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なんてことない蚤の市

私は古いものが好きなので、蚤の市(フリーマーケット)に行くのが好きである。ヨーロッパは蚤の市の本場ということもあって、どの都市でもそれぞれ独自の蚤の市がある。有名なのはパリやロンドンかもしれないが、私の住んでいるオーストリアでも至る所で開催されている。

ウィーンでは毎週土曜日に開かれているナッシュマルクト横のフローマルクトが有名である。ナッシュマルクトとは16世紀ごろから存在しているウィーン最大の市場(1.5kmほど)のこと。肉、魚、野菜、卵、ワイン、スパイスと言った基本的なものから観光客向けのお土産まで幅広く売っている。ナッシュマルクト自体は日曜日以外毎日やっているのだが、土曜日になるとその隣に大きな蚤の市ができて、色んな古いもの(置物、食器、切手、服、アクセサリー、本など)が売っている。

こういった大きい蚤の市だけでなく、もっと小さい蚤の市もある。この前は家の近くを歩いていたら、普段は何もない教会の前の小さな広場になんてことない蚤の市が出来ていた。土曜日でもなく、全く普通の平日にいきなり突如現れた蚤の市。ナッシュマルクトなどと比べるととても小さいのだが、それでも蚤の市のエッセンスはギュッと詰まっていて、じっくり見始めるとあっという間に時間が過ぎる。

日本のフリーマーケットというと、いわゆる中古(もしくはヴィンテージ・アンティーク)の、それなりに使える(きれいな)ものが置いてある印象があるのだが、ヨーロッパの蚤の市は規模と出店者にもよるが、一見ゴミにしか見えないものも多い(これでお金をとるのかという気持ちになる)。

しかし本来蚤の市の何が楽しいのかというと、そのゴミの山から自分の目で価値のあるものを掘り出し見定めることであるように思う。既に欲しいものがわかっているのであればお店に行くか通販で買えばいい。蚤の市にいる時のワクワクは、高級デパートでは味わえない不思議な気持ちである。得体の知れない未知の可能性を感じる。

蚤の市に行く時は特にいつも何も期待しないで行く。何かあればラッキー、何もなければそれはそれでいい。気分によってよく見えるモノ、悪く見えるモノ、この前は気にならなかったのに今回は気になるモノ、いろんなモノにあふれている。何が楽しいのか長らくよくわからなかったが、もしかするとモノを通して間接的に自分自身と対話するのが楽しいのかもしれない。