メモ-論文(海外)ニコチン依存およびADHD症状の軽減におけるMAO抑制の役割

論文の詳細なまとめ

タイトル:
"Tobacco and ADHD: A Role of MAO-Inhibition in Nicotine Dependence and Alleviation of ADHD Symptoms"
(日本語訳:タバコとADHD:ニコチン依存およびADHD症状の軽減におけるMAO抑制の役割)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9039335/pdf/fnins-16-845646.pdf

著者:
Mairin Rose Taylor, Kelly Carrasco, Andres Carrasco, Arindam Basu

所属組織:

  • Mairin Rose Taylor: School of Health Sciences, University of Canterbury, Christchurch, New Zealand

  • Kelly Carrasco: School of Education, Victoria University of Wellington, Wellington, New Zealand

  • Andres Carrasco: School of Health Sciences, Massey University, Wellington, New Zealand

  • Arindam Basu: School of Health Sciences, University of Canterbury, Christchurch, New Zealand

研究の目的

この研究の目的は、ADHDと喫煙の間の神経生物学的経路を明らかにし、特にモノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害の役割がニコチン依存とADHD症状の自己治療にどのように関与しているかを調査することです。

実験の内容

データ収集

  • データソース: OVID MEDLINE(R), Embase, Cochrane, PsycINFO, SCOPUS

  • 対象期間: 2000年以降

  • 対象研究: ランダム化または非ランダム化研究、前向きまたは後向きの自然研究

方法論

  • レビュー手法: スコーピングレビュー

    • スコーピングレビューは、既存の知識のギャップを特定し、現象に関連する研究データの主要な特性を特定するために複数の経験的研究を統合するために選ばれました。

検索手順

  • 検索キーワード: 「ニコチン、タバコ、喫煙タバコ、ベイピング、電子タバコ; ADHD、注意欠陥、多動、ドーパミン、モノアミンオキシダーゼ、MAO、またはMAO抑制」

結果

MAO抑制とドーパミン調節

  • MAO阻害化合物の特定: タバコ煙中には複数のMAO阻害化合物(例:2,3,6-トリメチル-1,4-ナフトキノン、2-ナフトアミン、ノルハルマン、ハルマン、ファルネソールなど)が含まれています。

  • ドーパミン放出の増加: これらの化合物がドーパミンの放出を増加させるメカニズムが、動物モデルおよびヒトモデルで示されています。特に、タバコ煙の成分がドーパミン作動系に強力な影響を与え、ADHD症状を軽減する可能性があるとされています。

ADHD症状の調節とニコチン消費

  • 喫煙開始年齢: ADHDを持つ人々は、一般的に若い年齢で喫煙を開始し、その後も喫煙を続ける傾向があります。

  • 喫煙の維持と禁煙の困難さ: ADHDを持つ人々は、喫煙を続けることが多く、禁煙が難しいと報告されています。

  • ニコチンとADHD症状の軽減: ニコチンとMAO阻害化合物がドーパミン作動系に及ぼす影響により、ADHDの症状が軽減されることが示唆されています。

ADHDとタバコおよび電子タバコ中のMAO阻害剤

  • タバコおよび電子タバコ中のMAO阻害剤: タバコおよび電子タバコには、ニコチンに加えてMAO阻害化合物が含まれており、これらがADHD症状の調節に寄与する可能性があります。

  • MAO阻害剤の影響: MAO阻害剤がドーパミンの可用性を増加させることで、ADHD症状の軽減に重要な役割を果たすと考えられます。

結論

  • ADHDとタバコ依存の関係: ADHDの人々は、タバコおよび電子タバコ依存のリスクが高く、その背景にはMAO阻害剤が関与している可能性があります。

  • 自己治療のメカニズム: これらの化合物は、ドーパミンの可用性を増加させることで、ADHD症状の自己治療に寄与する可能性があります。

  • 今後の研究の必要性: さらなる研究が必要であり、特に長期的な人口ベースの研究が求められます。

研究の意義

この研究は、ADHDと喫煙依存の関係において、MAO阻害剤の役割を明らかにし、タバコ依存の予防と治療のための新しい介入方法を示唆しています。また、ADHDの自己治療モデルに対する理解を深め、公共保健政策や臨床実践における新しい視点を提供します。

対象の人数:
この研究では、16,434名の参加者が含まれています【158:14†source】。

参考文献:
Taylor MR, Carrasco K, Carrasco A, Basu A. Tobacco and ADHD: A Role of MAO-Inhibition in Nicotine Dependence and Alleviation of ADHD Symptoms. Front. Neurosci. 2022;16:845646. DOI: 10.3389/fnins.2022.845646.

この研究で分かったことは、ADHDの人がタバコを使用してADHDの症状を自己治療している可能性があるということです。以下に、研究で明らかになった主要なポイントを詳しく説明します。

研究の詳細と結果

1. MAO阻害とドーパミン調節の関係

  • タバコには複数のモノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害化合物が含まれています。これらの化合物は、ドーパミンの分解を抑制し、その結果、ドーパミンのレベルを上昇させます。

  • ドーパミンは注意力、行動制御、感情調節などに関与する神経伝達物質であり、ADHDの症状と密接に関連しています。

2. ADHD症状の軽減

  • ADHDの人々は、しばしば自己治療としてタバコを使用している可能性があります。タバコの成分(特にニコチンとMAO阻害剤)が、ドーパミンのレベルを上昇させることにより、ADHDの症状(注意欠陥、多動性、衝動性)を軽減する役割を果たしていると考えられます。

  • ADHDを持つ人々は、一般的に若い年齢で喫煙を開始し、その後も喫煙を続ける傾向があり、禁煙が困難であることが多いです。

3. ニコチンとADHDの症状管理

  • ニコチン自体がドーパミン作動系に影響を与えることが知られていますが、タバコに含まれるMAO阻害化合物がこの効果を増強している可能性があります。

  • ADHDの人々がタバコを使用することで、ドーパミンレベルを高め、結果的に症状を自己治療していると考えられます。

結論と今後の研究の必要性

  • ADHDとタバコ依存の関係: ADHDの人々は、タバコおよび電子タバコ依存のリスクが高く、その背景にはMAO阻害剤が関与している可能性があります。

  • 自己治療のメカニズム: タバコに含まれるMAO阻害化合物は、ドーパミンの可用性を増加させることで、ADHD症状の自己治療に寄与している可能性があります。

  • 公共保健の視点: これらの発見は、ADHDの人々に対する喫煙防止プログラムや禁煙支援の重要性を強調しています。また、ADHDの治療における代替アプローチの開発に寄与する可能性があります。

  • さらなる研究: 長期的な人口ベースの研究が必要であり、特にタバコおよび電子タバコの使用がADHDの症状に及ぼす影響をより深く理解するための研究が求められます。

この研究は、ADHDの症状管理におけるタバコ使用の複雑な役割を明らかにし、より効果的な治療および予防策の開発に向けた重要な知見を提供しています。


感想

私は18歳から15年以上、1日2箱のタバコを吸っていた。その時期は、ADHDの症状がかなり緩和されていたと感じる。しかし、タバコの量が多かったため、身体的に疲れやすく、常にせき込んでいた。また、気分も鬱気味であることが続いていた。

タバコをやめると、ADHDの症状が18歳の頃の状態に戻り、気分のアップダウンや多動、衝動が激しくなった。最近になってADHDの診断を受け、自分の症状について理解できるようになったが、振り返ってみると、運動を全くしていなくてもタバコを吸っていた時期はADHDの症状がかなり抑えられていたと感じる。タバコがADHDの症状を抑える一助となっていたのではないかと考えている。

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