見出し画像

ブダペスト・トラム六十番

ブダペストは他のヨーロッパ地域と同様、トラムが走っている街である。主要な四番・六番線は街の中の主要地を繋ぐ長いトラムで、私が2016年にブダペストに来た時から、すでに新型の綺麗な黄色い車体になっていた。運転が荒いと思う人も多いだろうが、基本的に線路は整備されて乗り心地はスムーズである。あまり使ったことがないのでうろ覚えだが一番線も同じ車体だった気がする。

観光で有名なのが二番線で、ヤーサイ・マリ広場(Jászai Mari tér)から国立劇場(Nemzeti Színház)を結ぶトラム。これも主要トラムと同じで黄色なのだが、車体はもう少し小さく古くてなんとも可愛らしい。ブダペストで安い観光といえば、このトラムに乗ってドナウ川を眺めながらぼんやりすることかもしれない。似た車体はデアーク広場(Deák Ferenc tér)発の四十七番・四十九番にも使われている。

最近ハンガリーも古い車体を新しくし始めているので、この二番線のようなレトロな乗り物もいつなくなるかわからない。グローバル化のおかげか、なぜか新しいもののデザインはどこも似たりよったりに感じるのは私だけであろうか。その中でも私が一際お気に入りで、このまま残って欲しいがそのうちなくなりそうなのがトラム六十番線である。

画像1

トラムの扱いになっているがこれはブダペスト登山鉄道だと後から知った。街の中心ではなくて、ブダペストの「ブダ」側にある。ブダペスト子供鉄道で有名なセーチェニ・ヘジ(Széchenyi-hegy)駅とヴァロスマヨール(Városmajor)駅を繋ぐ鉄道。赤い車体が東欧っぽさを連想させてとてもいい。何かしらと「赤」は共産時代を思い出させるようで嫌な人もいるみたいだが、個人的には歴史の一部として残ってもいいのになと思ったりする。ちなみにこの鉄道の赤はそれ意味をするのかは知らない。

画像2

車内に入ると渋い内装である。座席のクッションもぺったんこで古びた色がたまらない。エアコンなどはないので夏はめちゃくちゃ暑い。他の車両には自転車を置くところもあった。

画像3

登山鉄道と言っても、ハンガリーには日本のような急勾配の山などはないので、地味に登って行く感じである。山と言うより丘登りな気がする。ひたすら森林に囲まれていて周りは何も見えない(登山鉄道という名前だけどパノラマビューなどは期待できない)。近くの車より速度が遅かったので、時速30〜40kmぐらいしか出てないのではという気がした。

乗っているとものすごくうるさい。擬音語で表しようのない音なのだが、何か金属音のようなものがなっていて、車体が古いため車輪が錆びている音なのか、走っている間は鳴り続けている。それに合わさってエンジンのせいか、座席の下から体に響くような振動がある。規則的な一定リズムの揺れが絶えずあり、まさに乗り物に乗っていると言う感じしてよい(乗り物酔いしやすい人には辛いかもしれない)。

画像4

降りて線路を見ると、こんな感じで歯車のようなものが埋め込まれており、どうもこれに噛み合わせて車体が走る仕組みのようだ。一定のリズムもこれから作り出されていると思うと納得。

ここに書いた全てのトラム(登山鉄道含む)は同じ会社が管轄しているので、ブダペスト市内の乗り放題切符などがあれば自由に乗ることができる。私が乗ったときには夏の平日ということもあってあまり利用者もおらず、そのうちなくなるのか…と思ったりするが、できるだけ長く残って欲しい。次は登山鉄道終点から始まる子供鉄道にもいつか乗ってみたいものだ。