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概念的に考察するローランドの名言

最近さまざまなメディアで目にすることが多いホストのローランド(敬称略)。彼には数多くの名言があり、どれもひねりの効いたものでしばしば唸らされる。吐き出す言葉はさながらキャッチコピーのようであるが、ローランドはローランドという商品(便宜上商品という他ないので失礼ですがそう表現します)を自分で隅々までデザインし尽くしたからこそ、その魅力を的確に伝える言葉を選び抜くことができるのだ。しかしそこにはいくつかのパターン化されているテクニックもあるので以下ではローランドがよく使う2つの表現技法ついて解説していく。

①上位概念への並列化や超越

これはつまりある集合の中のローランドをその集合の母体と同位、またはそれより上位概念に位置付けることである。例えばチョーヤ梅酒のキャッチコピーで「これはもはや梅酒というよりはチョーヤだ」というものがある。チョーヤが各社によって展開される梅酒のラインナップの一つという枠組みから、ビールやハイボールといったお酒のジャンルという概念への上位化を果たしている。

つまりはローランドという概念をまず単純に上位へ据えて、話を展開する際の喩えに使う具象的なモノや事象とのバランスを鑑み、ちょうど良い塩梅に自分を位置付け絡めていく。また、ローランドはそこに関わった事物の概念も同時に引き上げる。

「冴えない男と飲むリシャールより、ローランドと飲む雨水。」(ローランド語録)

これは一般的に飲み物としては下位の概念に位置する雨水を、人間の技で丹精込めて精製をされた高級酒を超越する飲み物への上位概念化を促している。

「多分カニ俺が接客したら前向きに歩く。」(ローランド語録)

これも類似のパターンであるが、ここでは雨水の場合と異なり、喩えに使う事物が能動的な上位概念化を果たし(前に歩くカニは存在しますし、それを上位概念と言うのは少し無理があるかもしれないが、あくまで歩行の上位概念を人間の二足歩行とした上で論じている)、ローランドに関わることでそれの相対的な価値が勝手に上がるというだけでなく、ローランドが引き上げ、カニが押し上げるという相乗効果を生んでいる。


②種々様々な物体事象への客体化

わかりやすい例で言うと、「ホストやるために生まれてきた男だと言われるけど、ホスト業界が俺のためにできた」のようなものだ。“一般的に自分が主体となってそこに関わる、もしくは手に入れたりするものが勝手に向こうから迎えに来る"と説明すると②のタイトルの意味も少しは分かり易いかも知れない。「〜してローランドのもとへやってくる」や「〜でローランドに酔いしれる」的に擬人化して用いられるケースが多い。

さらに余談ではありますがここでは「ホスト業界が俺のために出来た」と言う逆転的な構造を述べる前に、あえて「ホストやるために生まれてきた男だって言われるけど〜、」と一般的に連想される構造を述べることで“わかりやすさ"と"タメ(助走)"を作っている。このわかりやすい前フリを含めて自信満々に言い切ることが小気味良いリズム感を生んでいる。


おわりに

上記で概念的な話を紹介してきたがこれらを理解していたからといって、必ずしもローランドのようにひねりの効いたセリフを言えるわけではない。上記のような抽象概念の理解をもってそれを具体的なモノや事象で表現する。その作業を場面に合わせて出し入れする早さがローランドの凄さである。それにはやはりローランドという自分自身についての細かいコンセプトデザインが必要不可欠なわけである。しかし、あらゆる媒体で惜しみのない自己投資を行っている様を見るに、そこに一切の隙は無さそうである。








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