ウィーンの初秋・ホイリゲ
八月の終わり頃になると、ウィーンのマーケットにはシュトゥルム(Sturm)というワインになる前の段階の発酵した若いワインが出回り、ワインの季節がきたと感じることができる。本来は九月末から十月初旬に出回るようなのだが、夏休みに観光客が多いこともあってか、八月末から手に入れることができる。
ホイリゲ(Heuriger)というのはオーストリア(特にウィーンのある東部)のワイン酒場のことで、伝統的には自家製のワインと軽食を出す場所のようだが、最近ではそうでないホイリゲ風のレストランもホイリゲと名乗っているそうなのでややこしい。ホイリゲというのはワイン酒場自体のことも指す他、新酒ワインのこともホイリゲという。
ホイリゲはもともと自家製ワインを提供するところであるため、ワイン畑のある町の中心から外れたところに多い。ウィーンだとトラムDの終点地であるNußdorfは、ハイキングも兼ねてホイリゲでワインや食事も楽しめるのでおすすめである。
日本でワインというと何だかちょっとおしゃれというかかしこまった感じがあるが、ホイリゲは気軽にワインが楽しめる場所。ハイキングついでに寄る人も多いから服装もラフで構わない。
ちなみにワインを提供するところなのでビールは見かけないかあっても種類が少ない。ワインやアルコールが飲めない人にはつまらないかというと実はそうでもなく、私がひそやかにおすすめしたいのはここで飲めるぶどうジュースである。
初秋のホイリゲに来ると、ぶどうジュースTraubensaft(アルコールなし)、Traubenmost(ほんの少しアルコール、ほぼジュース)、そして先ほど挙げたSturm(少しアルコール、ワインとジュースの間)があるので、ぶどう自体が嫌いでなければここでしか飲めないフレッシュなぶどうジュースが楽しめる。
また夏の暑さもあってか、ワインもぶどうジュースも炭酸割りで飲んでいる人が多く、gespritz(炭酸入り)で頼むことで少し地元っぽさを楽しんだりしている。一般的なSpritzer(ワインの炭酸割り)はもちろん、Holunderspritzer(ワインの炭酸割りにエルダーフラワーのシロップ)も爽やかな甘さがとても美味しいのでおすすめ。
ちなみにオーストリアあるあるだが、意外とヨーロッパの中でも現金社会なので、小さいお店だとカードが使えなかったり、そこそこ大きなところでも一定額を超えないとカードを受け付けてくれなかったりするので、ウィーンでは常に現金を持ち歩くことをおすすめしたい。