【掌編小説】 猫車の一日
午前八時、猫車《ねこぐるま》はお母さんと一緒にいる。
お母さんは猫車に粗大ゴミをのせて、ゴミ置き場まで引いていく。
午前十一時、猫車は畑にいる。
おじいさんとおばあさんが育てたニンジンを、猫車はのせてあげる。
午後二時、猫車は軒下の犬走りにいる。
昼寝するウサギを猫車はのせてあげる。カメが犬走りを歩いている。
午後五時、猫車はテッポウユリが一面に咲き誇る岬にいる。
わんぱく坊主とおてんば娘を交互にのせて、猫車はつづら折りの坂を駆ける。
カーブで転んで、フレームをすりむいたりする。
午前三時、猫車は納屋に戻っても働く。
酔っ払って帰って来たお父さんをのせてあげる。
午前八時、お母さんが粗大ゴミをのせた猫車をゴミ置き場まで引く。
〈了〉
表紙はイラストAC「たいらばやし」さんの作品です。