覚は共有していると思います。

 医療従事者を守る意味はあっても、患者様を守る意味は殆どないということですね。

 次に、11月4日時点でプレプリントではありますが、各種マスク、ネックウォーマー(※注2)およびフェイスシールドのエアロゾル減少効果について調べた論文をご紹介。

 この論文の面白いところは、発生源側から見た環境中への放出を見ている点です。まさに医療従事者から患者へ感染させるかどうかを見るにも適しています。

出典:Efficacy of face masks, neck gaiters and face shields for reducing the expulsion of simulated cough-generated aerosols

https://medrxiv.org/content/10.1101/2020.10.05.20207241v1.full.pdf

フェイスシールド効果なし

 不織布マスク(サージカルマスク)は当然、効果が高いですね。ネックウォーマー的なもの2枚重ねが意外なほど好成績です。今年2月にマスクがないならネックウォーマーでいいじゃないとママ友に勧めてた私、えらいじゃん。

 さらにグラフからフェイスシールドはエアロゾル(<5μm)にはほとんど効果がないとわかります。

 最後に、咳を模したエアロゾルをレーザー光で観察したのがこちら。

出典:Visualizing droplet dispersal for face shields and masks with exhalation valves
https://aip.scitation.org/doi/10.1063/5.0022968

フェイスシールド

 がっつり目の前の人にも広がってます。(´・ω・`)フェイスシールドですらこれなので、マウスシールドの意味の無さといったら、言うまでもなく。

 ヘリが当たれば怪我をさせうるし(万一目に入ったら大事)、さらに画像の目視確認が重要な放射線技師には業務に支障がでます。

 もし投書のとおりスタッフ全員がつけるとなると、地域の病院にも飛び火しかねないし、患者の誤解を増長しますので、意味がないものは意味がない!とはっきり示すことに方針転換を致しました(というか私が怒ったw)。

 そもそもですね。実験を見るまでもないの。頭使って考えようよ。

 エアロゾル対策と放射線対策は似てるんだけど(※注3)、放射線と違って直線性がないので「遮蔽は乗り越えがち」だし「蓄積もする」。だからシールドはほぼ意味がなくて、フィルター機能のあるマスクが大切になるし、蓄積するから換気が重要。

 なお 今後フィルター機能がついたり形状の工夫で遮蔽率が増える可能性は否定しません。あくまで現時点では意味がないってこと。それと、フェイスシールドは症状のある患者からの咳などによる飛沫を防ぐには意味があります。だから患者対応の医師や看護師には(マスクと併用の形で)必要です。また手話が必要な方々に関しては口元が見えるのが大切なので仕方ないです。(彼らはそもそも発声しないのでマスクの必要性が低い)

 ということでまとめ。

 フェイスシールドとマウスシールドは、一般の人にとっては「やってる感の演出」でしかないです。偽りの安心は他の対策をおろそかにします。実際、某小学校で子供と密になるフェイスシールド単独の先生の姿も・・・。

 ということで最後にいつものセリフで終わります。

 \換気を喚起/

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※注1 もはや詐欺としか言えません。買わないように。

※注2 論文は正確にはネックゲイターです。基本的に同じものなので、日本での知名度を考えて置き換えて書きました。厚みの印象が異なることを一応補足。

※注3 放射線防護の基本は「距離、遮蔽、時間」



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