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『イジらないで、長瀞さん』に関する考察 センパイの恋はどこから始まったのか編


「恋とは理不尽なものである。」
~詩人アランカリン~


①何故主要人物以外に顔が無いのか?
②顔がないキャラが顔があるキャラになる瞬間
③センパイが恋を自覚したのはいつか?



今回は講談社マガポケにて連載中の漫画『イジらないで、長瀞さん』について様々な視点から読み解いていきたいと思います。
あくまで考察は私個人の考えです。
考察とするにはロジカルよりもエモーショナルによっていますが拝読していただけたら幸いです。
作中の表現から考えていくのでコミックを手元に用意し読んでいただくと良いかと思います。


ちなみにアランカリンなどという詩人はいませんしこんな名言風なものもありません。



何故主要人物以外に顔が無いのか?

現在ネームドキャラクター以外はほぼ顔が明確に描写されていません。
顔があるのはセンパイ、長瀞さん、長瀞フレンズ(ガモちゃん、ヨッシー、桜など)、長瀞姉、センパイ母、部長、センパイ同級生、風紀の人、ストーカーさん
10巻時点でこんな感じです。
最後の風紀の人とストーカーさんは顔描かないと違和感でかいので例外っぽい感じはありますがどうも別に描かなくてもいいモブだから書く必要がない以外の理由がありそうです。

注目すべきポイント
1、第1話の1ページ目から長瀞さんは登場しているにもかかわらず8ページ目まで顔が描写されていない
2、11話に入るまで長瀞フレンズの顔が描写されない
3、50話で感じの悪いカップルが表情が分かるように顔を描いてあるにもかかわらず顔は明確に描写されていない。

1は初登場シーンとしての引きの演出
2そもそもキャラが固まっていない時期だった、明確に描写する意味がなかった

1,2に関してはこれらの理由も十分に当てはまりそうですがそれだけでしょうか?

そこで私は一つの予想を立てました。

【『イジらないで、長瀞さん』は原則センパイが観測したものが描写され、センパイが明確に認識していない人物の顔は明確に描写されない】

・予想の根拠
3話センパイの心中のセリフより
「昔から誹られることは多かったから対処法は心得ている
目を逸らし心を閉じてやり過ごす
だから嫌な奴の顔なんてまるで覚えていない」

センパイは徹底して亀になる事によって対処していたようです。
「まるで覚えていない」が強がりでないなら相当な徹底ぶり。

このセリフから考えると1話で『苦手なタイプの女子』と括られていた長瀞さんグループの顔が描かれていない事の理由になると思います。
センパイは長瀞さんグループの顔を見ていなかったのです。

また他の要素として既刊10巻時点でセンパイがいない場所で物語が進むことはほとんどありませんしセンパイ視点以外から場面が描写されることは少ないです。
14話の長瀞さんがセンパイが忘れたイラストを一人で見るシーン計4ページ
24話の長瀞さん部活上がり更衣中計3ページ
51話のセンパイが怒るシーン、長瀞さん視点2ページ
64話の電話で会話が終わった直後2コマ

これくらいです。見落としは有るかもしれませんし番外編や出張版と銘打たれているものを含めるともう少し増えますがセンパイが観測できないできていない場面が物語中ほとんどありません(流石にセンパイの背後などの視界外の情報は除く)。
実は長瀞さんはイマジナリーフレンドなんじゃないかと思うほどですが物語の視点を一つに絞るのは群像劇ものでなければ普通の事なので重要ではありませんが一つはっきり言えるのは

『イジらないで、長瀞さん』はセンパイの視点で物語が進行する

という事です。
物語は三人称視点でセンパイの主観を通して描写されます。
センパイの心の声は作中にありますがセンパイ以外の心の声が描写されることもありません。
視点が統一されている方が読みやすいのでそれ自体が特別なことではないですがそれの何が重要なのか。


顔がないキャラが顔があるキャラになる瞬間

見たくないものを見ないセンパイにとって顔の無い『苦手なタイプの女子X』からそうでない一人の女子に代わる瞬間

1話8ページ
センパイの漫画をひとしきり笑って去る長瀞さんグループ、でも一人だけ長瀞さんだけが黙ってセンパイの正面に座ったまま漫画を眺めています。
そこでセンパイを初めて長瀞さんの顔を見る。自分の漫画を黙って読んでいる相手が気になるのは当然と言えば当然ですから顔も見るでしょう。

ただそれだけのシーンかもしれませんが私はそれ以上の意味があるシーンだと考えています。

センパイは長瀞さんの顔を初めて見たときに強い印象を受けた。今までパーソナリティの象徴である顔を認識していなかった人物が強く記憶に残る人物に変わる瞬間です。

強い言葉を使うなら
『センパイはあの瞬間に長瀞さんに恋をした』
私はそう考えます。

あれこそがセンパイの恋の始まり。
この時点ではまだ恋だとは認識していないでしょう。
長瀞さんの顔がよかっただけかもしれません。緊張していただけかもしれません。吊り橋効果が発生しただけかもしれません。
ですがやはりあの瞬間にセンパイの恋は始まったのだと思います。

余談ですが実はこの時点で長瀞さんはセンパイの漫画そのものについて笑っていませんし馬鹿にもしていません。(擁護ではない。「マンガとか描いてる~ぷぷ~恥ずかし~」という意味の嘲笑ではないという意味)。
ただ亀になってテンパってるセンパイが誰がどんな事を話したのかどんな反応していたのか把握していたかはかなりに微妙なラインだと思います。
ちなみにこの後のシーンで長瀞さんはセンパイを散々にこき下ろしますが漫画を通してセンパイを馬鹿にしているだけです(人格攻撃普通にキツい)。
そこが重要なのはこの『センパイの漫画自体を笑ってはいない』は『イジらないで、長瀞さん』の結構大きなテーマっぽいので読み進めるにあたって覚えておいた方がいいと思います。


③センパイが恋を自覚したのはいつか?

ラブコメでよくある展開。幼馴染は負けヒロイン展開について話をしましょう。
最終話近くで幼馴染ヒロインが主人公に向かって
「あなたの事が好きでした」
「私、あなたの事がずっと好きだったよ」
みたいな台詞を言う展開を見た事ないでしょうか?

一途に思いを寄せる幼馴染に対して鈍感な主人公は幼馴染という近い距離の為か気づかない。そして突然現れた物語の正ヒロインにあれよあれよという間に主人公は傾いていきます。
正ヒロインが現れなければ上手くいっていたかもしれない幼馴染の物語は始まることなく終わりを迎える。
ええ、よくある展開ですね。
何が言いたいかというと戦場ヶ原ひたぎは強い……というわけではなく。
恋はそれを強く自覚し、一歩踏み出すことが大切という事です。

じゃあセンパイにとってそれはどこなのか?

明確な現況が無いため予想をする事しかできませんが私の予想では

第3話60ページ
「センパイって怒らないんですか?」
「私 けっこーキツいことしてるとおもいますけど…」
「ねぇねぇセンパイ~どうなんスか~?」
などの台詞に対してセンパイは
「正直……イラッとしたり ムカムカしたりはする……
けど……そ そこまで そこまで嫌いじゃないから……かな……
キミと……話したりするのは……」
と返します。
長瀞さんは
「だからキモイっスよ その キミって」
と返します(辛ッッッッッッ辣!!)。
「じゃあ… …名前
な 名前っ!! 教えてよ!!」
センパイはそう長瀞さんの目を見て応えます。

この時点では既にセンパイの中で長瀞さんは決定的な存在になっていたのではないでしょうか?
それまで基本長瀞さんの視線から逃げ続けてきたセンパイが長瀞さんの目を見て言った台詞です。
センパイが一歩踏み出した瞬間です。
そこに意味がないはずはありません。
以降センパイはちゃんと長瀞さんの目をちゃんと見るようになります。

正確なポイントは予想できませんがここが一つの分水嶺なのは間違いないと思います。

ただし……
この場合センパイは1話、2話の時点で惚れたという事になります。

1話
漫画をネタに散々人格攻撃を受け泣かされる! べそをかいたところで長瀞さんにハンカチで涙を拭かれてフィニッシュ!!

2話
美術部部室にて長瀞さんの絵を描くことになり自信のある絵ならと挑む、じゃあご褒美タイムでキスかと思いきや口にデコピンされ女子の太ももが描けてない事やキスを期待したことを散々になじられ泣かされ長瀞さんにハンカチで涙を拭かれてフィニッシュ!!



パイセン弩マゾじゃねぇか!!!!

この展開で惚れるのか。





余談
1巻2話43ページ
自分の絵を描かせふとももまわりが描けていないセンパイに
「描くの恥ずかしかったんですね~ 女子のふともも(ハート)
あはっ センパイ 顔 真っ赤スよ~(ハート)」
と言いながらスカートの裾をちょっと上げてピョンピョンするシーンがあるのですがアニメではアングル変わっていて漫画だと長瀞さんがスカートの裾をちょっと上げてピョンピョンする場面が正面アングルから描写されています。

可愛い。

アニメだとこれが長瀞さんの後ろから股下を通してセンパイが見えるアングルに変わっています。

スクリーンショット (39)

これです。
これが素晴らしい。
外側はスポーツ少女らしいすっとしたラインを出し内側は柔らかそうな曲線を出しており表現として実に素晴らしい。
女性の足を解剖学的な側面から見ても実によい。
彼の高名な朝凪先生もイラストレーションにおける解剖生理学的知見をもって絵にかき起こすことの重要性を解かれている。


しかもこれが動くのだ。
長瀞さんの引き締まった健康的な肢体の脈動、動きに追随して動くプリーツスカート。
プリーツスカートは静的なものでなく動的な存在。プリーツの構造から生まれる張力によって動く存在です。
動いてこそプリーツスカートです。
私はこのシーンを見た瞬間にこれは来たなと思いました。
これはやってくれる。何をやってくれるかは分からないけどとにかくやってくれると
このアングル考えたやつ天才だな。
誉めたい。
いや誉めるね。ありがとう。トレビアン。

まぁよっぽどのシーンかと言われると大袈裟なほどではありません。

劇場版 「Fate/stay night [Heaven's Feel]Ⅱ.lost butterfly」のバーサーカーvsセイバーオルタの推定一秒180枚のような常軌を逸した原画数なわけではもちろんありません。

天気の子のような驚嘆すべき彩色があるわけでもありません。

でも確かな良さを感じました。
このアニメを描いた人は足が好きなんだ。間違いない。
そう思いました。

足が好きな人に悪い人は……普通にいるけど最後まで頑張ってくれればきっと大丈夫だ。そう信じられたのです。

アニメは丁度折り返したところです。
アニメ最新話(この時点で6話)の感想はこの場では控えますが今後も期待しています。
作品に愛をもって取り組んでいただけることを期待します。

余談の余談

ジャンルは違いますがセーラー服描写が素晴らしい漫画です。

アニメ化は知りませんでした。
これは難易度高いアニメ化な気がする。




では、膝枕で耳かきとか良いなと思うADDPでした。
次は長瀞さんの恋について書きたいと思います。
またどこかで

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