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もう6年経つのに、死んだ猫が忘れられないので書かせてください。

こんばんは。大人姫です。
今日は死んだ猫の命日。いまだ忘れられない彼女の話を書こうと思う。

1.ウサギと彼女 

 猫を飼い始めた当初、家ではすでにウサギ(2代目)を飼っていたが、残念ながらウサギは我々になついてくれなかった。餌をあげるときですら、警戒に満ちた表情でこちらを見上げてきた。


 しばらくして、ウサギは体をめいっぱい伸ばして死んでいた。
まるで逃げ出そうとするかのようだった。

 ケージに入れたままの生活は不便だったのだろうか。普段愛情をかけなかったくせに、死んだときは涙が止まらなかった。


 地元のブリーダーから購入した猫は、ウサギとは正反対に人懐こかった。
飼い始めこそ体調を崩したが、家に慣れるとゆったりと家の隅々を探索していた。

 ちなみに彼女はブリーダー宅にいたどの猫より小さくて細くて成長不良だった。茶色なのか灰色なのか、まだら模様の毛並みだった。(母は「ゴミ色」と呼んでいた)。

 購入を希望するとブリーダーが相当嫌がったのは、きっと彼女が唯一のメスだったからだと思う。
 血統書をつけますと言われたがもらえなかったので、正確な誕生日もわからなかった。

2.彼女との生活

 彼女は人をよく見ていた。

 父に怒鳴られ泣いている私を見、父に向かって「シャー!」威嚇した。
小さくて使い物にならない牙を剥きだす彼女は、勇敢だった。それを見た父はさすがに気分が萎えて怒鳴るのを止めた。

 間違いなく彼女は、友人の誰よりも、私のために怒ってくれた。
そんな彼女に感動してまた泣き出してしまった。

 テーブルに勉強道具を広げると、最初のころは邪魔をしてきた。けれどしばらくして邪魔することもなくなった。自室にこもる私の様子をドア越しに覗いていたと、あとから聞いた。そして勉強が終わると部屋に入ってくるのだ。

 間違いなく彼女は私の親友であり、家族だった。

一緒にいるのが当たり前だった。

生物が死を迎える事実を知っているくせに、彼女が死ぬなんて全く意識していなかった。知識はあるくせに想像力を働かせないのは、本当に人間の悪いところだと思う。


月日がたち、私は大学院の修了論文に追われていた。
毎日夜遅くに帰宅して、日が昇れば大学に向かう日が続いた。

年老いた彼女は動きが緩慢になり、排泄に失敗することもあった。たぶん目も耳もろくに使えていなかったのだと思う。

それでも、私がソファに座るとゆっくりと、ゆっくりと側によってきた。
茶色と黒色と灰色のきれいな縞模様の体だ。


彼女にはもう、膝の上に登る筋力はなかった。

だからそっと頰を寄せて、じっとしていた。
私はその場を動けなかった。これが最後のコミュニケーションになるような気がして、必死に彼女の温もりを感じていた。

3.夢

修士論文をなんとか提出できた。
提出が終わった私は、翌日に予定があったが
出かけるぎりぎりまで寝ていた。疲れていた。

寝ているような寝てないような。
意識があるのか無いのか。

そんな曖昧な中、私はぼんやりと夢をみた。


そこはたくさんの本が並んでいた。
本屋なのか図書館なのかはわからない。

私の隣に茶色い「なにか」がいた。

本を持っていた気がする。
なんとなく全体が茶色で、獣の耳が生えていた。
小学生ほどの身長の人間に獣の耳が生えている。それをおかしいとは思わなかった。

彼女はふと私に振り返った。
そして笑ってくれた。

屈託のない、とても可愛い笑顔だった。


なにか話しかけた気がするが覚えていない。

気がつくと私と獣の耳の茶色い彼女は外にいた。
そこはまるで幼児が書いたような景色だった。
真っ白な世界にクレヨンでかいた三角屋根の家が2,3軒あって、中央に長くうねった川が流れていた。

さっきまでの本屋?は3次元だったのに、急に世界から放り出されたみたいに、映画のスクリーンを見ている気分だった。


茶色い彼女は屈託のない笑顔のまま、びゅん!と駆け出した。
追いかけたけどあまりに速い。
あっという間に見失ってしまった。


うつらうつらしている私を父が起こしに来た。


「猫がもうすぐ死ぬ」




ほどなくして、彼女は死んだ。
冷たくなった体の下に保冷剤を敷いて腐敗を防いだ。
翌日遺体を焼いてもらった。焼き上がった骨は細くて小さくて、形は殆ど残っていなかった。


私はあの夢が、亡き彼女が見せてくれた夢だと信じている。
勉強が終わった私を見計らってくれたのかもしれない。



間違いなく彼女は、私の親友であり、家族だった。

本当にありがとう。
生まれ変わったあなたはきっと、誰よりも愛される子になる。
たくさん愛情をくれてありがとう。
大好きだよ。いつまでも、大好きだよ。


長々と読んでいただきありがとうございました。
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