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2024年1月から!タワマン相続対策に税の網【過度な節税に歯止め、評価額は「実勢価格」の6割に引き上げ】

6月30日、国税庁がマンションおいて新たに導入する相続税算定ルールを発表しました。

これまでタワマン高層階の相続税は、実勢価格と相続税評価額が3~4割程度に圧縮できるという特性があり、これをテクニカルに活用することで相続税対策を行っていたケースが多くありました。

この相続税対策はここ数年間問題視されており、昨年もこの件について近々見直しされるという予告が日経新聞などで取り上げられていました。

そして今回、その具体案が示されたのです。

この件に関して不動産業界ではかなりの話題になっていますので、私なりの視点で簡潔に解説をしていきます。

実勢価格の6割へ

タワマン節税とは

タワマンの高層階には「購入価格」「相続課税評価額」に大きな乖離があり、この乖離を利用した相続税対策がタワマン節税です。

タワマンは高層であればあるほど、1戸に与えられる土地の持ち分が少なくなります。
また、低層階と高層階でも建物の評価額(固定資産税評価額)は同一です。

しかし、実勢価格はどうなっているかというと…
通常の階層よりも10%~30%程度高い価格で流通されているのです。

その理由は、一般的なタワマンの高層階はプレミア住戸と言われており、「天井高が高い」など仕様が特別アップデートされているからです。

そして、タワマンには収益性における乖離もあります。

タワマンを賃貸として運用した場合、同じ専有面積であっても高層階は下層階より30%増しで賃貸できることが多いのです。

こうした相続税評価と実勢価格の乖離に着眼し、タワマン高層階を購入・相続することで、相続税評価額を実勢価格の3割程度に圧縮することがタワマン節税と呼ばれるものです。
(ただし、物件にもよります)

今回の改正案

今回の算定法改正は像族税評価額が実勢価格より低いことを利用した「マンション節税」「タワマン節税」の抑止が狙いです。

新たな算定法により、実勢価格の平均4割程度となっている評価額は6割以上に引き上がることになります。

元々、戸建てなどの相続評価額の基準は「実勢価の6割~7割程度」であり、それに合わせることでタワマンだけの特別感を排除することになるのです。

これからは「路線価」+「固定資産税評価額」=「相続税評価額」は一つの基準であり、「最終の相続税評価額」=「実勢価格の6割」であることを認識しておきましょう。

2017年度にも一部税制改正されたが…

実は、今回の改正の前、2017年にも過度なタワマン節税に警鐘を鳴らすために一部税制改正がされました。

過度な節税是正で2017年に改正

2017年4月1日以降の課税方法は

  • 中間層から1階上がるごとに+0.26%

  • 中間層から1階下がることに-0.26

  • 40階以上は約5%の増税

などとなっており、課税方法は一度改正されています。

しかし、この改正はまだまだタワマン節税の効果が大いに期待できる内容でした。

その上、この数年間「実勢価格」「相続評価額」の乖離は拡大し続けています。

東京都心部のマンション価格は更に上昇しており、実際に今年4月東京カンテイが発表した築10年のマンションリセールバリューを見てみると、新築価格の1.5倍~2倍程度となっていることがわかりますよね。

東京カンテイ「「中古マンションのリセールバリュー 2022」を発表」

改正されると具体的にどうなる?

7月1日の日経新聞の紙面の中で紹介されていた一部事例をご紹介します。

日本経済新聞「マンション相続税見直し、高層階・新築ほど負担増」

23区西部のタワー25階(同8000万円)でも税負担が発生したが、築20年ほどで税額は18万円にとどまった。算定法見直しで評価額が「3000万円+法定相続人の数×600万円」という基礎控除を上回り、納税義務が生じるケースは少なくないとみられる。

日本経済新聞「マンション相続税見直し、高層階・新築ほど負担増」

見直しの影響が強く出たのは20階建て以上のタワマンとなりました。

この改正によって高層階住戸になればなるほど有利だった節税対策は完全に消滅したということです。

つまり、これまでの「不動産相続対策」=「タワマン節税一択」という構図は終了ということです。

タワマン節税防止による不動産市況への影響

日本経済新聞「市場、販売鈍化を警戒」

27日の東京株式市場で大手不動産株は軒並み売られた。野村不動産ホールディングスと住友不動産はいずれも前日比4%、三井不動産は3%下げる場面があった。

日本経済新聞「市場、販売鈍化を警戒」

6月28日、このような報道がありましたが、7月には株価も戻ってきているので一過性の動きだったようです。

また、相続対策として購入される層の顧客数は限定的なため、この改正を受けてタワマン価格が下落することはないと考えています。

この改正で大きく影響が出るのは、不動産を活用した相続対策が安易なタワマン一辺倒でなく

  • 居住用AP

  • テナントビル

  • その他諸々

だと思います。

強いて言えば、今回の改正によってタワマン節税に「うま味が薄くなった」訳程度ではないでしょうか。

そして、相続対策型のタワマンを所有していた富裕層が2023年年末までには見切りをつけて売却する可能性があると思われます。

特に現在、タワマンの市況面は絶好調なので売却資金を別の相続対策に転嫁する動きが出てくることになるでしょう。

今まで売り出されなかったような良質なプレミアタワマン高層階が市場放出されるかもしれないので、楽しみですね。

いずれにしろ、現在の相続税申告割合は日本全体で約8.8%、東京都内でも17.4%程度と言われていいるので、大半の人は関係ない話かもしれませんが…。

まとめ

  • 相続評価額が「実勢価格の6割」基準へ

  • 2024年1月から適用を目指す

  • タワマン節税によるプレミアは終了となる

  • 今回の改正による大きな不動産下落はなし

  • これから良質なタワマンプレミア住戸が売り出されるかも!?

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