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人間一人の値段 (サミット2016[5])

202305051252 「人間一人(ひとひとり)の値段」2016年サミットのお話(その5)

 サミットボランティア通訳の候補になってから3回ほど事前研修と称する説明会が三重県内であった。もちろん私もそれに参加している。そして、そのうちのある日にボランティア活動時の万が一の事故に備えられた保険の説明があった。その時、三重県の担当者は
「ボランティア通訳の皆さんにはボランティア保険に加入してもらいます。保険料は県が負担します。万が一の事故の際には最高で1千万円の保険金の支払いが用意されます」
と言った。
 思いっきり『』だった。
 保険金の支払い、といってもいろいろで、過失により他者に損害を与えてしまった際に損害賠償をするために支払われるものもあるしボランティアがその行為中に自らがケガをした時に出る保険金もある。
 伊勢志摩サミットの前には欧州でテロがいくつか発生していた。2016年のサミットが開かれる日本でもテロリストの標的になる可能性は当然にあった。その対象としてサミット参加の各国首脳だけではなく一般市民を標的にすることも十分考えられた。
 私たちボランティアはもちろんVIPではない。そんな計算をどうするのかはわからないが首脳よりもテロにあう確率は少ないのかも知れない。しかし巻き添えやいわゆるソフトターゲットにされることは十分に考えられた。で、さ、その際に運悪く死んじゃったら…たった1千万円???。
 交通事故の判例では人が死んだ際には3億円という判決があったはずである(*)。そうでなくても車を運転する際に入る任意保険で対人は無制限とかにするよね? つまり働き盛りで収入が多くそして扶養家族が多い場合には被害者の生涯賃金などを考慮すると人の値段(あまり良い表現ではないけれど)は少なくとも日本ではかなりの高額になる。
 それに、だ。もし三重県職員(地方公務員)がサミット期間中に仕事をしていて不幸にしてテロに巻き込まれて最悪の事態になったしまったとしたら、その時は公務災害となり多額の補償があるし残された家族には遺族年金も出る。その総額はどう見積もっても1千万円より桁が一つ高いよ。
 保険料の算出はとても難しいが、しかし県当局がボランティア保険の保険料をケチったに違いない。
(*)判例を調べる元気はないので、これは未確認情報です。

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