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ハリトヒト。のインタビューを受けました

5月に鍼灸メディア「ハリトヒト。」のインタビューを受け、6月25日に公開されました。普段は本名も出さず、顔もあまり出さずですが今回は珍しく顔も本名も出ており、まさに「ヒト」という感じになっています。

反響は様々ですが、今一度補足というかちょっと深堀りした内容を残しておきたくてnoteを更新します。
なんで今頃?という感じがしなくもないですが、単純にX(Twitter)だとタイムラインで流れてしまうので。

1.営業

インタビュー内で『訪問鍼灸の場合「ケアマネージャーに挨拶回り行く」というのが基本スタイルになります。』と説明をしていますが、すべてのあはき師が該当するわけではありません

前提として私の場合は事業所の立ち上げからだったため、訪問での施術以外にも営業活動もしているという状態です。なので、訪問鍼灸や訪問マッサージの会社に入社したら必ず営業活動もやらなくてはいけないというわけではなく、恐らく多くの人が訪問施術のみとなるかと思います。入社したタイミングや事業所の方針によって異なりますし、役職などでも変わるはずです。

あとはケアマネージャーへの挨拶回り以外に方法がないわけではありません。あくまでも多くの事業所が取っている手段として語っています。実際に私の場合は地域包括や市の高齢福祉課とつながり、そこから仕事につながるケースもありました。しかし介護保険の対象となっている方が多いため、調整や説明などで必然的にケアマネージャーとのやりとりが増えるのは間違いないです。

2.施術

2ページ目では『1件当たりの移動時間が20~30分、施術時間も20~30分くらいですね。1日8時間労働として、1日7~8人が多いパターンかなと思います。1人の患者さんに週2~3回訪問するケースが多いです。』と説明していますが、これも事業所によって異なる感じがします。
というのも例えば訪問看護ステーションの場合では20分未満、30分未満、30分以上1時間未満、1時間以上…など細かく時間によって単位が定められているのに対して、訪問鍼灸や訪問マッサージの場合は時間による設定がありません

実際に私の場合は移動がもっとタイトなことがあり、だいたいは10分前後が多いです。施術時間も30分が基本で、状況によっては40分となることもあります。だいたいが1施術移動込みで1時間設定にしておけば8時間労働で8名かなという感じがしますが、同一施設内の訪問であれば移動時間がなくなるので9〜10名ほどになります。

施術頻度も人によって異なりますが、個人的に最初は週に3回から開始して、経過に合わせて2回、1回、終了という流れにしています。ここもかなり施術者によって意見が分かれそうですが、個人的にはダラダラと施術をし続けるのは良くないと考えているので、設定した目標と状態・状況を照らし合わせながら判断しています。

3.同意書

同じく2ページ目には同意書についても説明しています。訪問事業をしていて多くある質問に「どうやったら同意書を書いてもらえるか。」というものがあります。
というのもこれってたぶん今の学校でも教えるところが無いと思うんですよね。「教える」というかそもそも答えはないのだと思います。ときどき訪問関連のセミナーで「100%同意書が出る方法教えます」みたいなのを目にしますが、医師によって鍼灸に対する印象も異なりますし、状況によっては出しようがないものもあるなかで、100%出る方法ってマジで洗脳するしかないです。

でももしもこれを読んでいるのが学生さんならぜひ学校の先生に「どうやって同意書を書いてもらえば良いか。」と質問してみてください。「患者さんに同意書を持たせて医師に提出してもらって。」と教えられたなら、もう一度その行動が正しいか間違っていないかを考えてみるのは良いと思います。

というのも、ある学会には医師・鍼灸師・薬剤師が地域で連携をとるためにはどうしたら良いのか、どういった方法で連携をとればいいのか等を考える会があり、そちらに以前参加した際に「なぜ医師は鍼灸の同意書を書かないのか。」という質問が飛んだことがありました。
『まず鍼灸がどういったものか知らない。この同意書がなんのためにあるのか分からない。そういった状況で自分の診ている患者がある日この紙を持って来院して「鍼灸の先生にかかりつけ医に持っていけと言われました。」と言われても書けるわけない。』との返答でした。
あくまで代表医師1人の意見ではありますし、これを聞いた私個人の感想にはなりますが「鍼灸師側が間違った方法をとっている可能性がある。」と感じました。

そのため「どうすれば書いてもらえるか」ではなく「どうすれば理解していただけるように見せられるか」をスタートとしています。なので事前の説明や経過報告にこだわっています。施術前後の状態や使用している鍼の太さ・長さ・刺入位置と刺入深度まで。リスクはどういったものがあるか、どういった変化が生じたか、今後期待できることはなにかなど。しかしこれもまた、どこまで説明や報告をするかもまだまだ事業所によって様々なのが現状だと思います。

4.マインド

3ページ目が一番反響がありました。
国家試験対策の講座などを通じて多くの現役学生さんともつながりがあるので、「年齢に制限があり、鍼灸接骨院は諦めて訪問鍼灸を選んだ。」などの話はよく聞きます。しかし訪問鍼灸を選んでも治せない鍼灸師になる。訪問鍼灸で自力はつかない。などの厳しい声があることも知っています。

私個人の意見では、まず高齢の方や難病の方が多いのでそもそも「治す」という感覚を得にくいのだと思っています。全員がそういうわけではありません。その日訴えていた痛みが軽減したり、先程まで動かせなかった方向への動作が楽になったりという改善はちゃんとあります。
しかし中には変化が緩やかなものもあります。長い目線で疼痛や日常生活動作の変化を期待しなくていけないこともあります。

あと在宅医療分野でないとイメージしにくいかもしれませんが、「在宅医療・在宅介護チームの主な目的」は①自立支援介護②フレイルの予防③QOLの向上④看取りとなっています。
これをベースに考えたときに各現場で求められる内容も微妙に異なりますし、連携するにあたって鍼灸のみでどうにかしなくてはいけないものではないのです。もしこれが自力がつかない印象を与えているのだとしたら、チーム医療に目を向けてみると良いかもしれません。

チーム医療は他職種の領域を犯して何かをするのではなく、共通の目標に向かってそれぞれの職種がどのような力を発揮し、他の職種のサポートができるかが鍵となります。
「治したい」と思うのは大切です。目の前の現状をどうにかしたいと思わない人はいないと思います。しかし自分一人だけが携わるものではありませんし、自分一人で何でもできるわけではありません。

なので「チーム医療の一員としてどのように貢献できるかが大事。」という会話のなかで『チーム医療として患者さんに日々対峙していくなかで、「治る」「治らない」とは別の評価基準をおのずと持つことになるのが、訪問鍼灸なのかもしれません。』という発言につながっています。
単に治せる・治せないという評価ではなく、チームとしては「協働できているか」どうかのほうが重要だと思います。
在宅で施術を受ける方だからこそ、訪問だからこそ自身のやりたいことだけを優先するのではなく、どのような方法が他職種のバックアップとなるかも考えるのです。

通して読めば別に「訪問鍼灸だから治さなくて良い」とは言っていないのが分かると思います。しかし何故か一部分を切り取られて「なんのために訪問鍼灸をしているのか。」といった意見をしてきた方もいますが…

5.インタビューを受けた目的

インタビューを受けた目的はいくつかあります。
1つめは訪問鍼灸の世界を知っていただくためです。在宅医療というのは扉の向こう側で行われるものなので、覗こうとしない限りは見えません。
しかしその扉の向こう側にも生活が続いており、それを支えるために鍼灸も活用されています。まずは関心を持っていただくために引き受けました。

2つめはこれから訪問鍼灸を志す方が自信をもって働けるようにするためです。
訪問鍼灸を非難する方はいます。それで良いと思います。訪問鍼灸も実際問題点が多いと感じる部分もあります。保険を使った施術なのにいつまでも施術していて良いのか、自己決定能力が低下した方を誘導的に言いくるめていないかなど。
だからこそ厳しい目があることも理解して、それでも個人のために、社会のためになっているのだと打ち出せるだけの行動を取り続ける必要があります。先述したように実感はしにくいかもしれません。しかし臨床7年目になりますが、必ずこうした鍼灸での支援も必要だと感じています。理解の無い言葉もありますが、その言葉だけにとらわれないでください。歴が長くなればなるほど「訪問鍼灸で治らない」だなんて思わないはずです

6.編集後記的な

昔はmixiやFacebookといったSNSは知人同士のコミュニケーションツールとして使っていたので、人との距離感を誤ってしまうことが少なかったように感じます。しかしX(Twitter)は会ったこともないのに結構攻撃的なことを言ったりする人もいるので、単純にSNSの種類の問題ではなく、完全に距離感がバグっているのだと考えています。むしろコロナで拍車がかかったようにも。
単純に有益な情報を貰えるからフォローする。などは良いと思うんです。でもやはり人ですから距離感は大事。「そんなこという奴はSNS向いていない!」って意見もまぁ分かるんですが、それすらやはり距離感がバグっているのかなと。

私としては開業されている鍼灸師でも、訪問されている鍼灸師でも、教育現場におられる鍼灸師でも、それぞれのフィールドで仕事をしているのだから批判する必要はないと思うんですよね。もちろん間違ったことをしているのなら話は別ですが。

別に批判されて悔しいというわけではないです。私が訪問鍼灸を始める前から既に【4.マインド】のとこで語ったような意見はありましたし。どこかでアンサーを出したいとは思っていたのでたまたま機会を得てこのタイミングになりました。

しかし何故他のフィールドを批判するのかってつくづく疑問です。経験したこと無いからイメージしにくいのか、はたまた経験はあるけど思うようにいっていないのか。もしかしたら根は不安で安心したいがために他者を批判するのかな。

あなたの仕事も私の仕事も、社会をつくる大切な仕事ですよ。

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