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クリエイターなら仕事も子育ても全てが糧になる:国際女性デースペシャル座談会

こんにちは! アドビ未来デジタルラボ編集部です!

3月8日は国連が定めた国際女性デー。そこで、クリエイティブ業界の第一線で活躍中の3人の女性に、仕事と家庭のバランスや、クリエイティブと子育てについて、思う存分話してもらいました。


<参加メンバー>
岡田恵利子(おかだ・えりこ):カメラメーカーにてデザインリサーチやUIUXデザイン業務に携わったのち、社会人大学院生として公立はこだて未来大学大学院に進学。当時5歳(現在小学校4年生)の娘とともにデンマークのコペンハーゲンにあるIT University of Copenhagenへ参加型デザインを学びに交換留学。現在はソーシャルデザインスタジオ・ニアカリの代表兼デザイナーとして、神奈川県川崎市を拠点に様々なデザインプロジェクトに参画。コエリ名義でも活動。写真:右

鈴木友唯(すずき・ゆい):クリエイティブカンパニーDRAWING AND MANUALにて、TVCM、番組、webCM、MVなどを手がける。NHK Eテレの子ども番組や、テレビ東京の赤ちゃん番組『シナぷしゅ』のコーナー制作などを担当するほか、子ども向けのワークショップも主宰。息子は1歳4カ月。写真:右から2番目

安田すなみ(やすだ・すなみ):動画編集や映像制作のTipsサイトを運営する株式会社Vookのソリューション営業部ディレクター。X(旧Twitter)で多くのクリエイターとつながりつつ、多くの映像クリエイターの学び、キャリア、つながりを多方面からサポートしている。3歳の息子を育てるシングルマザー。写真:左から2番目

<聞き手>
田中玲子(たなか・れいこ):カメラメーカーで映像関連製品のマーケティングを担当したのち、2018年にアドビ株式会社入社。現在はマーケティングマネージャーを務め、Adobe Photoshopなどのフォト製品とAdobe Premiere Proなどのビデオ製品のマーケティングを担当している。1歳になりたての息子と日々成長中。写真:左

リモートワークで温度感が優しくなった「子育てと仕事の両立」

岡田恵利子さん

——最初に現在の働き方について教えてください。皆さん在宅ワークですか?

岡田恵利子さん(以下、岡田):コロナ禍以前、フリーランスとして週3くらいのペースで業務委託先の企業に出社していました。それがコロナ禍でリモートワークが普及したのをきっかけに、いまでは初対面でも全部、オンラインで進められるようになったのは大きかったですね。

安田すなみさん(以下、安田):リモートワークが普及したての頃はみんながリビングで仕事をしているみたいな状況がありましたよね。打ち合わせにお子さんが入ってきたり。あの経験があったおかげで、自宅で子どもを見ながらという働き方に対して、周りの温度感が優しくなったと思います。働き方が変わったなって感じますね。

鈴木友唯さん(以下、鈴木):私もコロナ禍以降は、ほぼ在宅ワークになりました。ただ撮影で出張もあるので、そういうときは都度、家族内で調整をしています。いまの仕事は幸いクライアントも子どもに寛容で、現場に連れて行くこともできるので、そこは本当に助かっているんですが、それでも日々どうにか時間をやりくりしているので、今日はみなさんがどうされているのかぜひ聞いてみたいです。

岡田:私は会社員時代、まさにそのやりくりができなくなってしまったんですよ。だからあまり参考にはならないかも。育休からフルタイムで仕事復帰したんですけど、当時は私も夫も家族そろって食事ができる平日は全くないくらい忙しくて、仕事と家庭と育児の両立が辛くなってしまったんです。

新しいツールについて学ぶ時間もない状態で、ずっともやもやとしていて。いっそデザインを学び直したいと思って、大学院に進学しました。そこから会社を辞めて、さらに交換留学でデンマークに行くことになるんですけど。

——その話、すごく聞きたいです。お子さんを連れて行かれたんですよね?

岡田:就学前だったこともありますけど、連れて行ったほうが娘にとって絶対に良い経験になるだろうと思ったんです。デンマークには、小学校に入る前に学校に慣れるための「ゼロ年生」という制度があって、学校に慣れなかったらもう1回、ゼロ年生をやることもできます。日本の画一的な教育とは全然違う側面に触れられたのは良かったなと思います。

——自身もクリエイターとして、学びがありましたか?

岡田:いま、仕事でソーシャルデザイン(社会をどう築くかという視点で、制度やインフラなど街に関するあらゆる要素を設計すること)に携わっていますが、デンマークでは「自分たちで自分たちの欲しい社会をデザインする」という考えがとても浸透しています。

子どもから大人まで「対話」がとても重要なキーワードと考えていて、小学生でも自らデモに行って主張しますし、大学の近くにあった学生寮では寮の運営を学生自身が能動的にやりたくなる仕組みがデザインされていました。また、コレクティブハウス(共同住宅)という自分たちの終の住処を何年も対話を重ねて作り上げていく話も興味深かった。大きな刺激を受けたし、とても勉強になりました。

あと、私の留学について日本では「ご主人に理解があってすごい」という反応が多かったんですけど、向こうでは妻側が留学するケースもごく自然なことで「お互いのキャリアプランを夫婦で相談して実行できるなんて素敵な関係だね」という感じ。

そういうジェンダーギャップを体感したことも、現在のデザインに活かせていると思います。

インプットの時間がない悩みは、SNSでのつながりでカバー

鈴木友唯さん

——クリエイターにはやっぱり勉強する時間が必要ですよね。みなさんは普段、どうやってインプットの時間を作っていますか?

鈴木:私は幸い、子ども向け番組や子ども向けワークショップといったいまの仕事に日々の育児がつながっているところがあるので、子どもとの生活の中で得られる気づきがインプットになっている部分もあるかなと。

子どもを産んで育てるようになってから提案時の説得力が増すようになったと思う一方で、そうではない刺激を得たり、表現を一段階上げるためのインプットをしたりする時間を取るのは以前よりも難しくなりました。例えば舞台やライブ映画、展示などを見に行くことはなかなかできていないので、そこは結構ジレンマとしてあります。

岡田:私も、美術館とか展示を見に行くのが大好きで、前職ではありがたいことにちゃんと報告さえ上げれば就業時間中にそれが許されていたんですよ。でも育休から復帰した後はその余裕もなくなってしまって、それが本当に辛かったです。

フリーランスになってからは、打ち合わせ先に時間の余裕を持って行って、近くの展示に足を運ぶという調整が自分でできるようになりました。Xなどを通じて今まで出会わなかった種類のクリエイターとのつながりもできて、仲良くなった人から招待券をいただくこともあります。

——SNSでのつながりというのは、みなさんにとってやはり大きな存在ですか?

岡田:そうですね。Xでつながった人と仕事をする機会も多いので、助かっています。

安田:私もXでクリエイターを探して「一緒にやりましょう」って声をかけたりしています。子育てをしているとまとまった時間は確保しにくいけど、SNSなら子どもがお昼寝をしている時間とか、そういうちょっとした時間に確認ややりとりができるので、ありがたいですね。

鈴木:SNSを通じてインプットをしているところはあるかもしれないです。Instagramを巡って、こういうのを作る人がいるんだとか。そういう意味でもなくてはならない存在かもしれません。

AIの時代も役立つデザイン力を子どもの頃から養ってあげたい

——「子どもとデジタル」についても伺いたいのですが、みなさん、どうされていますか?

安田:iPadとかの電子機器を子どもに使わせるのはどうか、という意見も多いですが、うちは子ども用のiPadを用意して自由に使わせています。ツールへの抵抗をなくした方が良いと思うので。これから子どもが絵を描いたり、発表するのも、iPadのようなツールを使うようになるのかなと思っています。
岡田:うちも結構早い時期から、iPadで自由に遊んでいいよって感じにしています。コロナ禍に学校が休校になってしまったときは娘が描いた絵をLINEスタンプにしていました。その後も意図せず毎年1つずつリリースしてる状態なんですけど、最近ではレイヤーも意識して色と線を全部塗り分けできるようになっているなど、成長していてすごいなぁって思いながら見ています。

安田すなみさん

——すごいですね。そういうのができるのは、いまの子どもたちならではですね。子育てにおけるクリエイティブの重要性ってどう思われますか?

安田:デザイン力ってこれからどんな仕事に就くとしても必要なスキルだと思うので、子どもにもできるだけ絵を描くイベントとか、そういうところには連れて行くようにしています。これからはAIの時代だけど、AIも万能ではなくて、どういう言葉で指示を出すかが重要だと思うので、思ったことを言語化ができるように、絵本をいっぱい読んで言葉の引き出しを作るようにしています。

鈴木:私の母も美術館だったり、舞台だったり、いろんなところに連れていってくれたので、私もなるべくいろいろ見せるようにしていますけど、まだどれが好きとか反応はあまりないですね。

自分が子どもの頃を振り返ってみると、まだ幼かったので見たものを理解できませんでしたが、連れて行ってもらったことは覚えているので、自分の子どもにもそういう経験をなるべくさせたいなと思っています。

岡田:美術館に連れて行くのもそうですが、「ないものは作れるんだよ」っていうことは常に示しています。家に小さい3Dプリンターがあって、それでコーヒーのカプセルを収納するストッカーを夫が作ったり、名前を印字したオリジナルのマスキングテープを私が作ってあげたり。マスキングテープってすごい便利で、お弁当箱に貼って食洗機で洗っても全然よれないんですよ。「なかったら、こんな風に作ればいいんだよ」ということは、ずっと言っています。

——子どもにもクリエイターになってほしいと思いますか?

岡田:本人が好きな仕事に就いてくれればいいと思うけど、クリエイティブのスキルを身につけさせることで選択肢はできるだけ増やしておいてあげたいです。クリエイティブのスキルってどの仕事にも役立つと思うので。

何をするにしても創造力や発想力は必要なので、そういう力を広げることはできるだけしてあげたいですね。

安田:私も本人の好きな仕事に就いてもらえればと思いますが、どんな仕事でもデザイン力は持っていて損がないと思います。また私自身、工作や美術が好きなので、自然と子どもとの遊びに取り入れているかもしれません。

鈴木:うちは祖母も母も美大出身で、子どもの頃からものを作ったり絵を描くことが身近にある環境だったんです。自分が子どもと一緒に楽しくできることも、やっぱりものを作ったり絵を描くことなので、上手い下手じゃなくて、面白い、楽しいというゲージを上げてあげられたらと思います。

子育てと仕事に良いグラデーションを作るのが理想

岡田:それで思い出したのが、コロナ禍で開催した娘の誕生日会です。食べ物を出せない中で、どうやっておもてなししようかと考えて、毛糸とか工作グッズを使ってワークショップをしたんですよ。それがすごく喜ばれて。そうか、娘だけでなく娘の友達とも、自分の好きなことでつながれば良いんだって思ったんです。

鈴木:私も学生の頃からこどもとワークショップをするサークルに参加していて、子どもたちといろいろなものづくりをやってきたんですが、確かにワークショップを子育てに取り入れるのは良いですね。それが人に喜んでもらえたり、つながりのきっかけになったりするのは素敵だなと思います。

岡田:ワークショップを通じて、仕事と子育てが絡むの良いですよね。

鈴木:私は子育てと生活と仕事が良い具合にグラデーションを作るのが、理想だなと思っているんです。分けなきゃいけないと、そこに苦しさが生まれるのかなって。

岡田:まさに会社員時代は、公私が完全に分かれていたから苦しかったんですよね。世の多くの仕事がそうだと思いますけど、フリーランスになってからは、グラデーションの具合を100%は難しいまでも、意識的に調整できるようになりました。

安田:一方で、フリーランスって生活も不規則になりがちだし、産休や育休の間に仕事を誰かに渡してしまうと、取り戻せなかったらどうしようみたいな声もよく聞きます。子どもを産んだ後も、締め切りがあって子どもが病気になっても休めないとかの悩みを聞くんですけど、岡田さんはどうされているんですか?

岡田:やっぱり締切前には徹夜っぽくなってしまうこともありますが、法人化してからはできるだけ自分一人で持たないようにして、できるだけ誰かと一緒にやってもらうようにしています。もしどっちかが倒れても、どっちかが吸収できる感じにしたいなと思って、そうできるように体制づくりを頑張っているところです。

安田:私も自分で抱えがちなんですけど、やっぱりこえりさんの言うように、チームでやっていくのがすごく重要なのかなと思います。鈴木さんみたいに、代えが効かない仕事もあると思いますけど。

鈴木:いまの技術だと難しいですけど、例えばVRを使って、実際には自宅にいながら撮影現場にいるように見せて、実際に現場にいる人たちとコミュニケーションが取れるものができたら、本当にどこにいても子どもを見ながら仕事ができるようになるかもしれないと思ったりはします。実はこの間、社内でもそんな話をしたんですよ。テクノロジーが解決してくれるかもしれないねって。

デジタルとリアルをバランス良くインプットしてアウトプットする「クリエイション」がこれからは重要

——15年後、20年後にはどうなっているんでしょうね。クリエイティブやデジタルへの期待ってありますか?

安田:どうなってほしいかはわからないけど、こうなっているだろうなと思うのは、動画ですね。うちも意識してそうしているんですけど、写真より動画を撮ることが多い。自分が子どもの頃の動画なんてほとんどないですけど、いまの子どもたちが大きくなる頃には、自分のアルバムみたいなものは、動画で見るのが当り前になっていて、動画がもっと身近なものになってそうだなと思います。

岡田:クリエイターという仕事でなくても、デザインして動画を撮って編集してということが、もっと簡単で当たり前になるんでしょうね。そのときに我々デザイナーはどうなっているのかな?

鈴木:デザイナーの仕事自体はこれからもなくならないのかなと。ただ、より本質的な人間性だったり、コミュニケーション能力だったり、言語をどう絵にしていくかみたいなことがより求められるようになるんだと思います。自分の子どもにはそういう時代に活躍できるような、創造性を持った人になって欲しい。

岡田:ツールがたくさんあっても、それをどう組み合わせてどういうものにするかは、発想力がいるし人間じゃないとできない。だから小さいときからそういう力を身につけて欲しいとは思いますね。

安田:デジタルだけでなく、リアルに触れて欲しい。バランスが大事なんだと思います。

——リアルに感じてそれをどう表現していくか。体験して、インプットしてアウトプットできる力が求められますね。

岡田:その解釈がクリエイションなんだと思います。年々、求められる解釈の仕方が高度になってきているから、子どもたちにはそれがうまくできるようになって欲しいと思います。

安田:アドビさんのツールとリアルな体験を組み合わせたような、子どもの体験教室があるとすごく良いですよね。リアルでインプットしたものをデジタルにアウトプットするとか、そういう経験が子どもの中に染み込んでいくと思うので、ぜひお願いします。

——最後に、これから子育てを考えている女性クリエイターにメッセージをお願いします。

鈴木:子どもを産む前の経験も、子どもを産んでからの経験も、また、これから育てていく経験も、全部が活かせる仕事ってほかにあまりないと思います。自分の人生全てを作品に転嫁できるというか。

もちろん人生だから浮き沈みはありますけど、そこも含めて面白い。子どもと共に自分のクリエイティブも成長させていきたいなと思っていますし、そういうのも含めて面白い仕事だなと思います。

岡田:本当に自分の人生全てが、ネタになるというか糧になる。ほかの仕事もそうかもしれませんが、クリエイティブの仕事はよりその傾向が強いというか、自分が楽しんだ分だけそれが良い仕事になるみたいな感じがします。

フレキシブルに働けるので、いまちょっと働き方で悩んでいる人には、こういう世界もあるよって伝えたい。自由度は相当高いと思います。

仕事とプライベートって、明確には切り分けられない。グラデーションをつけつつ、より自分らしく自分の人生を生きたい人に、クリエイティブな仕事はきっと合っていると思います。

安田:クリエイターの仕事と子育ての両立ってまだまだ大変だと思っていたんですが、今日お2人の話を聞いて、だんだん明るい未来になってきているのがすごく良いなと思いました。私たちサポートする側も、より働きやすい環境作りを意識していきたいです。

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