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ココイチしか食べない 一日目

1食目

初日。まずは予告でも書いた通り、鷺ノ宮はココイチのカレーというやつを食べたことがない。しかし都内に住んでいて一度も食べたことがないってこともないと思うが、味も注文方式も、何も覚えていないのは確かだった。

なのでまずはメニューの確認から始めることにする。気になるポイントは二つある───ひとつ、どんなカレーがあるのか。ふたつ、満足できる量が出てくるのか。

仮にココイチを「一度は食べたことがあるが、そのことを忘れている」のだとしたら。一度行った飲食店に行かない理由は、一言で言えば「割に合わない」からだろう。最終的には「店員のサービスや立地なども含んだ総合的な判断になるとは思うが、行かなくなる要素として容易に想像がつくのは「口に合わなかった」か「量が少なかった」かだ。

これらの疑問を解決するヒントは、そのものズバリ「ココイチの楽しみ方」というページに書いてあった。カレーソースは5種類。これらをベースに様々なトッピングや辛い甘いの調節を行い、自分なりの最適解を見つけていくのがココイチというやつらしい。

ライスに関しての記述を見て、一安心する。ライスを増やした分だけソースの量も増えるというのなら、オプションとしては申し分ないだろう。ココイチに行ったことはない鷺ノ宮にも、カレーライスというものがひとえにルーとライスのバランスによって成立していることはわかる。どちらが多くても少なくてもいけない。

バランス。そう、カレーライスとはつまりバランスの料理と言えるだろう。ルーとライス、野菜と肉、スパイスと水、そして様々なトッピング。鷺ノ宮も日本で生きてきた以上、今まで何度もカレーを食べたし、作ることだってしてきた。キッズキャンプの定番であるカレーづくりがなぜ楽しいか考えたことはあるだろうか?最終的にカレールーを入れてしまえば失敗がほぼないと同時に、水量や野菜や肉などの具の量、そして火加減などで味に変化が生じ、同じ材料を使っているのにグループごとに異なる味わいが生まれて楽しいからだ。幼い頃、各グループを渡り歩いて全ての鍋のカレーを味あわせてもらった日のことを、今でも覚えている。

だが、そのバランスこそが恐怖の源であるとも言えるのではないか。トッピングのページを眺める鷺ノ宮は、子供の頃、友達の家で遊んだカスタムロボを思い出していた。数多のパーツから細かなセッティングをし、対戦へと赴くあのゲームに、いい思い出など全く無かった。鷺ノ宮の家にはカスタムロボを遊ぶためのNintendo64がなかったので、人の家で対戦に誘われたときしかカスタムロボをプレイできなかった。何をどうカスタムすればいいかもわからず、友達が教えてくれることもなく、子供同士の手心の一切ない対戦で、ボロカスに負け続けた苦々しい記憶しか残っていないのだ。

ココイチのトッピングはまるであの日の友達と同じ様に、選択を迫ってくる。なにもわからないというのに、キャンプのカレーのようなランダムに身を委ねることもできない。頼む、確認させてくれ!幼い頃の自分が心の底で叫んでいた。それぞれのパーツの違いを、何が自分にとって有用で、有用でないのかを。ひとつひとつ、確かめさせてくれ……





1食目 ポークカレー 800g

ということで確かめることにした。まずはカレーの味とライスの量を。数多のトッピングに踊らされることなく。
これが、選択の自由だ。

ひとまず、量は問題なさそうだ。というか多い。本来トッピングに使う分の金額を全てライスのボリュームに振ってるので、これで足りないなんてことがあったら大変だが。思わず一緒に来ていた栞子さんの寝そべりと写真を撮った。
ココイチが粘度の低いカレーだとはなぜか今まで考えもしなかったので、揺らぐカレーの水面を見て、海に来てしまったと思った。フリッパーズ・ギターの「海へ行くつもりじゃなかった」って、ココイチの800gのことを言ってたのか。

脳内で「Goodbye, our Pastels Badges」を再生しながら、スプーンをくぐらせてカレーを口に入れていく。うまい。辛さはノーマルだが、ちゃんと辛いことがわかる。ただ初見の自分の好みで言えば、もっと粘度の高いカレーのほうが好みに合致している。しかし必ずお腹いっぱいになることがわかっている量を目の前に手と口を動かすのは、食いしん坊にとっては幸せな時間だ。

しかしそんな幸せブーストで乗り切れるほどハッピーな量ではなかった。残り三口というところで完全に手が止まり、脳内のフリッパーズ・ギターはいつのまにかフードファイトのBGMに変わっていた。食道の奥に若干の込み上げてくる何かも感じるが、経験から言って幽門が開けばあと三口は入るはずだった。幽門がなんなのかはよくわかってないが、土山しげる先生の漫画でそう言っていたのを盲信している。ひとまずは幽門開き待ちということで、メニューとかを見て耐えよう。来店する前からこういうオーダーをすると決めていたので、店内メニューを見ていなかった。


いやおすすめのセットあるんかい〜〜〜!!!


完食。
クリアファイルを貰って退店。
午後は気絶しそうになりながら仕事をして終了。


2食目

だが夜になればまたお腹は空く。夜間の空腹というヤツは非常に強敵だ。お腹が空いたままではいられないが、一番悲しいのはそこでしょ〜もない食べ物を入れてなんの満足感もなくふて寝してしまう展開だ。夜を使いはたすのにちょうどいいだけの栄養が自分の中にあればいいのだが。

キャンペーン初日の夜ともなれば、仲間のココイチ食べた報告がタイムラインに自然と流れてくる。自分にとっては今日まで行ったことのない店舗だったが、ココイチはしっかりと全国展開をしているので、住んでいる地域に関わらず全国津々浦々の仲間たちが美味しそうなカレーの写真をアップしている。西の方に住んでいる仲間からもオススメのオーダーを教えてもらえた。これで1500円になるそうなので適宜減らして1000円ジャストにするといいと思う。

1000円分のカレーを腹に入れるほどお腹が空いているかと問われたら、正直怪しくはある。だが、タイムラインを彩るクリアファイルたちの写真が、鷺ノ宮を店舗へといざなっている。12人のメンバーが織り成す全12種類のブラインド。まだ、まだ最愛の人に、三船栞子さんに出逢えてはいない。そうだ。命と同じでクリアファイルも有限だ。あるうちに行くのが正しい。早く仲間たちに引けた報告をしたい。




2食目 ポークカレー甘口 800g

ということで確かめることにした。カレーの味を。何者にも邪魔されることなく。
これが、選択の自由だ。

目の前に現れたカレーの海とライスの島にたじろいで、思わず一緒に来ていた栞子さんの寝そべりと写真を撮った。
勘違いしないでいただきたいのだが、いくら鷺ノ宮がわんぱく小僧だったとしても、800gは多い。普段こんなに食べない。それを一日二回。フードファイターを目指しているわけでも断じてない。将来はデザイナーかライターがいい。転職したい。

だがトッピングがない分、カレーの味がよくわかる。確かに昼に食べた甘口でないポークカレーとは異なる。ただ甘くないだけでなく、甘さが旨味の一部になっているというか。ポークカレー甘口の注釈で「甘口ポークカレーは、お子さまカレーに使用しているソースと同じです」と書かれているのを見て、正直テンションが下がっていたが、思っていたよりも全然うまい。粘度こそ違うが、昔給食で食べたカレーってこんな味だった気がする。子供の喜ぶ味、ということだろうか。
もちろん量は多いが、平皿のおかげか食べている間に「全然減らない」という感覚はなかった。ちゃんと食べた分だけ減っている。だが多い。幽門って一日に何回も使っていいのか。気を紛らわせるために隣の席を見ると、なにかカレーにかけているのが見えた。

卓上調味料だ。特製スパイスと、ボトルに何も書かれていない名もなきスパイスの二種類がある。味変を期待して特製スパイスをかけてみると、確かに味が変わった、というか味の奥行きが一段階広がった感じがする。スパイスのことはなんにもわからないが、色をなじませる用の乗算レイヤーが一枚増えたような感覚だ。

そして名もなきスパイス、これが具体的に何なのかは検討もつかなかったが、口に入れてわかる。「辛さの化身」が入っていた。少ししかかけていないこのオレンジ色の粉が強烈なパンチを繰り出してくる。うまい。ポークカレー甘口のうまみをしっかり引き立てる辛さだ。こいつのおかげでなんとかなったと言ってもいい。ありがとう、名もなきスパイス……。
一応福神漬けも試したが、カレーの総体積が増えるだけで何の意味もなかった。完食。


今日のクリアファイルはミアさんと果林さんでした。



あと、ドラスタ秋葉原店の開店セールで空洞(@9d0)にJeweled Lotusを買いに行ってもらいました。

一ヶ月一万円生活
ポークカレー800g 1064円
ポークカレー甘口800g 1064円
Jeweled Lotus(EN) 12000円

合計 -4128円

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