一番ではなく一流
はっとした言葉だった。
一番になるには何が必要か。
二番、三番の存在が必要だ。
そのために比較して序列や優劣を決めることが必要だ。
一番というのは、そういうもの。だから、
「目指すのなら一番ではなく一流」。
恩師の言葉だ。
一番というのは二番、三番があるから成立する。
一方で二流、三流がなくても一流は成立するのだ。
一番を否定する気持ちはないけれど、一流というのは、つくづく美しいなと思う。贅を凝らしたとか希少とか権威があることと一流は違う。
恩師はこう続けた。
「一流とは一つの流れ」
近いのはリレーとマンガ
一つの流れ・・・
これを言葉で説明しようとするとどんどん陳腐になっていく。
一番近いのはリレー競技だろうか。一人ひとりの「走り」というパフォーマンスも大事だけれど、次の人にバトンを渡すという使命を揺るぎなく全うする、この流れの完成度。
そういえば、マンガのコマは何のためにあるか、「それは次のコマのため」と教えてくれた人がいた。常に次のコマのためにそのコマがあるとすれば同じ論理でそれは一流の作品となっているのだろう。
香りの流れ
香りにも「匂い立ち」という流れがある。
トップノート、ミドルノート、ラストノートと時間の経過に伴い香りが緩やかに変化していく流れだ。
この現象は芳香物質の揮発点が大きく三分されることに起因する。
トップノートは香りの第一印象の部分、揮発性の高い柑橘系やグリーン系などがそうだ。
ミドルノートはフローラル系などで、第一印象に続く会話の中身や印象的な仕草などと言えるかもしれない。
ラストノートは余韻、揮発度の低い分持続性のあるウッディや動物性の香りが最後を彩る。
これが美しい流れになっているのは、リレーで言えばトップノートからラストノートまでのバトンタッチが実に自然でいつそれが行われたかわからないうちに気が付けばメインストリームが変わっているというものだからだ。
そして、トップはやがて来るミドルのために、ミドルはラストのためにあると言ってもいい。
自然に備わった香りの流れの物語、これが研ぎ澄まされるほどにその香水も美しい香りを持つことになるはず。
常に次のために
私の今日は明日のためにある。今は一分後のためにある。
矛盾なく嘘なく「次の自分」に渡すバトン。
それが一つの流れを可能にしているのかもしれない。
香り、思い、呼吸
付記:(「はっ」としたに掛けて「葉」のビジュアルにしてみました)
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