【自由研究】ポケカに手を出したので、遊戯王の独自性を言語化してみる。

こいつを買って、嫁さんと遊びました。
遊戯王とはまた異なりますが、さすが、よく練られた面白いゲームですねこれは。


この経験を通じて、「遊戯王」というゲームの性質、みたいなものが見えてきて、個人的に興味深かったので、
一度文章にしたためてみようと思います。

なお、ポケカ自体はこのセットでしか触ったことがなく、
このセットは、おそらく遊戯王でいくところのスターターデッキどころか、デュエルロワイヤルデッキくらいの位置付けだと理解しています。

そのため、ポケカというものに対しての解像度が低く、
それゆえに解釈を誤る点が出てきそうですが、まあそれはそれで与太話として寛大に流していただけると嬉しいです!


【遊戯王に特徴的だと感じたポイント】

ポケカでの経験を通して、遊戯王というゲームを特徴づけているポイントをピックアップしたうえで、
wikiなどにも頼って他TCGの情報も(エアプながら)調べたうえで、言語化してみました。


■チェーン、スペルスピードという概念

遊戯王というカードゲームを象徴する概念だと強く感じた点のひとつです。

遊戯王の勝利条件は、実質的にはライフポイントを8000削ることではもはやなく、
カードアドバンテージ差で相手を詰ませることであり、
それらは数ターンでのリソースの削り合いではなく、1ターンでの最大出力の結果として成立する「制圧」によって、相手のカードアドバンテージ獲得を阻害することでおこなわれます。

相手のアドバンテージを生み出すカードを問答無用で打ち消す、ないしは展開されたものを適切なタイミングで除去することで、
いま自分が保持しているカードアドバンテージ以上のカードを相手にコントロールさせないようにしていくのが、
環境トップTierの多くのデッキの基本動作になっています。

それを可能にするのが、「チェーン」「スペルスピード」の概念であり、
結果として、「非ターンプレイヤーがガシガシ効果を発動する」という状況、「いま本当に俺のターンなのか……?」みたいな絶望のつぶやきがちょくちょく発生することになります。


さて、この点でほかのTCGを振り返ったときに、
下記に詳しいのですが、実のところ、相手のカードの発動に対しカウンターをおこなえるTCGはそれほど多くないのです。

そのなかでも、遊戯王は、
相手のカードに対するカウンターのバリエーションが非常に多く、戦術上のウエイトも大きく、
かつ無効系カウンター効果の量によっては、そのターンの相手の行動自体をほぼ封殺できることが特徴です。

有名どころの他TCGだと

  • MtG:フリーチェーン効果に相当する「インスタント」およびその処理であるチェーンブロックに相当する「スタック」の概念があり、このセクションの観点では、かなり遊戯王に近い(というか、むしろこれをベースに遊戯王がデザインされたはず)

  • ポケカ:相手のプレイに対して、何らかの処理をかぶせて適用すること自体が超マイナー

  • デュエマ:ごく一部、カウンターによる制圧効果を持つクリーチャーが存在。メインのカウンターシステムは「シールドトリガー」だが、これは攻撃反応かつ(基本的には)意図して制御不可。

というデザインになっています。
特にポケカは、非ターンプレイヤーがおこなう処理というのはほぼなく、カウンターのあり方という観点では真逆のゲーム性を持つTCG同士といえます。

また、妨害に限らず、フリーチェーンのカードおよび効果というものの存在により、
フェイズを考慮した立ち回りが戦術上重要になってきます。
そのフェイズにできない行動を考慮して、ある特定タイミングで効果を差し込むことでメリットを最大化する、
いわゆる「エンドサイク」「スタンバイG」的な対応ですね。
これは遊戯王(と、おそらくMtG)に固有の戦術性といえそうです。


■マナ概念とテンポアドバンテージ

よく言われる、遊戯王の特徴として真っ先に挙がる点は、むしろこちらかもしれません。

多くのTCGは、あらゆるカードのプレイに関し、毎ターン少しずつ増える「マナ」を消費する必要があり、
必然、手札から出力できるリソースは、ゲーム開始直後は大幅に制限されています
強力なカードのプレイには多くのマナが必要であり、手札に強力なカードを早期に加えることが、必ずしも強力ではない(むしろ事故)といえます。

マナを高速で貯める=強い一手が相手より早く打てる、になるので「テンポアドバンテージ」がゲーム性のひとつの柱を担います。
よって、マナの破壊(ランデス)も、戦術として非常に重要な意味を持ちます。

一方遊戯王には、その概念がほぼまるっと存在せず、したがって、手札の数だけ手数を出すことができます
それゆえに、最初のターンから強烈なリソースのぶつけあいが発生し、
その末、2-3ターンで勝負がつくことが多いゲーム性です。

厳密には、遊戯王にもテンポアドバンテージの概念は存在し、
最初期の「アドバンス召喚」というシステムがそれを担っていたのですが、現状ほぼ形骸化しています。

マナ、テンポアドバンテージが重要なTCGでは、相手の吐けるリソースや、ゲームメイクの意図が予想しやすく、
それを織り込んだうえで自分はどうリソースを吐いていくか、というゲームメイクをしていく必要があり、
そこが戦術性、ゲームとしての面白みのひとつになっています。

今回触ったポケカでも、マナに相当する「エネルギー」の管理と、それを前提として自分のポケモンをどう管理していくか、
あるいは相手が何を狙っていて、それに対し中期的にどう対処するか、というような読み合いが、
かなりエキサイティングに感じられました。

また、このマナというシステムは、前述のカウンター効果も厚みにも関係しています。

ゲーム性が近いMtGですら、カウンター効果を持つインスタンスを撃つのにマナを残しておかなければならず、
カウンター型の妨害を相手ターン用に構えること=自ターンの展開の手数を減らすこと、となります。

対し、遊戯王は、展開したモンスター、ないしセットした魔法罠によるカウンター妨害は、多くの場合ノーコスト(魔法罠の場合はカードを消費するとはいえ)で扱うことができますし、
なんだったら多くの場合、TopTierのデッキの制圧盤面は、なぜか開始時よりリソースが増えています

十分な量の手札があるにもかかわらず、すべてをカウンターされて自ターンに何もできなかった、という状況は、遊戯王ならでは、である、と言えそうです。


■行動の組み立てにおいて、考慮するべき相手の情報の量

自分のターンの行動を組み立てていく際に、考えなければならない情報の量にも、かなりの差を感じました。

遊戯王の場合、

  • 盤面に見えているモンスターおよび永続魔法罠・フィールド魔法

  • 各種セットカード

  • 手札誘発

  • 相手ターンに発動する可能性のある墓地効果

を見つつ、自分のターンの行動を組み立てていく必要があります。
仮にデュエルロワイヤルまでレベルを落としても、

  • 場のカードには多くの場合、相手ターンに発動する効果を持つものが少なからず含有される

  • ひとつひとつのカードが固有性高く、かつ長い効果テキストを持つ

という感じの要素は残り続けます。

ここがたとえばポケカの場合、

  • 考慮すべき情報は、基本的には盤面情報のみ

  • 多くの相手ポケモンは、自ターンには何もしてこない

  • スタジアムやどうぐなども、効果はシンプル

となり、自分の行動を組み立てる際に考慮する必要がある情報量は、かなりの差が出てきます。
特に、ポケカにおける効果は、遊戯王で言うところの「起動効果」「永続効果」しか存在せず、
自ターンにおいては「永続効果」のほうだけ考慮しておけば、基本的に自分のやりたいことは通せる算段を付けられます

エアプなのであまり言えませんが、ポケカに関しては、トーナメントクラスの環境になっても、ここの質の部分は変わらないのでは、と考えています。
(これはポケカのゲーム性が単純である、ということではなく、先ほど述べたようなターンをまたぐテンポ面での読み合いが別の軸として発生します)

MtGの場合、手札から繰り出されるインスタンスを考慮する必要がありそうです。未プレイなので何ともですが。
一方で、相手の場に残っているマナと、相手のデッキタイプから、飛んできそうなものをある程度絞り込むことができ、
カードプール、およびデッキに関する理解が必要とされます。
特にパーミッション系の効果は、扱えるデッキタイプが明確に限られる(「青」と「白」?)ようです。

デュエマは盤面の他、シールドトリガーが考慮要素となりますが、
シールドはランダムである以上、いつ踏むかは考慮することができず、仮に踏んだ場合にリカバーが効くか、という観点を持つことになります。
採用されるシールドトリガーは、デッキおよび環境から予測を立てていくことになります。

また、前述のMtGもおなじくですが、マナが属性を持つ関係上、デッキによっては絶対に入らないカードも存在するため、
遊戯王の《灰流うらら》ように、ほぼあらゆるデッキに採用され、かつ奇襲性の高いカード、というのはおそらく存在せず、
ケアみたいなところは、少なくとも思考上は考えやすいのでは、と思っています。


■ハンドの価値の高さ

これはマナとテンポアドの話とほぼイコールになりますが、
遊戯王はマナの概念がない以上、手札の数≒出せる手数であり、ドローの価値が非常に高いです。

ポケカの場合、「手札をすべて捨てて7枚ドローする」というようなカードも平気で存在しており、
使えれば強力であることはたしかなのですが、それが手数には直結しません。
むしろ手札を循環させ、今必要なカードを探すことが重要になってきます。


■コンボ性の高さ

遊戯王は、多くのデッキが、複雑な展開ルートを持ちます。
そのルートは、それぞれのカードの持つ固有効果が、複雑にかみ合って形成されます。

たとえば、皆さまご存じこのカード

《水晶機巧-ハリファイバー》
リンク・効果モンスター
リンク2/水属性/機械族/攻1500
【リンクマーカー:左下/右下】
チューナーを含むモンスター2体
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードがリンク召喚に成功した場合に発動できる。
手札・デッキからレベル3以下のチューナー1体を守備表示で特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは、このターン効果を発動できない。
(2):相手のメインフェイズ及びバトルフェイズにフィールドのこのカードを除外して発動できる。
EXデッキからSモンスターのチューナー1体をS召喚扱いで特殊召喚する。

遊戯王を一定経験された方なら、間違いなく強力どころか、通せば終わりだと分かっているカードですが、
厳密にこのカード単体として見たときには、弱小モンスターを1体呼び出せることと、ごく限られたSモンスターを呼び出せる、ということしか書いていない、と言えます。

このカードの強力さは《幻獣機アウローラドン》の存在や、その他カードとのかみ合わせにより発揮されるものであり、つまりはコンボを前提としている強さを持つカードになります。

また、デザイナーズコンボである【水晶機巧】ではなく、大半他のデッキで声がかかったのも、遊戯王がコンボ性のゲームである証左であり、
このカードを軸に、まったく異なる【天威】【勇者】および【ローズドラゴン】の一部カードを組み込んだ【天威勇者ローズ】のようなデッキは、ある種その極致であると言えます。

これは、他のTCGが
カードのプレイにマナを要する
=1ターンにプレイできるカードに限りがある
=あまり多くのカードを用いるコンボがそもそも成立しない
という制約が、遊戯王にはない
ことにおそらく起因しており、
他のTCGであれば、イメージですが《アラメシアの儀》→《運命の旅路》→《流離のグリフォンライダー》→《レッドローズ・ドラゴン》召喚のあたりでマナが切れるはずです。

また、デザイナーズでない効果のかみ合わせが、爆発的なアドバンテージや、強力な布陣を生み出すことがあり、
たとえば、
勇者→グリフォンライダー→レッドローズ→バロネスで妨害ケアしながらハリファイバー
という具合に、レベル合わせ、妨害の常在、ハリファイバーの素材供給、というルートが、全く関連しないテーマ同士の奇跡的な噛み合いによって成立します。

一方、他TCGですが、各TCGにおける「コンボ性」については、下記wikiが詳しそうです。

遊戯王以外のTCGでは、一部のコンボに振り切ったデッキが登場することはあれど、
トーナメントクラスのデッキが大半コンボを基本とする、ということはまずなく、
マナシステムの都合上、コンボデッキは「ルールの穴」「ゲーム性への挑戦」という形で発現します。

ゲームとしての基本動作に「コンボ」が組み込まれているTCGは、極めて異質と言えるでしょう。


【遊戯王は難しい?】

■その源泉は?

さて、これらの特徴を見ていくと、よく言われる「遊戯王は難しい」の根源が、ある程度言語化できるようになってきます。

  • コンボを前提とするため、各カードの噛み合いを記憶することが前提で、カードプールと展開ルートを把握する必要がある

  • カウンター効果、特にパーミッション系の効果がゲーム性の基本要素となっており、それらを加味したうえで自分の展開を考える必要がある

  • 盤面の情報量が多く(長く固有性の高い効果テキスト、非公開領域の妨害要素、など)、攻めるにも守るにも、巡らせなければならない思考の密度(量の多さ×タイミングの短さ)が高い

  • 他TCGだとあまり考慮しない、フェーズごとにできる行動を加味した立ち回りが必要

いわゆるコンマイ語と揶揄されるような内容や、ダメージステップの処理などのルール面の複雑さを除いて、
ゲーム性という観点で考えると、このような整理になる気がしています。

そのうえで、この要素の源泉をさらに掘り下げてみると、

  • スペルスピード2以上の効果の存在

  • マナシステムの欠如

が、大半のゲーム性の特徴を作り出していると言えそうですね。


■新規プレイヤーを増やすには?

実は、今回購入したポケカファミリーセットの前に、
「04環境」で遊戯王の布教を嫁さんに試みたことがあるのですが、見事に定着しませんでした。

ところが、今回のポケカについては、驚くほどすんなりとルールを飲み込み、
3戦もすれば、特段忖度ナシでほぼ同レベル(こちらもポケカビギナーとはいえ)で戦うことができるようになりました。
この差は正直、大きな驚きでした。

フィードバックするところによると「遊戯王は難しい」「ポケモンならできる」とのこと。シンプルだ。
やはり上述のような要素は、ビギナーにとっては忌避感を覚えやすいものであるようです。
おそらくYP諸氏は「そこが面白いのに!!」と思われたことでしょう。私もそう思います。が、忌避感を覚えるのも分かります。

さて、新規参入(多くの場合、身近な人への布教)を考える場合、
ポケカがうちの妻に浸透したことからも、複雑性をできるだけ取り除くことはキーになりそうです。
妻はそもそも、こういったゲームの類のサブカルチャーをやってきたタイプではないので、失敗したところがあると仮定して、
そうなるとやはり、いわゆるゲートボール、「04環境」や「デュエルロワイヤル」から引き込んでいくのがいいように思います。

そこで、遊戯王というゲームのゲーム性の一端に触れてもらい、そこがOKなら次へ……という感じでしょうか。
しかし、ネクストステップとしてエクストラデッキが入ったとたんに別ゲームになり、そこに9期以降のカードパワーが入ってくるとさらに別ゲームに変貌することを考えると、
さてこのプロセスをどう踏ませたものか……あまりいい回答は出なそうです。


おわりに

あまり他TCGは触ってこなかったのですが、触ってみるとおもしろいですね。

かつ、カードゲームは多種多様であれど、根本で共通するゲーム性は必ず存在するので、
このゲームで勝つにはどういう思考・ゲームメイクをすればよいか、みたいなところが、誰に教わるでもなくうっすら理解できたときは、何とも言えない楽しさがありました。

個人的には、MtG、どこかで挑戦してみたいですね。まずはプレイヤーを探さなければ……

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