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マッチ箱のある日常

昔からなぜかマッチ箱が好きで、雑貨屋さんでお洒落なマッチ箱が売っていたら購入したり、本屋さんでマッチ箱の本があれば読んだり買ったりしていた記憶がある。いろんな大きさのマッチ箱があるが、一般的には「並型」と言われる56×36×17mm厚の箱のものが普及している。

こんなに小さなスペースにも関わらず凝ったデザインだったり効果的な広告が描かれていて創造性を感じる。色使いも様々で、特に海外の蚤の市なんかに行くと昔のマッチ箱を大量に集め売っている人がいたりして、色使いなども日本にはないような組み合わせが多く眺めているだけでも楽しい。

昨年の冬はエストニアの首都タリンを旅行したが、駅前のビル(といっても東京にあるようなビルではなく、食料品店や小さなレストランが集まった建物)の二階には常設で小さな蚤の市が開かれていた。比較的最近できた建物のようで普通蚤の市があるようなところではないが、置いてあるものは立派な古いものであった。そこではロシア語と思われるキリル文字で何かが書かれたマッチ箱がたくさん置いてあり、今はエストニアもEUの一部であるが、歴史的にロシアの支配下にあったことがこういうところでも見てとれる。

私は非喫煙者なので日常的に火が必要なことがほとんどなく、毎日の生活の中でマッチ箱を使う機会がほとんどなかった。いくら好きと言っても日常的に使わないものを目にすることもなかなかなく、また日本の気候的にすぐに使わないと湿気て使い物にならないイメージがあって買い貯めて置くことへの躊躇いがあった(調べるとそんなにすぐに湿気ないし、ちゃんと乾燥させればいつでも使えるそう)。

ヨーロッパで生活し始めて全く予想していなかったが、今では日常的にマッチを使うようになった。といってもタバコや大麻を吸いはじめたわけではない。主な用途はキャンドルである。おそらく日本と比べてこちらでは何かと人を家に招いたり招かれたりする習慣の多いのだが、私も友人宅を訪問する度に日常的にキャンドルが使われているのを目にし、自然と自分も使いはじめた次第である。様々な形、大きさ、匂いのキャンドルが普通のスーパーに売っているし、今はクリスマスシーズンなので特別なクリスマス用キャンドルも置かれている。

きっとライターの方が便利なのだろうが(おそらく喫煙者の人もほとんどライターだろう)、私はマッチの方が断然好きだ。マッチを擦ることで自分の手でつけた火を少し眺めて、キャンドルに火を移し終わったら消す。するとちょっと気が燃えた焦げた匂いがする。昨今あらゆる動作がボタン一つで解決するような簡単な動作に置き換わっていると思うが、こういうマッチを擦るという動作のような、この時にしか使わない独特な動作が消えていくのはなんだか寂しい気もする。

追記:ところでマッチのこと調べていたら見つけたマッチ百話というページが面白かった。マッチの頭が赤い理由など。

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中央ヨーロッパで生活しながら大学院生(博士課程)をしています。暮らし、旅行、研究のことなど。 恵文社一乗寺店(http://www.keibunsha-store.com/)へ寄稿中。週一を目安に不定期更新。