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高まり続けるEC化率と「No.1表示」問題

甲斐 亮之
株式会社ギャプライズ 代表取締役
士業適正広告推進協議会 理事

経産省による2023年8月発表の報告書では、日本におけるBtoC物販系分野全体のEC化率は9.13%となっています。(EC化率=EC市場規模÷全商取引の市場規模)こちらは、消費活動における10%弱がインターネット経由になっているというデータとなります。

EC化率は下記のとおり年々上昇しており、2022年の世界のBtoC市場のEC化率は推計19.3%であることを鑑みると、上昇基調は今後も続いていくことが予想されます。

出典: https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230831002/20230831002-1.pdf

より身近になるインターネット通販ですが、身近になるにつれ、根拠の怪しいプロモーション表示も多くなっているのが現状です。読者の皆様も「お客様満足度No.1」「楽天ランキング1位」「地域No.1店舗」などの表示や意匠を目にする機会も増えているかと思います。

2023年の夏以降、景品表示法に基づく消費者庁の措置命令の中に、客観的な根拠のない「いわゆるNo.1」表示の摘発が登場してきています。

以下の具体例は、いずれも同庁の発表資料から引用

判例確定「利用有無を問わないイメージ“No.1”」は不当表示
23年 6月14日: ペットサプリ「7冠達成」
「ウェブサイトの(利用有無を確認しないアンケートによる)イメージ調査」結果を合理的根拠とは認めず(以下同様)
23年 8月 1日: オンライン家庭教師「利用者満足度No.1」ほか
24年 2月27日: 太陽光発電システム機器「3部門No.1」
24年 3月 1日: 地球の歩き方「イモトのWiFi 満足度3項目No.1」

24年 3月 1日: 注文住宅5社「3部門No.1」
24年 3月 5日: 家庭用蓄電池の販売・施工「3冠達成」
24年 3月 7日: 蓄電池機器の販売・施工「くちコミ・満足度4冠」
24年 3月15日: 健康食品の通信販売「品質・効能10冠達成」

「No.1調査」関係では初の“業務停止命令”に
注)本件は景品表示法ではなく、特定商取引法違反(誇大広告)

このような根拠の乏しい、いわゆるNo.1表示に対して消費者庁が腰を上げて実態調査に乗り出し、今秋に結果を発表すると公表されています。

各社、競合となるEC店舗も増え、広告出向費用も上がっている中で、手っ取り早く訴求力の強い訴求をすることで新規顧客を獲得したい意図と、そういう心情や背景につけ込む「1位を取らせるという結論ありき」の調査会社の営業手法が合致した結果という側面があることは把握しつつも、消費者を置き去りにするプロモーション手法であることは間違いなく、断じて許容できるものではありません。

消費者庁が本格的に調査した結果を待つ身ではありながらも、広告業界に身を置く人間の実感としては、表現方法は異なれど少なからず消費者の誤解を招く「No.1表記」が存在しています。

インターネット通販は生活に欠かせないからこそ、業界が健全化し、消費者の誤解や被害を極小化させ、インターネット通販本来の楽しさや便利さを享受できるような未来を創っていくことを心から望んでおります。

また、このような状況は通販に限らず、インターネットを介した各種活動にも波及するのは言うまでもありません。

正直者が馬鹿を見ない社会が実現されることを祈りつつ、状況をウォッチし続けたいと思います。

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