すきなもの2

当時はまだアニメオタク=根暗でキモいとされていた頃だったが、中学で女子校へ進学したことが転機の一つだった。
後々聞いた話によると、女子校や男子校は比較的各々の趣味に関して寛容らしい。母校も例に漏れず、とにかく各々何を好きでいても許される環境が広がっていた。アイドルが好きでも、本が好きでも、スポーツが好きでも、もちろんアニメが好きでいてもよかった。自己主張してもいいという安心感からか、みんな好きなものを堂々と語る。そんな環境にいたから、私もアニメ好きを隠さなくてもよくなった。堂々としていると、同じ趣味の仲間が集まってくる。もしかしたら陰で何か言われていたかもしれないが、そんなものは仲間がいれば関係なかった。
しかし私は捻くれきっているので、なぜか一番好きなものを好きと言えない。一番好きなものとして、別のものを選んだ。〇〇というアニメの、一番好きなキャラクターはAなのになぜかBということにしてしまう、といったように。それがどういう心理状態なのか今でも分からないが。とにかく、自分に対しても素直ではなかった。
その後、捻くれたオタクでいる時期が10年以上続くことになる。
第二の転機は、社会人になってから。
社会人になってからもオタクを卒業することはないが、一応会社の中では隠していた。言う必要もなかったからだが。
ある日、勤めている会社に20歳そこそこの若い女性の派遣社員さんが来た。聞くところによると、とあるゲーム原作の2.5次元ミュージカルが好きで、働きつつ劇場に通えるよう地方の実家を出て東京暮らしを始めたらしい。
私は衝撃を受けた。会社には、アニメやミュージカルが好きな人は誰もいない。(私のように隠しているだけかもしれないが)そんな環境で、堂々と自分の好きを公言するパワー。もちろん、周囲の反応はイマイチだ。でもそれでいいのだ。好きなものを好きと言っただけで何が悪い。
きっと彼女は、その素直さによってこの先同じものを好きな仲間や、素晴らしい作品にたくさん出会うだろう。それは好きを公言して得られる豊かさだ。
好きなものは、ちゃんと好きだと言った方がいいな。彼女との出会いで、意識が変わった。素直でいた方が、多分人生は楽しい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?