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スイス[55]オーストリア連邦鉄道の車掌

202312241236 スイス[55] オーストリア連邦鉄道の車掌

 確か、ボーデン湖(コンスタンツ湖)畔にあるドイツ・Lindau(リンダウ)駅からオーストリア・Feldkirch(フェルトキルヒ)駅へ向かう列車だった。とても古いぼろぼろのOBB(オーストリア連邦鉄道)の客車列車で、この列車はターミナル駅になっているLindauまで私が乗ってきた列車がそのままLindauで折り返して(スイッチバック)オーストリアのBludenz駅行きになった列車だった。私はその列車には途中のFeldkirch駅まで乗ったのだが、その時、その日の小旅行では初めて車掌による切符の検札があった。
 車窓は真っ暗である。なんでそんな夜遅い時間に乗っていたのかというと、そもそもはユーレイルグローバルパスの日程が余っていて、そんならスイス・オーストリア・ドイツ・リヒテンシュタイン・スイスとただ列車に乗って廻(まわ)ってこようと思っただけなのだが、宿泊しているスイスの小さな街を出発するのが午後遅くになってしまい、途中で夜になったからである。往きのまだスイス領内での乗換駅であるSt.Gallen(ザンクト・ガレン)に着いたころには既に日が暮れかけ、スイスとオーストリアの国境駅であるSt.Margarethen駅に着いたころには真っ暗だった。
 本来ならボーデン湖の美しい景色が車窓に映えるはずなのに、通勤列車(一等席がない!)からの景色はもう完全な闇。間抜けである。午前中に出発したり、あるいはいくら季節外れとはいえボーデン湖畔で宿泊すればもっと楽しめたに違いない。
 そこを私は単に、夜の中を、ボーデン湖の南端近辺のスイス・オーストリア・ドイツ・リヒテンシュタインをただただ列車で通過するためだけに、列車に乗ったのだった。

 冒頭に登場した車掌は、順次乗客の切符を確認して来て、私の番になった。ユーレイルグローバルパスと旅券(パスポート)を一緒に出す。車掌は、私の旅券を見たあと、少し間が空き
"Japan(ヤーパン)"
とドイツ語の小声でつぶやきその後英語でやはりボソっと
"Welcome"
と私に挨拶をしてくれた。こんな時期のこんな時間のこんな場所、それも通勤列車に手ぶら同然の日本人乗客は、車掌の彼にとっても不意打ち的に珍しかったんだろうな。

*おことわり:なぜかドイツ語のウムラウトが出ませんでした。よって綴りが正確ではない可能性があります。すみません。

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