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民間企業と社会福祉法人が協力して、一緒に地域の未来をつくっていく

京都の伏見で動き出した、新しいかたちの ACWA BASE。高齢者福祉総合施設「ももやま」で、デイサービスのご利用者さんや地域の方が入居者さんの洗濯物を畳んでいます。

なぜこの活動を始めることになったのか、どのような展開を目指しているのか、施設長の岩佐 淑子(いわさ よしこ)さんと、ACWA BASEを運営する株式会社アグティの代表取締役 齊藤 徹(さいとう とおる)さんにお話を伺いました。

「ACWA BASE って何?」と思われた方は、まずはこちらの記事を読んでみていただけたらと思います。

地域の人のやりがいを一緒につくっていくプロジェクト

齊藤:改めて、 ACWA BASE を「ももやま」に呼んでいただいてありがとうございます!アグティとして高齢者施設さんとのお付き合いはこれまでもあったんですけど、岩佐さんとは今までにない関係性でお仕事ができているという感覚があります。取引上で見れば「お客様」と「業者」なんだけど、地域の人のやりがいをつくっていくプロジェクトを一緒にやっている仲間みたいな感覚があって、すごく嬉しいです。

岩佐:所属する協議会の研修で齊藤さんのお話を伺って、民間企業が地域づくりにここまで関わっていることは素晴らしいと感動しました。同じ法人の他の施設長にもぜひ聞いてほしいと思って、まずは法人に来ていただいたんですよね。それから、「ももやま」で試してみたいと法人内で話をしました。

齊藤:僕たちにとっては、この取り組みって何も特殊なことはやらないんです。洗濯物を預かって、きれいに洗って持ってくるところは同じなので。でも、岩佐さんたちにとっては、もともとのやり方と全く違うことを始めたわけで。

齊藤:参考になる前例もないし、ゼロイチの挑戦ですよね!リスクを取ってご一緒していただけていることが、ありがたいです。岩佐さんのチャレンジ精神がすごいなと思っているのですが、これまでも色々な活動をされてきたんですか?

岩佐:施設の立ち上げに関わることが多かったので、チャレンジの連続だったのかもしれないですね。ここに来る前は健光園「あらしやま」という施設にいて、デイサービスを小規模多機能型居宅介護の事業所に転換してスタートさせました。

異動してすぐに、デイサービスのご利用者さん全員に他の施設にうつっていただく段取りをしなければいけないので、たいへんでしたね。閉鎖するまでの毎日、職員とご利用者一人ひとりに説明をしました。また、移行先のデイサービスにも職員と1件1件お願いに回りました。ハードだったと思いますが、皆よく頑張ってくれました。

自分が良いと思う道を選択するために、反対があっても意義を一所懸命に伝える

岩佐:デイサービスを小規模多機能に転換することに、反対の声も少なからずありました。あらしやま小規模多機能開設プロジェクトチームを発足して、議論をくり返しました。職員への説明会も何度か行いましたね。スタッフを連れて先進的な施設にたくさん視察に行って、理想の事業をかたちにして広げていきたいと奮闘しました。

齊藤:それは大きな挑戦ですね。

岩佐:2006年の介護保険法の改正で小規模多機能型居宅介護が始まった時、なんていい制度だろうと感動しました。それまでは制度の枠組みとご利用者さんのニーズがどうしても合わなくて、すきまが生じてしまう悔しさがあって。小規模多機能型は、ご利用者さんの状況に合わせてサービスを組み立てられるんですよ。やっぱりね、制度に縛られず、自由に生活していただきたいじゃないですか。

齊藤:なるほど。すごく共感します。

岩佐:健光園「あらしやま」の小規模多機能は、2019年に無事に開所できました。ところが、その後すぐに新型コロナウイルスの流行が始まって。デイサービスのままコロナ禍を迎えたら、大打撃を受けたと思います。事業形態を変えていたことで危機をまぬがれました。小規模多機能型は、通所されない場合は訪問に切り替えられるので。コロナ禍でも、地域の方とのつながりやご利用者さんの希望を叶える取り組みも、できる範囲で行いました。

齊藤:通所が原則のデイサービスを続けていたら、休止中は売上がゼロになっていたってことですよね。リスクを予測しての方向転換ではなかったと思いますが、よりよくしようと考えてチャレンジした結果、経営的にも助かった。

岩佐:その時の経験があるから、自分が良いと思う道を選択しよう、その意味を職員に一所懸命伝えてついてきてもらおう、という意識が身についたんだと思います。

齊藤:僕たちにも、岩佐さんから声をかけてくれましたもんね。研修や講演の場で出会っても具体的な話につながることは滅多にないので、嬉しかったです。僕、岩佐さんの忘れられない言葉があって。以前、「私たち社会福祉法人には、地域のためにやるべきことをするという使命がある」とおっしゃっていましたよね。大義をまっすぐ貫こうという姿勢に、感銘を受けました。

未来を一緒につくっていこうとしている時には、目先のことはうまく助け合えばいい

岩佐:社会福祉法人でしか働いたことがないので、社会のためにできることを追求するしかないんですよ。介護職にもっと光を当てたいんです。メディアなどでクローズアップされるのは食事や入浴、排泄の介助が多いですが、本来の仕事はそれだけじゃない。ご利用者さんの人生に関わって、よりよく生きていただくために伴走するのが介護だと思います。

ただ、現場の職員が忙しすぎて、なかなか十分な時間が取れないのが現状で……。間接業務を減らすことで、介護職の醍醐味を一人でも多くの職員に味わってほしいですね。人が楽しんでくれることを自分の喜びにできる人たちだと思うので、職員の皆がやりがいを感じられる職場にしたいです。

齊藤:すごくわかります。僕は会社にとって一番大事なのは、働く仲間の幸せだと思っていて。外側から見ると、会社はお客様のためにあって、彼らは事業のために言われたことをやる人に見えるかもしれないけれど、アグティは働く仲間のためにある会社なんです。

岩佐:その考えで経営されているから、わたしたちにも歩み寄ってくださったんですね。最初にお約束した開始時期が数ヶ月遅れて、お待たせしたあげく、初回の集配予定日に洗濯物がなくて……。

齊藤:「すみません!いつもの調子で洗濯してしまいました!」ってことだったので、その日は急きょ集配を中止しましたね。未来を一緒につくっていこうとしている時には、目先のことはうまく助け合えたらそれでいいじゃないですか。これから広がっていく取り組みなので。夏休みになったら、洗濯物を畳む時間帯に、児童館の子どもたちが「何してんの?」って見に来るかもしれませんね。

岩佐:子どもたちも混ざったら、おもしろいですね。「子どもはボランティアだよ」って言わなきゃですけど。

齊藤:それを「おもしろい」って言ってくださる方だから、ご一緒できているんだなぁと今思いました。枠組みを超えたことが起こると、困ったぞと止めにかかる方もいるので。

岩佐:ご利用者さんだけがいるのではなく、地域の人と混ざり合うことの意味が大きいと思っているので、枠を超えていかないとですよね。誰かがいきいきと暮らすための支援ができることは、すごくやりがいがあります。ももやまの ACWA BASE をしっかりかたちにすることが、この先につながる大きな一歩だと思うので、今後ともよろしくお願いします。

齊藤:こちらこそよろしくお願いします。今日はありがとうございました!

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岩佐さんのインタビューはこちら↓

運営:株式会社アグティ
協力:社会福祉法人 健光園  高齢者福祉総合施設「ももやま」
文・写真:柴田 明


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