【掌編小説】 シュガートレイン
シュガートレインが渚を走る。
ジョイント音を立てて、黒煙を上げて、刈り込んだばかりのサトウキビをのせて走る。
シュガートレインは村々にあるサトウキビの集積場をまわっている。サトウキビを積んだ貨車を拾って、製糖工場まで引いていく。
三人の少年たちが、龍のように長くなって走るシュガートレインを追いかけている。
機関士のおじぃが、汽笛を鳴らして彼らを威嚇する。
少年たちがシュガートレインの貨車に飛び乗っていく。
機関士のおじぃが舌打ちする。
積んであるサトウキビの上に、少年たちが寝ころぶ。丸くなって転がったり、大の字になったり。
少年の一人がサトウキビを折って仲間に投げる。
少年たちがサトウキビで乾杯する。
彼らは歯でサトウキビの皮を剥いで、芯を噛む。
サトウキビをくわえた少年たちを乗せて、シュガートレインは走る。
牛の放牧場の横を、松林の中を、谷に架かった橋梁を、シュガートレインは西日を浴びながら走り抜けていく。
シュガートレインがサトウキビの集積場に止まる。
機関士のおじぃが運転室から飛び出す。
少年たちが貨車から飛び降りて逃げていく。サトウキビ片手に。
〈了〉