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神秘 4月16日〜365日の香水

神業から世の謎へ
神秘を意味するミステリーという言葉は、人智を超えた聖性を感じる事象や儀式に使われていた。
神秘と訳される通り神の領域の秘儀であり秘技だったのかもしれない。
多分に宗教色の濃かったこの言葉に「謎めいた」というニュアンスが投影されるようになったのには、18世紀のゴシック小説の“貢献”があるという。
フランケンシュタインやドラキュラなどだ。
超自然的で不可解な要素をこれらの物語は孕んでいた。その観点で言えばアーサー王の物語もそうだと言える。19世紀にエドガー・アラン・ポーが登場してミステリーは謎解きの様相を強める。
神聖な領域から人々の心理、俗世の謎へと言葉の持つ意味を拡張した経緯だ。
背景には科学の発展、産業革命、ルソーの社会契約論の波及など、これまで全ては「神のみわざ」としていたところから、人々のスコープが変わった事があるのだと思う。宗教観が科学的裏付けや個人の理性を通して再評価された時代。
ミステリーの意味も拡張された。

神秘的であること
神秘的であることとは奥深く、一見しては計り知れない、理解しえない何かが奥深くに潜んでいるイメージだ。
”わからない何か”に気持ちが向くと、そこから生じる感情は不安になる。
言葉のルーツをたどれば、その不安は畏怖に通じる聖なる領域と、(18世紀に付加された)ダークサイドとがある。
どちらにしても「抗えない魅力」が不可解の底に潜んでいるようだ。
神秘的と言われて、嬉しくない人はいないかもしれない。
言わない部分、出さない部分があることが神秘につながるケースと、こそこそしているようにしか映らないケースの違いはなんなのだろう。
隠せばこそこそになるけれど、隠しているつもりもないのに言葉やしぐさの先に何層もの奥行を感じたら、神秘になるのかもしれない。
薄っぺら、と反対の場所に神秘はあるのかもしれない。

MYSTERE/ ROCHAS/ 1978
この香水は、意外と古い時代のもので、ロシャス(ROCHAS)のルミエール(LUMIERE)やビザンス(BYZANCE)などを手掛けたロシャス専属のニコラ・マムナス(NICOLAS MAMOUNAS)の初期の代表作の一つ。
80年代に先駆けて非常に複雑な処方。スパイシー、ウッディ、オリエンタル、モッシー、グリーン、パウダリーの層がデリケートに重なる。
トップノートから香りがその後どう変化するかの予想が微妙に裏切られながら、ミドルの優美なフローラス、ラストのエキゾチックな様相までもっていく。
神秘とはこのくらい深いものというのを、体現した香り。

香り、思い、呼吸

4月16日がお誕生日のかた、記念日のかた、おめでとうございます。

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