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傷ついたから類稀になった。香木について

沈すなはち香、香すなはち沈
何かの拍子に傷ついた部分に樹脂が集中する。そのことによって周辺が朽ちてもその部分だけは土に帰さず残る。これが香木。
自然発生していたと思われるものが、採取を目的にわざと傷つけて樹脂がたまるようにしたりして、香木は東洋の香り文化の担い手になった。
樹脂が集まった部分だけ重くなって水に沈むようになることから、沈香といわれるようになった。
これを燻らせた香りがなんとも至福で、「沈すなはち香、香すなはち沈」つまり沈香だけが香りであるとさえ言われた。

日本に初めて香木がもたらされたのは太子伝によれば淡路島に漂着したそれを聖徳太子が認定したところからという。

沈香という香水の原料はないのですが
最近は、このような香木の香りを香水の構成要素にする。ひらたくいえば香木の香りを一部使った香水も良く目にする。本当に香木を原料としてるのではなく、それ風なニュアンスを再現して用いているのだけのものも多いが、現在、ラオスやインドネシアあたりで沈香樹の栽培と樹脂のたまった木片かを蒸留して香料を収油することも行われていることも確かで、500KGの木片から1Lの精油がとれるという実に希少な香料としての”沈香”を用いている場合もあるのだろう。
香水にしても、沈香の名に、幽玄の美が漂い始めるから面白い。

そういえばフィトンチッドも
害虫や病気から身を守るために樹脂が集中して香木となる。
これと同じように森林浴、フィトンチッドも何かの危機に対してはたらく植物界の自衛策が森に入った私達にも恩恵をもたらしてくれるものだ。

傷ついたことが年月を経て価値になる

そういえば金継ぎも。

これまで、圧倒的な窮地をどうやって乗り越えてきたのだろう。
傷ついた経験は、今の私にどう影響しているのだろう。
綺麗な起承転結で語れるものではない。
植物界から学ぶとしたら、(それはあくまで私からの見立てでしかないけど)、彼らは自分たちを傷つける相手に反撃はしない。あくまで自衛にとどまっている。
もしかすると、やりかえしたい、雪辱を果たしたい、と反応することで傷ついた経験はネガティブな痕を残してしまうのかもしれない。

「良く守って、今にたどり着いたね」
そう自分を労うだけで、そうなった原因や害虫や事故のことは視界から外すことが大事なのかも。

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#コルクラボ
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