Day5-業務理解とデータの収集~現場100回で吸い上げるボトルネック因子のデータ~【備忘録】

現場100回で吸い上げるボトルネック因子

今回は、ナカマコ氏が途中で補足した部分が非常に重要です。

特に、アキヤマ氏のコンビニでの事例がそれを象徴しています(後述)。データをただ遠隔から机上で確認するだけでは、現実に使えるものにはならないばかりか、逆に会社の利益を損なう可能性さえあるのです。

まるで刑事が「現場100回」を実践するように、現場に足を運び、その場で「データの裏付け」や「そのデータが持つ本当の意味」を探ることが、最も効果的にボトルネックを見つけ出す方法です。

小手先の技術に惑わされず、必要な分析知識を持ちながらも、現場に赴くことを忘れないのが重要であるとナカマコ氏は強調しています。この点は、講義が進んでも決して忘れてはならない教訓です。

※また今回も質問パートと前回の復習パートはアーカイブをご確認下さい。

業務理解とデータ収集の重要性について

ビジネスの世界では、結果に影響を与える因子を見極めることが、成功への鍵になるとカンパ先生は言います。
しかし、これらの因子をどこから集めれば良いのか、どのようにして探し出すのかは、非常に複雑な問題です。

以前にも講座で出てきたように、「すべてのデータを集めればバイアスを取り除ける」という理屈は分かります。ただそれは現実的ではありません。

どうすれば効果的なデータ収集が可能になるのでしょうか。
この解答が「業務理解」になります。

ネットショップ運営の例から考えるデータの収集

たとえば、あなたがネットショップを運営しているとします。売上を改善するためにAIを活用しようと考えた場合、「利益率が高い商品」「在庫コストが低い商品」「よく売れている商品」といった指標が重要になってくるでしょう。

しかし、ここで問題が出てきます。
たとえこれらの指標が3つだけであっても、取り扱っている商品が100種類もあると、その全てのデータを人間の目で一つ一つ確認するのは困難でしょう。すべてのデータをチェックしようとしても、時間も労力もかかりすぎてしまいます。

さらに、既存のデータだけを頼りにしていると、見逃してしまうポイントも多くあるとカンパ先生は言います。
例えば、売上データだけでは、なぜその商品が売れているのか、逆に売れていないのかの理由は分かりません。ただ数字を眺めているだけでは、本当に重要な情報が隠れてしまい、うまく対策を立てられないことが多いのです。

データ収集の際には、単に数字を見るだけでなく、商品の売れる理由や背景を理解するための多様なデータを集める必要があります。これにより、AIの力を最大限に引き出し、売上改善のための正しい道筋を見つけることができるのです。

データの裏側に隠された情報

ナカマコ氏の友人、ジェームス・アキヤマ氏の例を見てみましょう。
※後述部分にナカマコ氏の重要な補足説明があります。

彼はかつてコンビニのオーナーをしており、その運営スタイルは非常にユニークでした。
ある日、アキヤマ氏は「自分が美味しいと思うから」という理由で、店内のすべてのパンを撤去し、「マロン&マロン」という商品を800個発注して並べたのです。

もちろん、コンビニのPOSデータは大混乱に陥りました。なぜなら、通常では考えられない量の商品を、イレギュラーな発注で扱い、それをアキヤマ氏自身の営業努力で売り切ったからです。

ここで重要なのは、アキヤマ氏の行動の背景にあるのは「とても美味しい(主観)」に基づいた判断だったという点です。
彼は何のデータも見ていないのに、「自分が美味しいと感じたから」という理由で大量発注を実行しました。

この例から分かるのは、販売量などの単純なデータは実際の販売情報を示すものの、なぜその商品が売れたのかという理由までは理解できないということです。
たとえば、アキヤマ氏が普段食パンを買っているおばあちゃんに「美味しいから」と勧めてマロン&マロンを買ってもらったという営業行動は、データには反映されません。

欠けているデータの存在とその影響

実は、いつも見ているデータに反映されていない情報も数多く存在します。

たとえば、店に並べて即座に売れる商品や、何かのパンが売り切れていたために仕方なく購入された商品などです。これらの情報を知ることで、機会損失を避けることができるでしょう。陳列からどのくらいの速度で売れたのか、何時に売れたのかといったデータを上手く活用することが出来れば、より的確な在庫管理が可能になります。

データには常に欠損が存在する

この点については、どれだけAIを活用しても、データには必ず欠損が存在しています。

これは網目のようなもので、どれだけ細かく織られていても、必ずその間に何かが漏れ落ちるのです。だからこそ、データを集める際には、単に数値を集めるだけでなく、その裏にある人間の行動や感情、直感をも理解し、取り込むことが求められます。そうすることで、真に価値あるデータが手に入り、ビジネスの成功につながるのです。

データの落とし穴を見抜くために必要な視点

※このエピソードにおける教訓に対してナカマコ氏による補足が行われました。

ナカマコ氏が語る友人アキヤマ氏の「マロン&マロン」のエピソードは、データの見方がいかに重要であるかを如実に示しています。

データを分析する際、机上の理論だけでは実態を見誤る可能性があります。データだけを別の場所から見ていると、大きな間違いを引き起こしかねません。これは霧の中で進む船が、遠くの灯台の光を見間違えるようなものです。

要するに目的とする場所には辿り着けず、場合によっては遭難の危険すら出てくる非常事態を招きかねないということです。それほどに「データの意味」を履き違えることは重大な瑕疵を生むことがあると私達は認識しなければなりません。

マロン&マロンのエピソードの教訓

ある日、アキヤマ氏というコンビニオーナーが「自分が美味しいと思うから」という理由で「マロン&マロン」を600個も発注し、それを自らの営業努力で売り切りました。

これにより、POSデータ上では、東京の一部で「マロン&マロン」が信じられないほどに流行しているように見える強いハズレ値が発生します。もし本部がこのデータを見て、「東京のどこかで大きなバズが発生している」と考え、発注量を全店で増やす決定を下したとしたら、大火傷を負うことになるでしょう。

データにはこのような「因子」に見える落とし穴が存在します。

だからこそ、ハズレ値のような異常値が出た場合には、現場でのヒヤリングが必要不可欠です。現場の状況を知り、実際に何が起こっているのかを確認することで、データの誤った解釈を避けることができます。

売れ筋パンのランキングが教えてくれること

次に、パンの売れ筋ランキングについて考えてみましょう。

例えば、あるコンビニの売れ筋パンのランキングが次のようであったとします。1位はカレーパン、2位はソーセージパン、3位はベーコンパン、4位はクリームパン、5位はアンパン、6位は食パンだったとしましょう。

当時のコンビニは、単純に入荷して売れた数を元に発注を増やしていました。本部も仕入れた数と売れた数、その月の推移を見ながら、販売データを「ああだ、こうだ」と議論していました。

しかし、現場を見ていると昼時に食事系のパン(1位から3位のパン)がよく売れ、それらが売り切れたために4位から6位のパンが「仕方なく」買われていたという現実がありました。

これは単にデータを見ているだけでは取り切れない情報であると言えるでしょう。しかしながら現場にいる店長からすれば「それは当然のこと」として知られています。

もし、単純な数値をもとに1位から6位のパンの発注数を増やしても4位から6位のパンは売れ残ってしまう可能性があります。
なぜなら、1位から3位までのパンの発注数が増えたことで、「無いから仕方なく買う」という現象が失われるからです。

それならデータの意味を現場で取り込み、正確な形で解釈を加えれば「1位から3位がとても人気であり、そのパンを多めに発注することで機会損失を最小限に食い止めることができる」と分かるはずです。

データの最適化と現場の理解の重要性

もし最適化を目指すのであれば、1位から3位のパンの発注数を増やし、4位から6位のパンはむしろ減らすことが有効かもしれません。
なぜなら、「1位から3位の在庫増によって仕方なく買う人の数は減る」からです。
4位から6位に対して、逆に発注数を減らすという判断は、現場を踏みしめて、そこにあるデータの意味を理解しなければ決して出来ないことでしょう。

これを可能にするためには、POSデータの中にあるタイムスタンプ(何時何分に誰がどんな組み合わせで買っていたか)を活用する必要があります。
それまで単純に仕入れ数と売れた数、その月の推移しか見ていなかった本部の営業担当が、このタイムスタンプによるデータから顧客行動を細かく知れば、行う対策も違ったものになっていたでしょう。

但し、これは後付けの話です。

実際にはタイムスタンプのデータは膨大であり、まとまりを欠いている部分もあります。単に一人ひとりの購入時間や買ったモノ、どういった組み合わせで買っているかが分かるデータを大量にドンッと渡されても「どうすればいいのか」と戸惑うに違いありません。
よって販売数や仕入れ数などのデータと個別購入した顧客それぞれの情報を本部がこねくり回して「ああでもない、こうでもない」と関連付けるのは非常に難しいことです。

だからこそナカマコ氏は「現場で観察する」を強調しています。

実際に店長やその場にいる従業員であれば「あの人気のパンが売り切れてしまったから、次席のあのパンを買うしかないんだろうな」ということはすぐに分かります。

思い込みでデータを見ない。
現場で正確な意味を解釈できるだけの情報を会得することが非常に重要になるのです。

もし業務フローのすべてで出てくるデータを洗い出し、それを自分の頭だけで想像して「これが重要だ」と思い込んでしまうと、誤った結論に至ることもあると心に刻んでおきましょう。

現場の観察とデータの真の理解

だからこそ、机上の分析だけでなく、現場をしっかりと観察し、どの因子が本当に重要なのかを見極めることが重要なのです。

データは「ザ・ゴール」に示されているように、実際の業務フローの中で何がボトルネックとなっているのかを見つけ出すことを求めるものです。そのデータという事実に対して、思い込みという霧で覆っては意味がありません。

業務の現場での観察こそが、データをただの数字の羅列から、価値ある情報へと変える鍵へと進化させてくれるのです。視野を広げ、現場に密着することで初めて、データの持つ真の意味を見いだすことができます。

この点は非常に重要な部分であり、今後講座が進んでも忘れてはならないポイントになります。
データの扱いや、その分析方法、そこにAIという最新技術まで投入されてしまうとどこかで「データ分析の雄」という感覚が自らに芽生える可能性があります。

それでは見誤る。
ナカマコ氏の語る、この「現場100回」を思わせる話は分析の技術面で優位に立てる状況にあるからこそ、必要なことなのです。

業務フローを把握するための「スイムレーン図」の活用法

ビジネスの現場で、全体の業務フローを明確に把握することは、成功への第一歩です。

業務の流れが見えないままでは、改善の余地がどこにあるのかも分からず、効率化を図ることは難しいでしょう。ここで登場するのが「スイムレーン図」という方法です。
これはオーケストラ指揮者のような存在であり、すべての動きを可視化するためのスコア(総譜)とも言えます。

スイムレーン図とは?

スイムレーン図は、部門横断的なフローチャートの一種で、特定の作業を行うために必要な個々のステップを詳細に分類するツールです。

SUNABACO「AI人材育成講座」スイムレーン図

言い換えれば、業務に対して「誰が」「何を」「どのように」行うのかを明確にし、それぞれの役割を視覚的に分けて示します。

スイムレーン図はまるでプールのレーンのように、各部門や担当者の役割を区分けし、それぞれがどの業務に関わっているのかを一目で把握できるようにしてくれます。

具体的に言えば、スイムレーン図は「何をしなければならないのか」「誰が関与するのか」「中途目標と最終目標をどのように達成するのか」を示すための道標と言えるでしょう。

たとえば、ECサイトの運営において、商品の選定から発送までの一連の流れをスイムレーン図で表すことができます。この図によって、商品のピックアップ、在庫管理、発送作業など、各ステップで誰がどのように関与しているのかが一目で分かるようになります。

顧客の要求は必ずしも正解ではない

しばしば、顧客が提示する要件をそのまま受け入れて定義しても、それが正解であるとは限りません。
なぜなら、顧客自身が本当に求めているものを理解していない場合が多いからです。

たとえ顧客が自分の求めるものを理解していても、それを実現するためにどこをどう改善すべきかまでは分かっていないことがしばしばあります。

「顧客が本当に必要だったもの」

上記の画像で例として示された「顧客が本当に必要だったもの」のタイヤブランコの話は、顧客が求めたシンプルなタイヤのブランコが、プロジェクトの進行とともに関係者の誤解や過剰な解釈で複雑化し、最終的に全く別の使えない製品が作られてしまうという話です。この寓話は、要件定義の重要性と、顧客のニーズを正確に理解する必要性を強調するための例です。

要件定義とは、プロジェクトの初期段階で、顧客が本当に必要としているものを明確にするプロセスです。
これは、単に「何が欲しいか」を聞くだけでなく、その背景にある問題や課題、目的を理解することを含みます。

要件定義が曖昧だと、プロジェクトの進行につれて関係者の解釈が分かれ、期待する結果が得られないリスクが高まります。逆に、正確で具体的な要件定義を行うことで、すべての関係者が同じ目標に向かって動くことができ、無駄や誤解を減らすことができます。

また現実に要件定義が出来たとしても、それで終わりではありません。

「ではどこを改善して動き出せば良いのか」については、単に要件定義が決まっただけでは分からないからです。

こうした曖昧な状況に対処するためには、スイムレーン図を作成し、全体の業務フローを可視化することが不可欠です。
この図を用いることで、現場の動きを把握し、どこに問題点があるのかを明確にすることができます。霧の中を進む船が灯台の光を見つけるように、スイムレーン図は問題点を浮き彫りにし、解決への道筋を示してくれるのです。

要件定義を確実に行い、現実に改善行動を行うためにも、こうしたツールを使って可視化し、全員の理解を合わせることが重要です。

スイムレーン図でボトルネックを発見する

スイムレーン図の最大の利点の一つは、業務フローの中に隠れている「ボトルネック」を見つけることです。

『ザ・ゴール』で語られたように、組織のパフォーマンスを制限しているボトルネックがどこかに存在します。

ボトルネックを探し出すには、業務フローのどこでどのようなデータが発生しているのかを見ていく必要があります。
例えば、ECサイトのスイムレーン図を見た時に「注文が多すぎて倉庫の出荷作業が遅れている場合」は、この部分がボトルネックとなり得るのです。

現場に密着して情報を洗い出す

ナカマコ氏の経験を例に挙げてみましょう。

ある倉庫システムのコンサルティングを行った際、まず経理部に張り付いて観察を開始しました。
経理部を見る事でお金の流れを追うことが出来ます。どのような手続きを行い、どのような流れでお金が動いているのか、そのことを詳細に把握することができます。

しかし、ここで終わりではありません。もちろん、経理部だけでなく、現場のすべての担当者を観察する必要があります。

たとえば、検品をしているスタッフ、仕入れを担当している担当者、販売を担っている担当者、さらには製造部門の担当者など、業務に関わるすべての人々を観察することが不可欠です。

これにより、各部門がどのように連携し、どのようなデータが生成されているのか、またどこでデータが取りこぼされているのか、その意味合いを深く理解できるようになるのです。

スイムレーン図の作成にあたっても、関係するすべての人々を観察し、それぞれのステップを細かく見ていくことで、初めて業務フロー全体が明らかになります。
データがどこでどう生成され、どのように活用されているのかを視覚的に示すことで、これまで見落としていた問題点や改善の余地が浮かび上がるのです。

このように、現場での実際の手続きを徹底的に観察することで、業務の流れを深く理解し、それを図に起こすことで初めて見えてくる事実があります。全体像を捉えるためには、あらゆる担当者と現場を丁寧に見ることが必要であり、それこそが本当の意味でのデータの価値を引き出す鍵なのです。

さらに、このプロセスを通じて得られる情報を共有することで、関係者間の合意形成も取りやすくなります。
単に机上だけで「ああだ、こうだ」と詰めただけの情報をもとに、現場に対して押し付けるような指示をしたところで上手くいくはずがありません。

現場の実態を反映したスイムレーン図を用いることで、全ての関係者が同じ情報を基に議論でき、意見の相違や誤解が減少します。
一つの地図を見ながら全員で道を探る旅のように、共通の理解を持つことで、プロジェクトの方向性を一つにまとめることが可能になるのです。

このような可視化と合意形成のプロセスが、スムーズな意思決定を促し、プロジェクトの成功に大きく貢献していきます。

データの発生地点を明示する

スイムレーン図の中に、どんなデータが使われているのかを明記することも重要です。

これにより、業務フローが明確になり、改善すべき点が見えてきます。
どの処理において今後AIを利用すべきかも、どのデータを活用するべきかも、この図を見れば分かるようになるでしょう。

業務の可視化がもたらすメリット

業務フローが明確になれば、現場で何をすべきかが見え、効率的な改善策も浮かび上がります。

暗い洞窟を進む冒険者が、明かりを欲するのと同じです。
このスイムレーン図は、その「明かり」をもたらすものだと思えば良いのです。闇雲に歩いても、組織は目的から逸れてしまい、最終的には破綻の憂き目を見ることになるでしょう。

これは単なる図ではなく、業務を理解し、より良い結果を導くための重要な海図です。最終的な目的を達するために、スイムレーン図を活用することが求められます。

業務の可視化ができたとき、私たちは初めて、データの本当の価値を見出すことができるのです。

スイムレーン図がもたらす見直しの機会とデータの重要性

業務を効率的に進めるためには、改善すべき点を見つけ出し、必要なデータを特定することが不可欠です。

そのためのツールとして「スイムレーン図」が非常に有効であることは先に伝えました。業務フロー全体を可視化し、見直すべき点や必要なデータが見つかりやすくなります。

スイムレーン図の作成方法

スイムレーン図を作成するには、Miroなどのテンプレートを使うのも一つの方法です。

しかし、人間の思考やイメージはデジタルツールを使っても完全には追いつかないことが多いのも事実です。

最初の段階では、手書きで付箋やホワイトボードを使って作成する方が、柔軟な発想を引き出しやすいかもしれません。
手を動かしながら考えることで、新たな発見が生まれることも少なくないでしょう。

また、スイムレーン図を作成する際には、フローチャートの基本的な記法を使用することが一般的ですが、最も重要なのはその記法ではありません。

大切なのは、現場に入り込んで数値の意味や、どのデータが本質的に必要かを理解することです。正確な書き方よりも、データの背景にあるストーリーをしっかりと掴むことが求められます。

スイムレーン図を書くことで見えてくるもの

実際にスイムレーン図を書いてみると、思いがけない発見をすることが多いです。

例えば、ある部門の業務が別の部門にどのような影響を与えているのかが明確になり、これまで気づかなかった問題点が浮き彫りになることがあります。

また、業務フロー全体の中でどこにボトルネックがあるのか、どのデータが不足しているのかも見つけやすくなります。

さらに、スイムレーン図とデータの利用、AIの導入を組み合わせることで、目指すべきゴールが見えてきます。

そのゴールとは「平準化」です。

平準化とは、業務のバラバラな部分を均一化し、偏りをなくすことを意味します。これは、トヨタ生産方式にも採用されている考え方で、上手な人とそうでない人のズレを観察し、修正して、全員が同じように上手になることを目指すものです。

平準化がもたらす効果

スイムレーン図を用いて平準化を進めることで、経験豊富な店長も、新任の店長も、機会を逃さずに最善の運用ができるようになります。

まるで全ての社員が一つの土台を共有し、それぞれの能力を引き上げ合うような状態を作り出すことができるのです。これにより、業務の効率化だけでなく、顧客満足度の向上やコスト削減にもつながります。

自分の仕事に対してもスイムレーン図を活用する

いずくね先生によれば、スイムレーン図は自社内の業務だけでなく、個々の仕事にも活用できるツールです。
自分の業務をスイムレーン図にしてみることで、日常的な仕事の全体像がより明確に見えてきます。

さらに、具体的に業務の流れを可視化することで、これまで見過ごしていた問題点や改善点に気づくことができるかもしれません。

また、他の人の視点を取り入れることで、「当たり前」と思っていた部分についても新たな洞察が得られることがあります。
スイムレーン図を用いて自分の業務を見直すことで、新たな発見や気づきが生まれ、より効率的で効果的な働き方が実現できるのです。

スイムレーン図で業務を「見える化」し、平準化を実現する

スイムレーン図は、単に業務フローを描くツールではありません。

それは、見直すべき点や必要なデータを明確にし、業務全体の「見える化」を進めるための重要な手段です。
これにより、全ての従業員が同じ基準で業務を遂行できるようになり、企業全体の効率と成果を向上させることができます。

スイムレーン図を用いて、業務の偏りをなくし、全員が最善の運用を行える平準化を実現することが、成功への鍵となるのです。

Day5の総括

ビジネスの成功を左右する要素は多岐にわたりますが、その中で特に重要なのは、現場に足を運び、データの背後にある真の意味を適切に理解することです。
いくら高度な技術や分析ツールを用いても、データの解釈を誤れば、誤った結論や戦略を導き出してしまうリスクがあります。

ナカマコ氏の言う「現場」の精神で実際の状況を観察し、データの裏付けを取ることが何よりも大切だと強調するのは、このためです。

データからボトルネックを探し出すためには、現場で得られる情報を基に業務フロー全体を可視化することが求められます。
スイムレーン図を活用すれば、各業務の流れが視覚的に整理され、どの部分に改善の余地があるのか、どのデータが不足しているのかが明確になります。これにより、関係者全員が共通の理解を持ち、効果的な意思決定が可能となり、業務の効率化が促進されるのです。

また、一つの部門や本部の机上で練り上げるのでなく、検品、仕入れ、販売、製造といったすべての関連部門の動きを細かく観察することが不可欠です。
各部門がどのように連携し、どのデータを生成しているのか、どこでデータが取りこぼされているのか、そのデータが持つ本当の意味は何か、を理解することで、業務全体のフローが明確になり、新たな発見や気づきが生まれます。このプロセスを通じて、データの本当の価値を引き出し、より良い業務運営が可能となるのです。

また組織の中で目指すべきは「平準化」です。
平準化とは、業務のばらつきをなくし、全ての従業員が同じ基準で働けるようにすることです。
これにより、経験豊富な社員も新任の社員も同じレベルで最善の運用ができるようになり、組織全体のパフォーマンスが向上します。スイムレーン図やデータ分析、現場観察を通じて得られた情報を基に、ボトルネックを解消し、業務の平準化を実現することが、持続的な成長を遂げるための重要なステップとなります。

データの重要性を理解しつつも、それに盲信するのではなく、現場の実情をしっかりと把握することが、ビジネスの成功に繋がります。
データからボトルネックを探り、平準化を目指して組織全体を最適化するためには、現場での観察と正確なデータの解釈、そして全員が同じ目標に向かって協力する姿勢が欠かせません。

これこそがナカマコ氏が語る「現場」の真髄であり、私たちが常に心に留めておくべき教訓です。

枠外でのおまけの話・ジョブディスクリプションの重要性と日本企業への示唆

ビジネスの現場で、明確な職務定義があるかどうかは、組織の運営に大きな影響を与えます。
特に外資系企業では「ジョブディスクリプション(Job Description)」がその鍵となっています。

しかし、日本のホワイトカラーの仕事には、しばしばこのジョブディスクリプションが存在しないために、組織運営が「なんとなく回っている」という状況が生まれることが多いのです。

だからこそ本日の講義の内容が個人レベルや小さなチームでも役立てられるものになっていくでしょう。

ジョブディスクリプションとは?

ジョブディスクリプションとは、社員が担うべき具体的な職務内容や責任範囲を明文化した文書のことです。

この文書には、担当者がどのような業務を行い、どのような成果を求められているかが詳細に記載されています。
たとえば、ある人が「マーケティングマネージャー」のポジションに就いている場合、そのジョブディスクリプションには「市場調査の実施」「広告戦略の策定」「キャンペーンの成果分析」といった具体的な業務内容と、どの程度の成果を求められるかが明記されるのです。

日本のホワイトカラーとジョブディスクリプションの不在

日本の多くの企業では、このような明確なジョブディスクリプションが存在しないことが往々にしてあります。

そのため、業務の範囲が曖昧であり、社員たちは「なんとなく回している」状態に陥りがちです。
これは船の乗組員たちが、誰も明確な役割を持たずに、それぞれが好きな方向に漕いでいるようなものです。目的地にたどり着くのは一苦労でしょう。

特に新しい事業やプロジェクトを立ち上げる際、この問題が顕在化します。「職務」と「責任」が一緒になっていないため、何を誰がやるべきなのかが不明確になり、結果として計画が滞ることがあります。

新しい挑戦に対して組織全体が協力するべき場面で、かえって混乱を招いてしまうのです。

職務と役職の一致がもたらす効果

日本の企業も、役職と職務が明確に一致する状態を目指すべき時が来ていると言っても良いでしょう。

ジョブディスクリプションを導入することで、社員一人ひとりが自分の役割と責任を理解し、適切な行動を取ることができるようになります。
船の乗組員たちがそれぞれの役割を持ち、一致団結して同じ方向に向かって漕ぎ始める組織づくりです。

この状態を実現することで、組織はより効率的に動くことができ、迅速に変化する市場環境にも柔軟に対応できるようになるのです。

但し、現実には明確になることでサボれない状況が生まれ、今まで隅っこで「なんとなく生かされていた」という組織人が駆逐されることにも繋がります。
このあたりは日本における解雇要件の緩和などが、この状況に拍車をかけるものと予想されます。

日本企業への示唆:ジョブディスクリプションの導入

日本企業がこれからの競争に勝ち抜くためには、ジョブディスクリプションの導入を検討することが求められます。これは単なる文書作成の問題ではなく、組織文化の改革ともいえます。明確な職務定義を持つことで、社員のモチベーションが向上し、業務効率が改善されるだけでなく、新しい事業やプロジェクトの実行力も格段に高まるでしょう。

ジョブディスクリプションの導入は、企業全体が一つの方向に進むための羅針盤となり得るのです。役職と職務が一致した状態を目指し、明確な責任と役割を持つことで、日本の企業もより大きな成果を上げられるようになるでしょう。

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