マネックス・アクティビスト・ファンド①

直近の話題といえばとにかくこれでしょう。

大手ネット証券の一角であるマネックス証券の松本大社長が自ら積極的に関与して立ち上げた、「マネックス・アクティビスト・ファンド」(愛称:日本の未来)。このファンドについて、Youtube上で様々な関係者と松本社長の対談動画が大量に公開されています。

現状公開されている動画を全て視聴しましたが、とてもワクワクしてくる内容でした。

松本社長自ら前面に

このファンドの強みは、当然運用コンセプトや最強の運用メンバーといったところにもあるのですが、何より松本大社長自らが前面に出て積極的に関与するという面であると考えます。動画内でも、松本社長が本ファンド立ち上げに至るまでの経緯や、今後に向けての熱い決意を度々語っています。

エンゲージメントはじめの一歩

投資対象会社とのエンゲージメントにおいて最初にハードルになるのが、経営層へのアプローチの方法と考えられます。
いかに当該企業にとって価値向上に繋がる素晴らしい提案であっても、意思決定を行う経営層の耳に届き、納得してもらい、かつ行動に移してもらえなければ絵に描いた餅に過ぎず、意味がありません(この辺りは投資銀行にとってもあるあるな話です)。
普段から資本市場に対する意識が高く、株主・投資家とのコンタクトを積極的にとっている経営者であれば、1on1のMTGをセットすることもある程度容易かもしれませんが、そうでない経営者の場合、どうやってコンタクトを取り付けるかは工夫が必要です。
いわゆる"アクティビスト"の場合、一定程度の株式を事前に取得し、その持株比率をもってコンタクトをとろうとすることが考えられますが、これはある意味資本の論理を振りかざすような行為であり、その時点で経営者からするとあまり気分の良いものではありません。
また、経営者によっては、実業をせずにお金の運用をするファンドマネージャーやアナリストから上から目線で話をされる(と感じる)のを好まない人も居るでしょう。
経営者だって人間、気持ちは大事です。

エスタブリッシュメントなエンゲージメント

その点、自らがマネックス証券という新たなビジネスモデルの会社を起業し、現在の規模まで成長させ、ビジネス界でも著名な松本大社長からのアプローチということであれば、「話を聞いてみよう」と思う経営者も少なからず存在すると思われます。
これは投資対象企業に対するエンゲージメントの起点において、大きなアドバンテージがあるということです。

こうした一種のエスタブリッシュメント層(というと若干語弊があるかもしれませんが)によるエンゲージメントというのは、それだけで大いに他ファンドに比して差別化要因になります。また、エンゲージメントにおいても、より幅広いバリューアップのためのアプローチが可能になると考えられます。
これは正に私が日本市場に必要と考える"Constructivist"的な投資スタイルのではないかと思います。私が現在注目しているエンゲージメントファンドは3社ありますが、このマネックス・アクティビスト・ファンド(カタリスト投資顧問)がその1社であり、もう1社の「ソラリス」もまたこのタイプのファンドであると推察しています(これはまた近い内に書きます)。

松本氏はかつても同様のファンド立ち上げを支援

実は、同様のコンセプトのファンドとして、スパークスが2014年に立ち上げた「日本株式スチュワードシップ・ファンド」(通称:対話の力)というものがあり、この立ち上げ時の記者会見に松本社長も同席し、販売会社として支援していました。

「対話の力」には私も立ち上げ時から非常に注目・期待をしていたのですが、残念ながら足元運用規模も大きく縮小してしまってしまい厳しい状況にあります(このファンドについても追々記事を書ければと思っています)。
ある意味では、松本社長にとってはこのマネックス・アクティビスト・ファンドの立ち上げはリベンジ的な意味合いもあるのかもしれません。


と、動画の内容に入る前に書きすぎたので、本ファンドの運用メンバーや運用方法については②で書こうと思います。