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レモネードの季節

中央ヨーロッパの夏は暑い。日本とは違い湿度が低いので、体に纏わり付くような暑さではないが、しかし四十度近くまで温度が上がる日もあって、なんとなく想像していたヨーロッパのイメージと違う。とあるデータによればここ百五十年ほどの間に全世界平均で気温が一度ほど上昇しているそうだが、ヨーロッパだけみると二度も上がっている。ヨーロッパで気候変動に対する問題意識が高いのも、彼らの実感からきているのかもしれない。

日本はおそらく昔からある程度暑かったのだろう。和菓子や風鈴などを見るに、目や耳から涼しさを感じるような文化がちらほら見られる。そして技術の進歩とともにエアコンは家庭の必需品となり、今や夏にエアコンなしで暮らしている人を探す方が大変なのではないかと思う(しかし驚くことに私の実家はいまだにエアコンをつけていないのだが…)。

ヨーロッパはおそらく昔はそんなに暑くなかったのだろう。また湿気が少なく日陰に入ってしまえば涼しいので、夏の暑さ対策というよりは冬の寒さ対策に力を入れているのが建物の作り(二重窓やセントラルヒーティング)などを見てもわかる。しかし近年の暑さは異常なので、日陰にいても暑い時は暑い。また古い建物の多いウィーンやブダペストではいまだにエアコンがないところばかりなので、窒息しそうなぐらい暑い時がある。

そこで日本の冷涼な和菓子に相当するものがないだろうかと考えたところ、思いついたのがレモネードである。夏になるとレストラン、カフェ、バーなどをはじめとしてどこでもレモネードがメニューに並ぶようになる。

日本にいるときにレモネードというと、透明のレモン水(もしくは炭酸水)の甘いジュースのことかと思っていたが、ブダペストのレモネードはレモンやオレンジがごろっと入ったものが多い。ミントやグレープフルーツ、ベリー系が入っているところもある。

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アイスクリームに次いで、街中でレモネードを飲む人を見かけると、夏がきたなぁと思う。これだけたくさんレモンが入っているが特別酸っぱいわけでもなく、見た目も味も爽快である。

ちなみにハンガリーではレモンやオレンジはとれない(共産時代にオレンジを育てようとして失敗した笑い話まである)。なので想像するにこれは伝統的な飲み物ではないような気がするが、しかしとても美味しいので夏の暑い観光中には是非一度飲んでもらいたい。