女子プレイヤーは音楽ゲームプロゲーマーの夢を見るか

再びこんにちは。"観るe"あでりーです。
前回はeスポーツの女子プロについて、リアルスポーツ・マインドスポーツの現状に触れながら予想しました。

ところで音楽ゲームのプロリーグであるBEMANI PRO LEAGUE(以下BPL)はSEASON2(主に2022年度に開催された大会)で述べ80人のプロ選手を生み出しました。その中には2人の女性プロプレイヤーを含んでいます。では、今後プロシーンの中で女性がどう扱われていくのかについて予想していきます。

1.音楽ゲームに女性プロが生まれた背景

音楽ゲームがトップリーグに女性プロを輩出するに至った要因を考えてみます。
まずシンプルな理由として、音楽ゲームは女性プレイヤー層が多いことが考えられます。加えて、音楽ゲームで生計を立てているストリーマーが(男女含めて)かなり少なく、自分の腕前を示すには個人大会のKonami Arcade ChampionShip(以下KAC)や非公式大会など、人と競い合う場に出ていくことが必要という意識が高いように見えます。
もう一つ、BPLが高額報酬を掴み取る場ではなく、特別な音響と演出によるプレイヤーにとっての夢舞台である位置づけであることも影響していそうです。アドバイザー等のスタッフとして参加するケースもありますが、あの場で自らプレイするにはプロになるしかない。憧れの舞台に立ちたいがためにプロを目指すという層も(男女含めて)多そうです。
こうした背景より、女性でもプロの門戸を叩いた人が現れたのと考えています。また、潜在的にこれから腕前を上達させてプロの舞台に立ってみたいと思う女性層もまだまだいるかもしれません。

2.音楽ゲームの特異性

さて、音楽ゲームはスポーツです。
いきなり何を言っているのかと思われたでしょうが、全身を使うDanceDanceRevolutionは見たまんまeスポーツではなくスポーツだと言われています。それ以外のBeatmania,SOUND VOLTEXなど手を使うだけに見えるゲームについても腕の持久力が問われる場合があり、曲によっては"体力譜面"などと言われるものも存在します。よって筋力差が結果に影響を与えうる世界であり、であれば男女差もある程度あるよね、という考え方もある程度是認することができます。プロではありませんが個人戦のKACではフリー部門の他に女性部門が設けられ、女性の活躍の場が別に設けられています。
しかしながら音楽ゲームは筋力だけで優劣が決まるわけではなく、集中力やリズム感については男女差がないように思えます。同じように筋力が勝負に決定的に影響を与えすぎないスポーツの事例はないのでしょうか。

3.スポーツとマインドスポーツの中間の例

スポーツの中にはある程度マインドスポーツの要素を含むものがあります。オリンピック競技の中で言えば、氷上のチェスと呼ばれるカーリングが好例です。
カーリングは競技としては男子と女子が分かれています。これは他のスポーツがそうなっているからという考え方もできますが、馬術という(人の)性別を問わない例外があるためそうとは言い切れないのではないでしょうか。またパラリンピックのボッチャもかなりカーリングに近い要素を含んでいますが、こちらは男女混合で行われています。
ではなぜカーリングは男女が分かれているか。やはりそこには筋力差があるものと考えます。男子のカーリングの試合を見ていると、やはり勝負所でのストーンの速度、威力は男子の方が高い。カーリングの戦略上常にストーンを全力で投げる必要はありませんが、威力の高いストーンを投げられるのか投げられないのかで比べれば、投げられる側の方が競技レベルとしては高いものと考えます(しかしながらそれだけが勝負を決定づけるわけではない証左として、オリンピックで混合ダブルスが設けられており、それが競技として成り立っているものとも考えます。これは卓球・バトミントン・テニスでも同じでしょう)。決定的な要素ではないとしても、体格差が影響するスポーツについては男女を分けた方が良いのでしょう。
ところで、日本国内においてカーリングは女性人気のほうが高いです。これについては、直接的には男子の競技を見た人口が少ないこと、もう少し言えば観戦する人の競技に対する理解度や視聴頻度、よりレベルの高い競技を見たいというニーズが高くないことが原因ではないかと思われます。

4.音楽ゲームプロリーグと女子プロの未来

前章の事例から言うと、(ダブルス大会でもない限り)競技シーンとしては男子・女子を分けた方がいいのでは、という結論に近づきます。それでうまくいく未来が見えるでしょうか。他スポーツの前例から考えてみます。

  • 男子プロと女子プロを分けて、レギュレーションも分ける。
    BEMANI PRO LEAGUEは最高難度の曲の勝負だけではなく、中難易度の曲の精度を競い合う楽しみを提示しました。それであれば、女子リーグを新たに創設し、レギュレーションを男子は高難易度重視・女子はより中難易度寄りにすれば、観る側にとっては楽しみ方の違うリーグとなり両方飽きずに観られそうです。

  • トップリーグに女性限定枠を設ける
    一方で男女混成を義務付けるという方向性も考えられます。現状よりさらに中難易度の曲の試合を重視したレギュレーションにすることで、そのあたりを主戦場とする女性プレイヤーを発掘していくやり方もありそうです。

ただ、両方ともに性別の制約を設けることで、集まる選手層に制約が出ることにより、現状ではある程度競技レベルが低下してしまうことは予想できます。一方で、今プロシーンを観ている視聴者の大半は目が肥えているうえにスコア表示が出る影響でプレイ単体での巧拙の差が数値で見えてしまうため、今のプロシーンより低いレベルで争うものを提供されることは許容されないのではないか、つまり既存視聴者層が離れていくのではと推測します。何かの機会で初心者の視聴層が爆増すればその限りではないですが。

そうであれば、現状は競技レベルを優先して特に女性優先枠を設けないで、女性プレイヤー全体のレベルアップを待つという形でもよさそうです。音楽ゲームはすでに多くの女性プレイヤーに愛されており、さらに幸運にも今のプロシーンのレベルに到達できる女性が現れたのですから、他のeスポーツに比べ焦って女性に参加してもらうための制度設計を考えることもないでしょう。
KACは10thにして初めて今のBPL採用機種の大会に女性部門が設けられました。今後も女性部門が開かれつづけるとしたら、女性全体のプレイレベルは確実に高まっていくことでしょう。私のような素人がどうこう考えなくても、すでに多くの女性にプロへの門戸を開く準備はできているのかもしれません。

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