映画「ベイビーブローカー」を見てきました。
こんにちはRYUです。最近、映画といえばNETFLIXばかり・・・だったのですが、久しぶりに見たい映画があったのでシネコンに行ってきました。期待どおり良かった!ので、今日はこちらの報告をしてみたいと思います。
話題の韓国映画
今回見たのは、韓国映画「べイビーブローカー」。昨年カンヌ国際映画祭で2賞を受賞(最優秀男優賞・エキュメニカル審査員賞)した作品です。監督は5年前のカンヌでパルム・ドール(最高賞)を受賞した日本の是枝裕和監督で、主演は日本でも「半地下家族」などの出演で知られる大御所のソン・ガンホさん。お2人ともシュールな社会派の映画を作らせたら間違いない!方々なので、大いに期待してました。
他の出演者も話題性に富んでいて、韓流ドラマファンの方なら「梨泰院クラス」に出ていたイ・ジュヨン/リュ・ギョンスさんの出演にも気づくと思います。
また、私が個人的に見たかったのは、赤ちゃんを捨てる母親役のIU(韓国読みでアイユ)さん。10代の頃から5オクターブのハイトーン!を持つ抜群の歌唱力で人気の歌手だったのですが・・・
今回は精神的・経済的に苦しむ若い母親の役を見事に演じていました。すっかり成長した姿を見て、なんだか「親目線」で嬉しくなりました。ちなみに彼女、女優として活動する時の名前は「イ・ジウン」です。
韓国のリアルストーリー
さて、この映画は韓国に実在する「ベイビーボックス」がテーマになっています。「ベイビーボックス」は捨てられる子供を救うためプロテスタント系の教会が2009年に初めた赤ちゃん受け入れ施設で、2022年までに延べ1,989人の乳児を引き取ったそうです。
そして、供給があるところには需要もあるわけで・・赤ちゃんを人身売買する「ブローカー」が暗躍して社会問題になり、この映画が制作される背景になりました。
ちなみに韓国の乳児売買の問題は「ベイビーボックス」から始まったことではなく、1950年代の朝鮮戦争にさかのぼる、もっと深い根があるようです。ショッキング内容ですが、関心がある方は以下を参照ください。
ちなみに日本でも、以前「赤ちゃんポスト」が話題になったことを記憶している方は多いと思います。調べて見ると、こうした施設は韓国と日本だけじゃないようで・・・起源は約300年前に遡り、現在はヨーロッパやアメリカをはじめ、世界中にあります。愛されるべくして生まれてきたのに、受難の赤ちゃんがこんなに多いとは・・・悲しいことです。
韓国映画らしい映像
さて、背景にある社会問題はこれくらいにして、映画の話に戻りましょう。この映画は全編韓国で撮影されており、貧困層をメインに描いているので、韓国の庶民の生活感のある情景が多く映し出されます。例えばソン・ガンホさんが働くクリーニング店はこちら。ハングルを読むと、店名は「オッケイセタク」(=OK洗濯)のようです。店名も安っぽくてナイスです。
自宅や店舗、宿泊する安宿の情景も猥雑で素敵です。人身売買に手を染めねばならない貧困と陰鬱のリアリティが、計算されたアンダー(ダーク)な映像で描かれています。
韓国映画らしいメッセージ
ネタバレになるのでストーリーについては記述を控えますが、この映画には韓国映画らしい、ポジティブなメッセージがあるように思います。
「ベイビーブローカー」として赤ちゃんを売り歩く本編の登場人物は利害だけで繋がった人たちなんですが、お客を探して行商?する過程の中で、いつしか家族のような連帯感が生まれます。
人と人の繋がりは、「血縁」にこだわらず、しっかりと信頼が築かれた関係なら血縁と同等に考えて良いんじゃないか?
それが当たり前の社会になれば、ベイビーボックスに預けられた血縁のない孤児たちも、コンプレックスを持たずに生きて行けます。
貧困や人身売買というダークなテーマを描きながらも「前向きに生きること」を強く示唆しているところが、他の多くの韓国映画にも共通する
清々しさにつながっていました。
ちなみにラストは対照的に、ある意味「韓国映画らしくない」形になっています。この部分はやはり、日本人である是枝監督のメンタリティを反映しているのでしょう。韓国映画のリアリティと日本映画のメンタリティを兼ね備えた、色々な角度から考えて楽しめる作品なので、関心を持った方はぜひ劇場でご覧ください! (RYU)