見出し画像

新破産者マップ

櫻井 光政
弁護士
士業適正広告推進協議会 代表理事

債務超過に陥った人に自己破産を勧めると、今でも、戸籍に記載されるのではないかとか、近所の人に知られるのではないかと心配する人がいる。そんな時弁護士は、戸籍謄本や住民票に記載されることはないから大丈夫ですよとアドバイスする。官報には掲載されるけれど、普通の人は官報なんか見ませんから、と。

ところが最近「新破産者マップ」なるWEBサイトが開設された。破産者の住所氏名をグーグルマップに関連付けたもので、マップ上の破産者の住所にピンが立ち、ピンをクリックすると住所氏名が表示されるというものだ。その下には「削除申請はこちら」という案内があり、クリックすると、ピンの内容を削除する場合は6万円、ピンごと削除する場合は12万円をビットコインで支払うようにとの説明が現れる。

2019年に同様のマップが公表されたことがあったが、その時は削除に金銭を要求するようなことはなかったし、個人情報保護委員会がWEBサイトの停止を命じたこともあり、数日で削除された。

3年ぶりに登場した今回のマップは、サイトの運営が海外で行われているから日本の法律による制限を受けないと宣言し、今のところ削除の兆しもない。

しかしながらこのようなマップは破産経験者のプライバシーを損なうのみならず、破産法が目的の一つに掲げる破産者の経済的再生をも妨げるものだ。そして何より名誉棄損や恐喝に該当する犯罪行為に該当する。これらの罪を日本国民が犯した場合は、国外において犯した場合でも日本の刑法が適用される。

捜査当局は厳しい態度で臨み、犯人を検挙してほしいものだと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?