メモ-論文 (海外)目標管理訓練はADHD成人の実行制御を改善する:注意ネットワーク理論を用いた効果検証のためのオープントライアル



Goal Management Training (GMT) の詳細説明

https://bmcpsychology.biomedcentral.com/articles/10.1186/s40359-022-00902-9

論文タイトル

"Goal management training improves executive control in adults with ADHD: an open trial employing attention network theory to examine effects on attention"

著者

  • Daniel A. Jensen

  • Astri J. Lundervold

  • Jan Stubberud

  • Anne Halmøy

  • Jan Haavik

  • Lin Sørensen

出版年

2022年

出版誌

BMC Psychology

DOI

10.1186/s40359-022-00902-9

研究の背景と目的

背景

ADHDの成人は、実行機能(EF: Executive Function)の欠如により、計画、組織化、時間管理、自己制御に困難を抱えることが多いです。目標管理訓練(GMT)は、これらの実行機能の欠如を補うために開発されたプログラムです。GMTは、具体的な目標設定と自己モニタリングを通じて、計画と時間管理のスキルを強化することを目的としています。

目的

この研究の目的は、GMTがADHDの成人における注意ネットワーク(特に実行制御ネットワーク)の改善にどのように寄与するかを調査することです。また、GMTの効果が訓練終了後も持続するかどうかを評価します。

研究方法

参加者

  • ノルウェーのベルゲン市の外来クリニックから募集されたADHD診断を受けた成人34名。

  • 年齢: 21〜62歳(平均39.05歳)

  • 診断基準: DSM-IV/5に基づくADHD診断

  • 参加者のうち、21名が2回以上の評価ポイントを完了し、最終分析に含まれました。

訓練プログラム

  • 目標管理訓練(GMT):

    • 9回の2時間グループセッションで構成され、臨床心理学者とコ・セラピストによって実施。

    • 各セッションでは、目標設定、自己モニタリング、問題解決のスキルを学び、日常生活での応用を促進。

    • 参加者は宿題を完了し、その経験を次のセッションで議論しました。

評価方法

  • 改訂版注意ネットワークテスト(ANT-R):

    • 実行制御、警戒、定位の3つの注意ネットワークを評価。

  • ADHD自己報告スケール(ASRS):

    • ADHD症状の重症度を評価。

  • ミニ国際神経精神医学インタビュー(M.I.N.I. Plus):

    • 他の精神障害の存在を評価。

  • ウェクスラー簡易知能尺度(WASI):

    • 知能指数を推定。

結果

実行制御ネットワーク

  • 改善の概要:

    • 訓練後、参加者の実行制御ネットワーク機能が有意に改善。

    • 特に、対立する刺激を検出し解決する能力が向上。

    • 改善は訓練終了直後に観察され、6か月後のフォローアップでも持続。

警戒ネットワーク

  • 結果:

    • 警戒ネットワークには有意な変化は見られませんでした。

定位ネットワーク

  • 改善の概要:

    • 訓練後のフォローアップ評価で、定位ネットワークの改善が観察。

    • 適切な刺激に迅速に注意を向ける能力が向上。

ディスカッションと考察

GMTの効果

  • 実行制御の改善:

    • GMTは、実行制御ネットワークの機能を向上させることが示されました。これにより、ADHDの成人は日常生活における計画、組織化、時間管理が改善される可能性があります。

  • 訓練の持続効果:

    • 訓練後6か月のフォローアップでも改善が持続していることが確認されました。

限界と将来の研究

  • 限界:

    • サンプルサイズが小さいため、結果の一般化には限界がある。

    • オープントライアル形式であるため、プラセボ効果や他の外部要因の影響を完全に排除することはできません。

  • 将来の研究:

    • ランダム化比較試験(RCT)を実施し、GMTの効果をさらに検証することが推奨されます。

    • fMRIなどの脳画像技術を用いて、GMTの神経生物学的メカニズムを解明することが重要です。

結論

GMTは、ADHDの成人において実行制御ネットワークを改善する効果があり、これにより注意制御の問題が軽減される可能性があります。この研究結果は、GMTがADHDの非薬物療法として有望であることを示唆しており、さらなる検証が求められます。

参考文献

  • Jensen DA, Lundervold AJ, Stubberud J, Halmøy A, Haavik J, Sørensen L. (2022). Goal management training improves executive control in adults with ADHD: an open trial employing attention network theory to examine effects on attention. BMC Psychology, 10:207. DOI: 10.1186/s40359-022-00902-9


Goal Management Training (GMT) の研究結果と結論の詳細説明

研究結果

1. 実行制御ネットワークの改善

  • 概要: 目標管理訓練(GMT)は、参加者の実行制御ネットワーク(ECN)の機能を顕著に改善しました。これは、参加者が対立する刺激を検出し、解決する能力が向上したことを示しています。

  • 具体的な成果:

    • 訓練後、参加者は実行制御タスクでより高いパフォーマンスを示しました。

    • この改善は訓練終了直後に観察され、6か月後のフォローアップでも持続しました。

    • 具体的には、訓練前後のANT-Rテストで反応時間が短縮し、正確性が向上しました。

2. 定位ネットワークの改善

  • 概要: 訓練後の評価で、定位ネットワーク(オリエンティングネットワーク)の機能が改善されました。これは、適切な刺激に迅速に注意を向ける能力が向上したことを示しています。

  • 具体的な成果:

    • 訓練後、参加者は視覚的な注意シフトタスクでより迅速かつ正確に反応しました。

    • この改善も6か月後のフォローアップで確認されました。

3. 警戒ネットワークの結果

  • 概要: 警戒ネットワーク(アラートネスネットワーク)には有意な変化は見られませんでした。

  • 具体的な成果:

    • 訓練前後およびフォローアップで、警戒ネットワークに関する測定値に有意な変化はありませんでした。

    • これは、GMTが特に実行制御と定位ネットワークに効果的であることを示唆しています。

結論

1. GMTの効果と持続性

  • 実行制御の改善: GMTは、ADHDの成人における実行制御ネットワークの機能を有意に改善しました。これにより、日常生活における計画、組織化、時間管理のスキルが向上し、自己制御能力が強化されました。

  • 持続性: 訓練後の改善は6か月後のフォローアップでも持続しており、GMTの効果が短期的ではなく長期的であることが示されました。

2. 訓練の適用範囲

  • 定位ネットワークの効果: GMTは定位ネットワークの改善にも有効であり、視覚的注意シフトの迅速性と正確性が向上しました。

  • 警戒ネットワークの限界: 一方で、警戒ネットワークには有意な変化が見られず、GMTの効果は主に実行制御と定位ネットワークに集中していることが示されました。

3. 臨床的意義と将来の研究

  • 臨床的意義: この研究は、GMTがADHDの成人に対する非薬物療法として有望であることを示唆しています。特に、実行機能の改善に関して有効であり、日常生活での自己調整能力の向上が期待されます。

  • 将来の研究: さらなるランダム化比較試験(RCT)が必要であり、より大規模なサンプルを用いた研究が推奨されます。また、fMRIなどの脳画像技術を用いて、GMTの神経生物学的メカニズムを明らかにすることが重要です。


    感想。目標管理訓練(GMT)は実際どんな方法で行われているのか気になった。セルフモニタリングよりもよさそうだと考えた。
    長期報酬に対して、目標管理訓練を行えればADHDでも達成できる確率があがる。気になった点は、母数が少ないこと。これを補うには同じような論文や結果が沢山でてくれば結論は同じように考えられるかもしれない。

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