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エジンバラ公の創設(第4回目)

3月10日夜、エドワード王子にエジンバラ公位が与えられたというニュースが飛び込んできました。TL が WBC の話題で溢れるのをそっちのけにして情報集めに夢中になってしまったのは業としか言いようがありません。
とり急ぎエジンバラ公をめぐる過去と現在までの動きについて簡単にまとめてみました。

以下参考記事になります。


エジンバラはもちろんスコットランドの大都市で、王族がこの称号を帯びることにはそれなりに象徴的な意味をもつ。

最初にエジンバラ公の称号を創設したのは1726年、当時の王太子ジョージ(のちジョージ2世)の嫡子フレデリック・ルイスで、のち王太子となったが早世、王太子の地位とともにエジンバラ公の爵位はさらに嫡子にうけつがれ、ジョージ3世として即位するとその爵位は王位に統合されて消滅した。

次にエジンバラ公の称号を得たのはヴィクトリア女王の次男アルフレッドで、イギリス海軍で勤務して元帥にまでいたった。ロシア皇帝の娘と結婚したため、ロシア海軍とイギリス海軍の両方で彼にちなんで命名された軍艦がある。
1892年、父アルバート公がドイツのサクス=コバーク=ゴータ公家の出身だった関係で公位を相続することになったが、嫡子アルフレッドが1899年急死(一説には自殺とも)してしまい後継者がなくなったため1900年に死去すると甥オルバニー公がサクス=コバーク=ゴータ公を継承したがエジンバラ公位は断絶した。

1947年、ギリシャ王家出身のフィリップ殿下がのちのエリザベス女王と結婚すると同時にエジンバラ公を創設した。即位までエリザベス女王の正式な称号は「エジンバラ公爵夫人」となる。
2021年にフィリップ殿下が死去すると公位は長男チャールズ王太子が相続したが、翌年王位を継承したため爵位は王位に統合されていったん消滅する。

国王の男子は成人後の適当なタイミングで公爵を与えられるのが通例になっているが、エリザベス女王の末子エドワード王子が結婚した1999年に与えられたのはウェセックス伯爵という格下の称号だった。そのときの王室の説明ではフィリップ殿下は将来的にエドワード王子に自身のエジンバラ公位を継がせる意向であるといわれた。
もっとも、1947年にフィリップ殿下がエジンバラ公位を与えられたときにはもちろんそんなことは想定されていないから、殿下の意向があったとしても長男チャールズや次男アンドリューを差し置いて末子エドワードに譲ることはできない。

結局、フィリップ殿下の希望通りエドワード王子に伝えられるかどうかは国王の代替わり後に新国王がそれを許すかどうかにかかっており、つまりはチャールズ国王の胸三寸ということになる。昨年のこと、王室関係者が「エジンバラ公位については何も決まっていない」と述べたというニュースが流れたときには懐疑的な見方が広がり、先行きは不透明になったという論調が多かったように思う。

しかし3月10日、エドワード王子の59歳の誕生日にエジンバラ公爵位が創設され、フィリップ殿下の希望通りとなった。
あわせてその子供たちに改めて王子・王女の称号を認めるともされている。実は本来、子供たちは王子・王女の称号を認められるはず(エリザベス女王の男系の孫にあたるため)なのだが、それを称せず家臣の伯爵の子供と同じスタイルを称していた。つまり確定相続人たる長男は儀礼称号として「セヴァーン子爵」を、娘は「レディ」を称していたのだ。今後子供たちがプリンス・プリンセスを称するのか、これまでと同じように儀礼称号(ウェセックス伯爵に格上げとなる)と「レディ」を踏襲するのかが注目されている。

これに関連しての動きだと思うのだが、前日3月9日にハリー王子の子供たちにやはり王子・王女の称号を認めるという公式の発表がされている。ハリー王子の子供たちは、エリザベス女王の(長男孫以外の子である)曾孫にあたり王子・王女の資格を持っていなかったのだが、代替わりを経てチャールズ国王の男系の孫になるため王子・王女の資格をもつようになった。それが公式に認められたのである。

これは5月に予定されているチャールズ国王の戴冠式に向けて王室の体制を整えようとしているのではないかと思う。ハリー王子の王室離脱やアンドリュー王子のスキャンダルで王室は痛手をうけている。国王の男子は公爵、孫はプリンス・プリンセスという原則を徹底するのと同時に、成人した男子王族のうちウィリアム王子についで若く国王にも近いエドワード王子の地位を強化しておきたかったのだろう。

また今回エドワード王子が与えられた公爵が一代限りで世襲できないことも注目される。世襲貴族の新設は過去半世紀で数えるほどしかない。王族であっても世襲貴族の新設には疑問を持たれかねない時代になっているのだろう。一代限りの爵位というのは現時点での妥協点ということなのかもしれない。

というわけで今後の動向が(個人的に)注目されます。

急いで書き殴ったものなので乱文失礼しました。

ではもし機会がありましたらまた次にお会いしましょう。

(カバー画像は2016年のエジンバラ公フィリップ殿下とウェセックス伯エドワード夫妻)

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