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道具の話Vol.2 ハンガー

雑貨屋店主であり、モノと暮らし愛好家である、きさらちさとが自身の視点で足立道具店のプロダクトのちょっとコアな部分まで魅力をお伝えする、『道具の話』。
今回は足立道具店の「ハンガー」についてご紹介します。


日常の中で毎日手にするであろう、ハンガー。
当たり前に生活の中に存在しているけれど、ふと「良いハンガーが欲しいな」と思って探しても、なかなか理想のものには出会えない。(そして、ハンガー探しの旅を諦めてしまう…。)
そんな人に、思い切ってどうでしょう?と提案したい足立道具店のハンガー。
ちょっと背伸びなお値段ではありますが、だからこそ、クローゼットの中に必ず1着はある、お気に入りのお洋服に見合うハンガーを使ってみて欲しい。
自分の好きなモノを、さらに好きにしてくれるモノにちがいありません。

足かけ4年。あきらめずに粘る店長!

「ハンガーは最近商品化したプロダクトですが、実は結構初期の頃からあった案なんです。でも価格の面で断念していました。」と足立道具店の店長でありデザイナーの市橋さんは言います。

曲げ・溶接加工が得意な岩城工業さんでのハンガーづくりが始まったのはなんと4年以上も前のこと。当初図面通り出来上がった製品を見て、いいモノができた!と思ったものの、材料費・加工賃・人件費、お店に卸す価格を考慮した結果、1本8,000円のハンガーが生まれてしまいました。
一度は開発を中断したものの、諦めきれない市橋さんは再度さまざまな収まりを考え、岩城さんに何度も相談を持ち掛けます。
そして、ある日岩城さんが「できたよ。」と突然サンプルを持ってきたのだとか。

同業者も驚く、溶接のヒミツ。

左:初期サンプル 右:現製品

価格のネックになっていたのは、曲げたハンガーの板材を最後に溶接する部分。
金属の溶接には手で溶接する方法と、電気を使って局所的に接合する方法(スポット溶接)があります。
初期サンプルは手で溶接していたため、その工賃や人件費が大きく価格に関係していました。

丸棒などの点と点の接合であれば、スポット溶接ができるのですが、今回素材に採用しているフラットバーは面と面の接合になるため、電気が接合部分を判断することができず、溶接できないんだそう。

それを解決したのが、間に細い線材を挟み込み一緒に溶接する方法。細い線材が点の代わりをしてくれることによって、電気が流れるようになりました。
「金属加工を知っている他の同業者さんがこれを見たら、これどうなってるの?!って
びっくりすると思います。」と市橋さん。

このやり方は、以前岩城さんの別の仕事で実験したことがあったそうで、様々な経験を持つ岩城さんだからこそ、これにも応用できるかもとひらめいたそうです。
 
結果的に見た目も美しく、より丈夫になり、手の届く価格におさえることができました。岩城さんとのコミュニケーションはもちろんですが、市橋店長の粘り強さがなければ生まれていなかったのですね。

使っていない時も美しい。

シーズンごとによく使う衣類をかけておくハンガーラックを、部屋の目に見える所に置いている方は多いのではないでしょうか。足立道具店のハンガーのシンプルな美しさは常に見える所にこそ、是非ともご使用いただきたいです。

お気に入りのジャケットや、お客様用に。

気に入っているジャケットやコートなどをかけるのに、木製のハンガーはちょっと存在感がありすぎるという場合、ステンレスのシンプルな存在感がちょうど良くおさまります。
お客様用としてはもちろん、店舗の什器としてもおすすめです。

アルミやプラスチック製のハンガーの場合、重めのコートやジーンズなどを長時間かけておくと、重力で変形してしまうことがよくあります。
足立道具店のハンガーは厚さ2mm、幅10mmの耐久性の高いステンレス(SUS304)を使用しているため、型崩れもおきずハンガーを並べたときに美しいまま収納することができるのもポイントです。

新たな世界が広がるかも。

生活感がでやすいアイテムこそ、こだわりを持つことでこのハンガーに見合う、長く使える服を買うようになったり、暮らしそのものに影響したりする可能性も大いにあるのではないかなと思います。理想の生活をはじめる最初の一歩として、ハンガーから始めてみるのはいかがでしょうか?

取材・文・写真(3.4.5.6.8.9枚目)きさらちさと


足立道具店 ハンガー
サイズ:W390×D10×H208mm
素材:ステンレス(SUS304)
値段:¥2,970(税込)
製造:岩城工業株式会社
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