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9月5日、海の近く

9月5日(土)
この日は、昨年度まで自身が代表を務め、5月末で離れたクラブのジュニアユースの公式戦・高円宮杯の日だった。
3種(ジュニアユース)年代では一番大きい大会。世間では、この大会を機にサッカーに一区切りをつけて受験モードに入るという中3も多いと聞く。うちのクラブの中3達がどうするのかは、僕にはわからないけれど。

とにかくそんな大きい大会な訳で、いろんな意味で節目になる試合。ましてや、コロナ禍のために春の大きな大会「クラブユース選手権」もなくなり、リーグ戦もなくなり⋯といった中での、久しぶりの公式戦。

観に行きたい。
というか
観に行かなければいけないんじゃないか、観に行かなければ、後々、大きな後悔をするんじゃないか

そう思って葛藤した。
ただこの日は、今現在自分が指導している高校生の練習がある。ちょうど、高円宮杯と時間はバッティングしてしまう。

とは言え、数ある練習の中の一日くらい、休ませてもらって今日だけは高円宮杯を観に行くべきなんじゃないか
自分でもそう思っていたし、ある人にもそう言われたんだけど

でもよく考えた結果
やっぱり、試合を観に行くのはやめることにした。

確かに中3の子達にとってとても大事な試合だし、これまででも一番大事な試合かもしれない。色々あったことも含めて。
とても思い入れのある子達だし。会いにも行きたいし、試合も観に行きたい。

でも
今、自分が日々関わってるのは高校生の方で
毎回毎回、本気で練習してる。本気で自分をぶつけて、本気で同じ時間を過ごしてる。

優先すべきはこっちだ。それはもう、間違いない。本気でそう思えた瞬間、この数ヶ月の間、心の中でモヤっていたものが少しだけ軽くなった。時間が僕を変えた。

中学生の彼らには、大事な試合の日ではなく、ゆっくりと話ができる練習試合のような日に改めて会いに行こう。そう思って、迷いを消した。

午前中に小学一年生のパーソナルトレーニングをした後、海の近くにある高校へ。

実はこの高校生達も、彼らが中学生の頃の一定期間、僕がコーチとして指導していた子達だ。彼らが高校生になった今、紆余曲折あってまた舞い戻らせてもらっている。
あの頃よりも彼らは大人になり、成長し、変わっている。

彼らにまた関わることになった時に決めたのは、とにかく、笑いながら練習させてやろうということだった。
毎回の練習がLive感に溢れていて、次は何やるんだろうとワクワクしながら練習して、充実したフットボール人生のひとかけらを過ごしてほしい。そんな思いで、毎日彼らに接してる。

あの頃のままの自分では、大人になった彼らに追いつけないし、舞い戻ってきた意味もない。
だからこちらも、毎回何かしらのアップデートを繰り返さないといけない。
それがまた、楽しい。

最新の自分が最高の自分でありたい。そう思いながら、刺激バリバリの毎日を過ごさせてもらってる。
この日も、今の自分ができる中での限界ギリギリスレスレの、濃くて楽しい練習ができた。

そんな練習を終えた後、サッカーだけでなくサーフィンをしているというある選手に「今度、俺にもサーフィンを教えてくれないか」とお願いをした。
サーフィンは数年前に一度、ある人に教えてもらって始めた。その後も自分で挑戦はしてたのだけど、正直、なかなか難しい。

だからせっかく身近にサーフィンしてる選手がいるんだから、教えてもらえないかなと思って。
彼も快諾してくれた。
用具のこととか、良いスポットのこととか、嬉しそうに話してもくれた。

サッカーを離れれば(もちろん、サッカーしててもなんだけど)フラットな関係でありたい。
コーチも選手も関係ない。おじさんと高校生でも、対等な人間同士、仲間同士。

自分がサッカー教えてる子に、何か別のことを教えてもらえるなんて最高じゃないか。
こういう関係性でいられるの、何だかとても嬉しい。

サーフィンうまくなりたい!

解散した後、歩いて近くのビーチへ。
台風の余波なのか、波がとても高く荒かった。そんな中でもサーフィンを楽しんでいる人を見ながら勉強して、なおかつ、この日の練習を振り返る。
練習後、すぐに海に行ってのんびりと練習を振り返れるなんて、とっても幸せな環境だ。

このビーチには、道をくぐる地下道を通っていく。地下道を抜ければ、そのままビーチに行ける仕組みになってる。

海の帰り
地下道を通っている最中にふと横を見たら、ホームレスの方が一人で座っていた。

何不自由なく好きな仕事をして、その中で悩んだり喜んだりして、この日もそんな思いを海でめぐらせた帰り道。
楽しそうにサーフィンをしている人達を眺めて自分も楽しい気分になってた帰り道に、同じ場所で同じ時間を過ごしているはずなのに、おそらく本意ではないまま、それこそ紆余曲折あってこの地下道に辿り着いたお年寄りが、独りで地べたに座っている。

気持ちがぐるぐるした。

この方だけでなく、世の中には、この国には、自分の意思に反して不自由な環境で苦しみながら毎日を暮らしている人達がたくさんいる。
そんな不条理や現実に直面すると、何もできない自分がもどかしくて仕方がない。

なんでも自己責任自己責任、新自由主義に溺れた成れの果てが今のこの国の姿で、僕はそんな今の不条理になんとか立ち向かえないかと最近真剣に悩んでいる。そのための方法を、現実的に考え始めてもいる。

でも、今ではまだ、何もできない。
僕にはまだ、力がない。
だからせめてあの方がこの地下道から追い出されることのないようにと、今は願うしかなかった。
せめて、雨風をしのげるこの屋根の下にいられますように、と。

そんな帰り道。道路工事の警備は、ほぼお年寄りがしている。
第三京浜の料金所の人も、ほぼお年寄りだ。

定年を終えて、本来ならばゆっくりと暮らしてほしい人達なのに、こうしたエッセンシャルな仕事をされている。

「病気を理由に辞意表明した総理にお疲れ様も言えないなんて」
と誰かが言っていたが、正直、アホかと思う。

嘘を重ねて公文書を改竄し破棄してなかったことにして、身内やお友達のため、私利私欲のために権力を使い果たし、アメリカとロシアの犬に成り下がり、拉致問題を何一つ解決出来なかった。せっかくある力を、弱者のためじゃなく、徹底して強者側のために使った無能な公権力の人物に対して、お疲れ様などという義理は一切ない。

本来ならば、今まで一生懸命働いて、世の中のために身を粉にして働いてきたのに、まだ今も毎日暑い中、制服を着て道に立ってるような
僕らが毎日出会える場所にいるそんな方々にこそ、僕らは最大限の敬意を払わないといけない。

話が飛びました。悪い癖だ。

そんなたくさんのことを、海の近くで思いながら過ごした、9月5日という一日でした。

この日だけじゃない。毎日、こんないろんな想いに駆られている。
サッカーなんて、僕の全てじゃない。僕の一部に過ぎない。

力が欲しい。これまでの人生で一番、そう思ってる。それを現実に変えるために動き始めたけれど、もっとスピードを上げないとな⋯と焦ってる。僕にはあまり時間がない。

【 お願い 】日本で初めての《 コーチのための労働組合・コーチユニオン 》をつくるために、現在、クラウドファンディング に挑戦しています。日本のスポーツ界の仕組みを変えるために、本気でチャレンジします。この本気がもし届いたならば、是非ご支援願えないでしょうか。残り2週間を切りました。皆さんの力を、貸して下さい。宜しくお願いいたします。



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