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士業広告におけるChatGPT活用の組織内ルール

甲斐 亮之
株式会社ギャプライズ 代表取締役
士業適正広告推進協議会 理事

私の前回コラムでは、昨年末に衝撃のデビューを果たしたOpenAI 社のChatGPTを扱いました。

▶︎ 対話型AIの(現時点での)実力と影響

今回はChatGPTの組織内ルールについてお伝えしたいと思いますが、その前にあらためて、ChatGPTをはじめとするいわゆる対話型AIの仕組みについておさらいしておきたいと思います。

ChatGPTの情報収集は大きくわけて、
①ネット上で開示されている情報
②ネット上にはないChatGPT上でのユーザーとの対話データ
の2つがあります。

これらの膨大なテキストデータをもとに、ChatGPTは常に学習し続け、ユーザーからのフィードバックや新しいデータを通じて改善されます。この学習プロセスにより、AIの性能が向上し、ユーザーにより適切な応答が提供されるようになります。

このように進化と普及が進むChatGPTですが、士業広告の世界においてもコンテンツの自動生成をはじめ、様々な活用がなされていく可能性があります。

そこで今回はChatGPTの使用における組織内ルール、特に「②ネット上にはないChatGPT上でのユーザーとの対話データ」の取り扱い方にフォーカスして、各種リスクを踏まえた上で、どのようなルールを設けてそれらを利活用するのか、一般論的ではありますが、多くの組織に当てはまるような内容を以下、記載します。

1. 秘密情報を入力しない

秘密情報の種別や内容、開示可能範囲などは各組織で定められているかと思います。また、取引先等とのNDA(秘密保持契約)締結により、自社が秘密保持義務を負う情報もあります。それらを入力してしまうと、入力した秘密情報をOpenAI社が取得し、ChatGPTの学習データとして用いられる可能性があります。それによって、重要な社外秘情報が漏えいする可能性があります。場合によっては、NDAに違反し、責任を負う可能性もあります。

2. 個人情報を入力しない

入力した個人情報をOpenAI社が取得し、ChatGPTの学習データとして用いられる可能性があります。これは個人データの第三者提供にあたり、原則として本人の同意を得る必要があります(個人情報保護法27条1項)。本人の同意を得ていない場合は違法となる可能性があります。

オプトアウト(個人情報を収集、使用、共有するプロセスから自分の情報を除外または削除すること)の申請により、入力した個人情報がChataGPTの学習データとして用いられない場合でも、OpenAI社は「外国にある第三者」に当たるため、本人の同意なしでは個人情報の入力はNGとなります。

3. 内容の正確性を確認する

生成AIによる生成物は、その内容が不正確なものを含む可能性があります。また、OpenAI社も内容の正確性は保証していません。生成物を、特に業務に用いるときは、内容の正確性を確認するのが望ましいです。

4. 第三者の著作物を入力しない

生成AIへ第三者の著作物を入力する行為自体は著作権侵害とはならないと考えられます。ただし、生成AIによる生成物が第三者の著作権を侵害している場合、その生成物を利用することで第三者の著作権を侵害する可能性があります。

ただ、生成物が第三者の著作権を侵害しているかの判断が難しいこともあるため、念のため、明らかに第三者の著作物だと分かるものを利用する意図で生成AIに入力しないのが望ましいです。なお、プログラムも著作物に当たる場合があります。

5. ChatGPT(OpenAI)の利用規約を遵守する

OpenAI社の利用規約を確認して、遵守するようにしてください。特に注意すべき内容を紹介します。

OpenAI利用規約(Terms of use)
第三者の権利侵害が禁止されている。
OpenAI利用ポリシー(Usage policies)
禁止される利用行為として、違法行為への利用、攻撃的・暴力的な内容の生成、マルウェアの生成、身体的危害を及ぼす危険性が高い活動、経済的損害を及ぼす危険性が高い活動、詐欺行為、等が定められている。
OpenAI 共有&出版ポリシー(Sharing&publication policy)
遵守事項として、以下等が定められている。
共有、配信する前に生成物を確認すること。
コンテンツはユーザー、又はユーザーの会社によるものである(と示す)。
コンテンツはAIにより生成されたものであることを明確に示す。
OpenAIのポリシーに反するコンテンツ、又は他人を攻撃するようなコンテンツを共有しない。

【参考】
OpenAI各種規約、ポリシー
利用規約(Terms of use)
プライバシーポリシー(Privacy Policy)
利用ポリシー(Usage policies)
共有&出版ポリシー(Sharing&publication policy)

6. オプトアウト(個人情報を収集、使用、共有するプロセスから自分の情報を除外また削除すること)を申請する

オプトアウトを申請することで、ユーザーが入力したデータがChatGPTの学習データとして用いられないようにすることができます。ChatGPTを利用する際は、申請フォームからオプトアウトを申請するようにしてください。オプトアウトしてもOpenAI社は「外国にある第三者」なので個人情報は入力しないでください。

【参考】申請フォーム

冒頭に申し上げた通り、士業広告の世界においてもコンテンツの自動生成をはじめ、様々な活用がなされていく可能性があります。ChatGPTをはじめとした生成AIによる進化や普及が止まることは考えづらいですし、それらをコントロールすることは我々には難しいです。

これからは取引先に対して生成AI利用における注意喚起を求めることはデフォルトになってくる時代ですので、もしまだルールを明文化していないようでしたら、これを機に見直されてはいかがでしょうか。

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