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子どもの幸せを願うなら、習い事をするより「たくさん遊ばせた方がいい理由」(完全版)

こんにちは!

子ども達とほぼ毎日(年間1500時間以上)遊んでいる中村遊太郎です!

東大卒のママが経営する学童保育に勤めたり、400組以上の家族が参加する子育てのオンラインコミュニティの運営をしたり、今は子ども達が本気で遊べる居場所を作る活動の代表をしたりしてます。

先にこの記事に書いてある内容を少しだけ紹介すると…

「遊びは子どもの学力と運動能力が高める」

「遊びで得た社会的能力は将来の成功にも繋がる」

「遊びが不足すると犯罪や精神疾患になるリスクが上がる」

などなど。

子どもが「遊びで得られる学びと能力」と「遊ばないことのリスク」について、これまで僕が読んだ本や記事、論文などを徹底的にまとめました。

※前提として、「遊び」の定義は「本人が主体的で楽しくやってること」です。
本人が前向きにやっているのであれば、ドッヂボールや鬼ごっこはもちろん、勉強やスポーツも全て遊びと僕は捉えています。

そんなこんなで、まずは「遊びの効果」を一覧でまとめてみました。

子どもが遊びで得られること一覧

※発達心理学や脳科学などの研究者では、ほぼ定説として言われている「遊びの効果」を30個まとめて紹介↓

  1. 「幸福感」を得られる

  2. 「自己肯定感」と「自己効力感」を育む

  3. 「忍耐力」を育む

  4. 「継続する力」を育む

  5. 「自己決定力」を育む

  6. 「自分で考える力」を育む

  7. 「自己実現力」を育む

  8. 「主体性」を育む

  9. 「自律」を促す

  10. 「自分で責任を取ること」を学んでいく

  11. 「問題解決力」を育む

  12. 「工夫する力」を育む

  13. 「柔軟な思考」を育む

  14. 「適応力」を育む

  15. 「ストレス発散」になる

  16. 「不安やうつ病から守ること」に繋がる

  17. 「感情のコントロール」が上達する

  18. 「挑戦する意欲」を高める

  19. 「レジリエンス」を高める

  20. 「学習意欲」を育む

  21. 「学力の向上」に繋がる

  22. 「想像力」を高める

  23. 「創造力」を高める

  24. 「発想力」を高める

  25. 「探究心」を刺激する

  26. 「好奇心」を豊かにする

  27. 「個性」を豊かにする

  28. 「論理的思考力」を高める

  29. 「アイデンティティの形成」に繋がる

  30. 「興味関心や情熱を持てるものを見つけること」に役立つ

他にも!

他者と関わる遊びは、
・「コミュニケーション能力」を育む
・「対話力(主張、交渉、妥協する力)」を育む
・「相手の気持ちを想像する力」を育む
・「協力する楽しさ」を学ぶ
・「社会性」を学ぶ
・「協調性」を育む
・「読解力」が高まる
・「語彙力」が豊かになる

体を動かす遊びは、
・「体力」や「運動能力」を高める
・「心身ともに健康的」になる

危険を感じる遊びは、
・「自分の肉体的な能力の理解」に繋がる
・「恐怖心を対処する感情コントロール」に繋がる

ごっこ遊びは、
・「社交術」を育む
・「語彙力」を豊かにする
・「想像力」を豊かにする
・「他者の色んな感情」を学ぶ

指先を繊細に使う遊びは、
・「五感」を刺激する
・「IQ」を高める

工作やパズル、ブロック遊びは、
・「空間認知能力」を育む
・「数学的スキル」を向上する
・「数学的な推理力」が発達する

木登り遊びは、
・「IQ」を高める
・「ストレス発散」になる
・「脳のワーキングメモリ」を活性化する

テレビゲーム遊びは、
・「子どものメンタルヘルス」を改善する
・「うつ病」のリスクを減らす

などと言われています。

こうやって書き出してみると、教育で著名な人達が「遊び」や「野外体験」を推してる理由がなんとなくわかりますよね。

僕が最も伝えたいこと

他にも書き出したらたくさんあると思いますが、ここで僕が最も伝えたいのは、「遊びを軽視し過ぎているのではないか」「子どもの遊び時間が減るリスクを理解していないのではないか」ということです。

一言で言うと、子どもにとって「遊びは学び」ということ。

ちなみに、「遊びは子どもの将来の幸せにおいて、大きな影響があること」は知ってます?

「幸せの研究」から見る遊びの役割

ハーバード大学が行った史上最長の幸せの研究では、「良い人間関係」が最も幸せに影響すると言われています。

神戸大学の2万人を調査した研究では、幸福度に影響しているのは、お金よりも学歴よりも「自己決定」であると。

つまり、シンプルに考えると、子どもに幸せに生きてもらうためには、「良い人間関係を築くための能力」と「自己決定力」を育めばいい。

この2つの能力を育む手段として、最も良いのは「遊び」です。逆に、強制的な環境の習い事や学校では、この2つの能力が子どもから奪われやすいと言われています…

その詳しい理由については、この記事を最後まで読んで頂けたら、誰でも簡単に理解できると思いますので、ご興味ある方はぜひ読んでみて下さい!

しかし、「遊びの効果とその理由」について超詳しく書いていますので、お忙しい方は、以下の目次から興味があるところ読むのがおすすめです!


遊びは「幸福の源泉」

ボストンカレッジ心理学教授のピーター・グレイは、「遊び」について下記のように述べています。

現代は子どもの遊ぶ場所や遊ぶ仲間、遊ぶ時間は年々減少していますが、子どもにとって「遊び」は重要なことで、例えば体を動かして遊ぶことで体力・運動能力が向上し、たくさんの友だちと遊ぶことでコミュニケーション能力や協調性を養うことも可能。

また、子どもにとっての「遊び」の重要性を、心理学者のピーター・グレイ教授が5つに分けて紹介してくれています↓

①「遊び」は子どもたちが自分のアイデンティティを形成したり、自分が興味関心を持つものを見つけることに役立つ
「自由に遊ぶことができる時間」を与えられると、子どもたちは自分自身で何をして遊ぶかを決め、それを行動に移します。また、遊びを通して子どもたちは「自分が興味のあるもの」に詳しくなっていきます。明確な目的を持たずに気の向くままに遊ぶからこそ、子どもたちは自分の興味関心やアイデンティティを育むことが可能であり、それは大きくなったときに必ず役に立つものになる。

②子どもたちが「決定を下し、問題を解決し、自己制御を行い、ルールに従う」ということを最初に学ぶのは遊びを通して
子どもは遊びの途中で出てきた問題を解決し、何かしらの制限がある場合は自分を制御する必要もあります。例えばゲームを行っているなら、課せられた制限を受け入れ、自分の行動を律し、ルールに従う必要があるわけです。遊びの経験が乏しい子ども達は、運に頼り、他人の親切さや気まぐれに左右されたまま成長していくことになる」とグレイ教授は語っています。

③子どもは遊びの中で「怒り」や「恐怖」などの感情を扱うことを学ぶ
自由な遊びを行っている最中、子どもたちは身体的・社会的に困難な状況になることがあり、そこから生じる感情をコントロールする術も、遊びの中で学ぶこととなります。子どもたちは木登りをしたり、高い所から飛んだりする遊びをしますが、そのような活動は、適度な恐怖があり楽しいもの。遊びの中で適度に恐怖を感じられるような状況を経験したことがない場合、大人になってからの生活で感情が揺れ動くような状況で、大きな不安を感じてしまい、不安障害などを発症してしまう可能性があるとのことです。

④遊びは子どもたちが友だちを作り、「平等」について学ぶ絶好の機会である
子どもが友だちと遊ぶことは、お互いを公平に扱うことを学ぶための自然な手段です。遊びは自発的なものであり、遊び相手は不快感を感じるといつでも遊びから抜けてしまう。子どもたちは遊び相手のニーズを知り、遊びを続けるために必要なことを学ぼうとすることで、社会性を身につけていくわけです。「他者と平等になり、協力することを学ぶことは、友だちと遊ぶ上で得られる最も重要な能力かもしれない。」

⑤最も重要なのは「遊び」が幸福の源泉であるということ
グレイ教授は子どもの遊び時間が減っていることは二重苦になっていると指摘しており、「遊びによる喜び」を奪っただけでなく、その時間を感情的にストレスの多い活動に置き換えてしまったという点も問題であると。我々大人は子どもたちから「最も幸せになることができる活動(=遊び)を奪い、これは不安やうつ病を引き起こすように社会を設計しているかのようです」とグレイ教授はコメントしています。


遊びは「主体性」「良い関係を築く力」を育む

ピーター・グレイ教授は書籍(「遊びが学びに欠かせないわけ」)の中でも、遊びは「子ども達に自分の問題を解決させ、衝動を抑え、感情を調整し、他者の視点から物事を見て、違いを交渉によって妥協に導き、他者と繋がる方法を学ぶための自然な方法」であると主張してます。

以下に、本の中から抜粋した遊びの効果を10個ご紹介します。

①遊びは、自己選択的で、自主的な活動のため、「自分は何をしなければならないのか?」ではなく、「自分は何をしたいのか?」を考える練習になる。

②遊びは、民主的に話し合うことを学ぶ。なぜなら、遊びは参加するか否かを選択するし、何をするか自分で決めている。さらに遊びの中には規則が存在し、それにみんなが合意する必要がある。遊びの中で参加者のニーズを満たせないと辞められるから。

つまり、遊びは「いつでもやめていい」からこそ、みんなが満足できるやり方やルールが必要で、それをみんなが納得するまで話し合うことも必要になる。子どもは遊びの中でルールを変更し、ゲームをより面白く、そして平等にしたりする。遊びでは、みんなの総意で最終決定されるので、その遊びを続けたければ、話し合い、交渉、妥協で解決する必要があるのだ。

まとめると、子ども達は遊びの中で、規則を覚えたり、ルールに従ったりすることを練習する。また、ルールを守ることで、自制心も育む。みんなが楽しめるような遊びを創造したり、ルールを修正したりすることも学ぶ。それらを民主的に対話するトレーニングにもなる。

③遊びは、勝つことよりも、楽しむことがはるかに重要なので、相手を打ち負かすのではなく、「良い関係を築く力」が求められる。誰かの不満が出たらルールを修正することが求められる。また、子ども達は上手い下手に左右されず、楽しみながらスキルアップできたり、新しく創造的な方法を試したりみたりもする。

学び、問題解決、創造性は、遊びの中で促進される。一方で、それらは、評価、報酬の期待、そして遊びの心理状態を損なうものによって抑制されるということが研究で示されている。

子どもは遊びの中で、自制心を育む。ルールに従うことや、自分の欲求や感情をコントロールすることを学ぶ。遊びは、脳の中で不安や怒りをコントロールしている部分の発達と、ストレスの多い状況で適切に行動する練習のために欠かせないことが研究で明らかになっている。

⑥遊びは、想像性を高める。戦いごっこをしたり、プロ野球選手やお姫様のように振る舞ったり、何かをイメージしながら工作したり、積み木を車に見立てたり。遊びの気分によって、より高度な想像力が発揮させるという研究もあります。

⑦遊びは、集中力と創造性を高める。遊んでいる子ども達は能動的で、注意深く、ストレスのない状態のため、フロー状態(超集中)になり、この状態が創造性を発揮するための最適な状態であると研究者達は指摘している。

⑧遊びは、挑戦する意欲を高める。なぜなら遊びには、評価する人が存在しないし、楽しくポジティブな気持ちになるため、失敗する不安に気を取られづらい。だから遊んでいる子どもは、真面目な世界では試すことのない、危険や不可能なことを自由に試す。失敗を恐れづらいからこそ、より挑戦的であり、スキルを獲得しやすくなる。

例えば、遊びの中で子ども達は、ポジティブな感情で、思考を広げ、アイデアを組み合わせたり、新しい発想を試してみたりして、遊びを研究していると言える。そうやって、自分の知識やアイデア、スキルのレパートリーを広げていく。

また、遊びの楽しみの多くは「挑戦すること」にある。簡単すぎる遊びは退屈で、子どもは自ら難しくするか、他の魅力的な遊びに移っていく。つまり、遊びの中で子ども達は、自然に難しいことにチャレンジしたり、興味関心を広げたりしていく。

遊びの中で子どもが同じことを繰り返すのは、(外から見た行動は同じでも、)さらに正しく行う方法を試したり、新しい方法を試したりしていて、とても創造的な行為。ただ暗記するだけの機械的な単純な行為ではない。

⑨ごっこ遊びは、「想像力」と「社交術」を育む。危険な遊びは、自らの行動や感情をコントロールするための方法を学ぶ。自分の身体の使い方などの肉体的な能力も試してる。

⑩遊び不足が、感情的・社会的な疾患を増加させてることは明らか。遊びは「子ども達が自分の役割や責任、自己コントロール、他者との関係を築くこと」について学ぶ最高の手段。

その根拠として、衝撃的な研究が示されていました↓

子どもの頃に遊ぶことを奪われたサルは、他者に対して異常に高い攻撃性を示すという研究。また、ネズミでも同じような攻撃性と不安が示された。脳の前頭野(衝動や感情をコントロールする重要な領域)が、しっかりと発達することができず、他のネズミと上手く関わることができなくなる。

研究内容などをもっと詳しく知りたい方は本を読んでみて下さい。


遊びは「忍耐力」や「継続力」を育む

長年の教師経験を持ち、総フォロワー数30万人超えの教育評論家である親野智可等先生は、「未来を切り拓く力はあげるとキリがありませんが、やはり一番大切なのは自己実現力。つまり、自分がやりたいことを、自分で見つけて、自分でどんどんやっていく力です。」とおっしゃっていて…

その「自己実現力」を育むには、子どもの頃から「自分がやりたいこと(遊び)」をたっぷりやらせてもらえる体験が大切と言っています。

今の子ども達は親に“やらされる”ことが圧倒的に多い。習いごとはこれにしなさい、大学はここがいい、あれはいいけどこれはだめ…。このように「やりたいこと」を抑えて「やらされること」ばかりやってきた子は、「やれと言われたことはやるけど、自分でやりたいことを見つけることはできない」状態になってしまう。

忍耐力や継続する力は、イヤなことや自分に向いていないことでも我慢してやり続けることで身につく、という考えも大いに疑問。やっていて楽しいこと(遊び)だからこそ、やり続けることができるのであり、その経験が「忍耐力」や「継続する力」を育ててくれる

主体的に人生を生きられる人(自己実現力が高い人)は、自己肯定感も強い。自分でどんどんやる、ガッツがある、だめでも誰かのせいにしたりしない、自分で受け止める。仕事でもプライベートでもそう。楽しい人生です。

また親野先生は、「遊びで地頭が良くなる」ということも言っています。


遊びは「地頭」をよくする

好きなこと(遊び)をやると、好きなことに熱中しているときにドーパミンがたくさん出て、脳のシナプスが増えます。それで脳の性能が向上して、いわゆる「地頭がよい状態」になる。

好きなこと(遊び)であれば、多くのことを覚えようとする意欲にあふれているので、記憶力も鍛えられますし、情報処理能力や表現力もつくようになる。すべてが、勉強するときに役立つ脳の働き。

例えば、大好きな魚に夢中になっている時に、子どもの頭の性能がアップして、勉強したことがスイスイと頭に入る高性能の脳ができるそうです。


遊びで「学力」と「IQ」が向上する

発達心理学が専門のお茶の水女子大学の内田伸子名誉教授らが、20代の社会人の子供を持つ保護者1000人あまりを対象に行った調査で、「難関大学」に合格するなどした経験がある人は、そうでない人に比べて小学校に入学する前に、「思い切り遊んだり、好きなことに集中したりしていた」という調査結果がまとまったそうです。

調査にあたった専門家は「遊びの中で様々な力を身につけることが、その後の学習意欲を育む」と指摘している。大人の指示に従い、間違えると叱られる時間が多い子どもは、萎縮して顔色を伺って行動するようになってしまうとも。

今回の調査について内田名誉教授は、「遊びを通して、意欲とか探求する喜びを味わったことが、その後の学力の向上にもつながっている」と話している。

また、自発的によく遊ぶ子どもほど、その後の学力の伸びが大きくなると分析しています。「遊びっていうのが自発的な活動ということを理解していない方がほとんどだと思う。字が読めるとか計算ができるとかいうことに価値を置きがちだが、実はそういう事は、遊びの中で土台になるような活動が起こっている」と話しています。

ちなみに、スウェーデンで軍の入隊検査を分析した研究では、外遊びによって論理的思考力と言語能力が大きく向上することや、2015年のノースカロライナ大学が行った研究では、木登りがIQを高めるということが分かったりしています。


遊びの効果は「脳神経科学でも証明」

脳神経科学者の青砥瑞人先生は、子どもが無目的な探索(遊び)から、「あ!」とワクワクしたり、今この瞬間に自分が「やりたい!」と思ったことをやることで、成長しやすい脳になっていくとおっしゃっています。

「やりたい!」「知りたい!」「実現したい!」という主体的な前のめりの願望や欲求を抱いた時に、脳は記憶の中枢として知られる海馬や扁桃体にドーパミンが直接働きかけている状態。簡単に言うと、遊びでワクワクしている時は、脳が効率よく情報を自分の中に取り込もうとしているということ。逆にワクワクしないことを学ぼうとしても、脳はその情報を取り込む状態になっていない。

つまり、自由な遊びの中で、無目的な探索をして、「やりたい!」「知りたい!」というワクワクを増やすと、主体的で積極的に学ぶことが好きな子どもが育つ。そして、そういう子は、いずれ「これだ!」というものに出合ったとき、爆発的な「集中力」と「学習力」でドンドン成長していく可能性が高くなる。

また、子どもが遊びの中で発揮する「好奇心」は脳も育む。その環境へ適応させようとする力が育まれるから。

ワクワクや好奇心を発揮する時間が多い子ども(たくさん遊んでいる子ども)は、新たな学びに対して、高い集中力と学習力で、主体的に学ぶようになるだけでなく、環境に対して柔軟に対処する力(認知的柔軟性)を高めてくれる

逆に言うと、子どもが探索できず、好奇心に蓋をしていると、ゴールや目標、目的を掲げてもワクワクできない大人になってしまうそうです。


「遊び不足」は勉強不足より遥かに危険

全米遊び研究所の創設者のスチュアート・ブラウンさんが、人を暴力行為に向かわせる要因を研究するために、テキサス州刑務所制度で有罪判決を受けた殺人犯の調査を行った結果…

暴力的な犯罪者のほぼ全員が、虐待されていたか、子ども時代に十分に遊ばせてもらえなかった」という共通点が判明。

すぐカッとなる虐待的な親や、過酷なルールを押しつける厳格な親に育てられた人もいれば、社会的に孤立していた人もいた。様々な理由から、彼らの幼年時代には遊びが深刻に不足していた。

上記の研究は、小児期をピアノの稽古や科学キャンプ、学習塾などの時間ばかりに費やすのではなく、子どもが子どもらしく「ただ遊ぶ」ことの重要性を指摘しています。

人は遊びを通して、ギブアンドテイクを練習し、思いやりや公正さを学ぶ。遊びは柔軟な思考と問題解決を促し、回復力(レジリエンス)と変化への適応力を高める。過保護な親がいたり、成績に対してご褒美を与えられたりして育つと、「遊び負債」が積み上がって、どんどん遊び心を発揮できなくなっていくとブラウンさんは言っています。

「遊び負債」がとくに目立つのが、ブラウンが難関大学での講義で出会うエリート学生だという。そういう学生は知識豊富だが、その知識を活用できなかったり、自分から喜びを見出そうとしなくなっている。

これはNASAのジェット推進研究所の幹部が、採用方法を変える必要を訴えていることと一致していて、以前は、国で最高の学校を最高の成績で卒業したいわゆるエリートを採用することに重点が置かれていたが、近年、そういう若者の多くが必ずしも問題解決を得意としていないことが分かってきた。

子どもの時に物を作ったり、遊んだ経歴に特徴のある人が、問題解決をいちばん得意とする人たちだった。

子どもには、遊びや試みや失敗を通じて、探検や発見をし、重要な感情的、社会的、知的スキルを発達させる時間を与えてあげよう。分刻みの予定を抱えていては、子どもはそういう機会を逃してしまうだろう。

子どもは自発的な遊び(自由時間)を通じて、「感情を整えるスキル」を発達させる。「好奇心」や「想像力」を豊かにする機会を得る。また、自由な遊びは「自己肯定感を育てる」活動でもあるとブラウンさんは言っています。


遊びほど「脳を活性化」させるものは無い

他の記事でも、精神科医でナショナル・インスティテュート・フォー・プレイの創設者であるスチュアート・ブラウンさんは、6000人を対象に遊びと成長の調査を行い、遊びが人間のさまざまな面に良い影響を及ぼすという結論を得たことを紹介されています。

「遊びはくだらない」という考え方は、大人になるとさらに強く刷り込まれる。しかし、遊ぶと体が健康になり、人間関係が改善され、頭が良くなり、イノベーションが起こしやすくなる。最近の研究によると、動物は遊びを通じて主要な認知スキルを発達させているらしく、遊びは変化への対応力を育む。「遊びは脳の柔軟性と順応性を高め、創造的にしてくれて、遊びほど脳を奮い立たせる行動はほかにありません」とブラウンさんは言っています。

また、神経科学者のジャーク・パンクセップも、同様の意見を述べている。
「たしかに言えるのは、遊んでいるときの動物たちがきわめて柔軟で創造的な行動をとるということだ」。

遊びは発想を豊かにしてくれる。新たなアイデアが生まれ、古いアイデアが新たな命を得る。好奇心が刺激され、未知のものを知りたいという意欲が湧いてくる。

遊んでいる時、私たちはもっとも人間らしさを発揮し、自分らしさをさらけ出す。最高の思い出や、「生きている」という実感をもたらしてくれるのは、遊んでいる時間だ。

また、全米50万部突破のベストセラー本「エッセンシャル思考」にも、遊びが役に立つ理由が3つ示されていたので紹介します↓

遊びは「創造性」と「探求心」の源

<遊びが大切な理由1>
遊びは選択肢を広げてくれる。それまで気づかなかった可能性や、思いがけないつながりに気づかせてくれる。遊ぶことで、私たちの視野は広がり、常識にとらわれないやり方が見えてくる。
あのアインシュタインも、次のように語っている。「自分自身や自分の考え方を振り返ってみると、有用な知識を覚える能力よりも、空想する力のほうが大きな位置を占めているようだ」

<遊びが大切な理由2>
遊びはストレスを軽減してくれる。
ストレスは生産性を下げ、好奇心や創造性の働きを弱める。仕事でストレスを感じたとたん、何もかもがうまくいかなくなるという経験は誰にでもあるだろう。最近の研究によると、ストレスによって感情をつかさどる部分(扁桃体)の働きが強くなり、認知機能をつかさどる部分(海馬)の働きが弱くなり、その結果、うまくものを考えられなくなってしまう。

<遊びが大切な理由3>
遊びは脳の高度な機能を活性化する。
精神科医のエドワード・M・ハロウェルによると、「遊びは脳の実行機能に良い影響を与える。実行機能とは、計画、優先順位づけ、スケジューリング、予測、委譲、決断、分析など。つまりビジネスでの成功に不可欠なスキルの多くを含むものである」。遊びは脳の論理的で冷静な部分を刺激すると同時に、自由奔放な探究心をも刺激してくれる。主要な発見の多くが遊びを通じて生まれるのは、そのためだ。

他にも、この本には以下のことも書いてありました。

先進的な企業では、遊びの重要さに気がついている。Googleやピクサーがオフィス環境に遊びを取り入れているのは有名な話。遊びこそが「創造性と探究心の源」だと知っているからだ。遊びは本質を探求するのに役立つだけでなく、それ自体がどこまでも本質的である。

子どもの時の遊びが、問題解決や仕事、ビジネスにも役に立つということに関連した記事をもう一つ紹介します↓

遊びは「問題解決力」を高める

以下の内容はビジネス界隈では誰もが知っているマッキンゼーや楽天など10数社で働き、IT批評家としても活躍する尾原和啓氏と、サントリーの角ハイボールやポケトークの仕掛け人として有名なクリエイティブディレクター齋藤太郎氏の特別対談の記事から引用したものです。

課題解決は、子どものころの遊びに近い。みんなで公園に集まって、ボールがあったらサッカーとかドッジボールとかやるけど、ボールがなかったらないで、鬼ごっこしようとか、高オニしようとか、かくれんぼしようとか、アイデアを出して決めていく。

そういう意味で課題解決というのは、公園という場所があるけれど、今はボールも何もありません、というとき、いかに面白い遊びを考えつくかに似ている。

そういう時に、例えば「男子はこういうハンディね」とか「誕生日順に分けてこうしよう」とか、いろいろ考えつくと楽しく遊んだりする。みんながまだ知らない、今までにやったことのないような遊びやルールを作るプロセスはビジネスにも役に立っている。


遊びは「語彙力」と「運動能力」を高める

自由時間が多い子どもほど、語彙力が豊かになり、運動能力も高まる。
「習い事をさせるよりも、結局、自分が好きなように、自由に遊んでいるほうが有効」だと内田さんは述べています。

慶應義塾大学環境情報学部教授で言語心理学者の今井むつみさんは、「子どもたちがあそぶ時間をなくしてしまうような早期教育は、弊害のほうが大きい」という考えを述べています。

今井さんの研究仲間でもあるアメリカの学習科学・発達心理学の第一人者であるキャシー・ハーシュ=パセック氏と、ロバータ・ミシュニック・ゴリンコフ氏も、「子どもにとって最高の学習ツールは “遊び”」だと明言。
(※このお二人の共著の内容も下記で紹介しています。)

「Society 5.0 時代」という新社会が到来する中で、人々に必要になっていくのは適応していく能力です。適応力のある大人に成長するには、「子どもが自分で考え、判断し、行動しながら学んでいけるような環境をつくり、思いきり遊ばせること」が大切とのこと。

chatGPTを筆頭にたくさんの生成AIが生まれ、変化が激動と言われている現代だからこそ、「遊びで育まれる力」の重要性が高まっていることは、他の記事でも指摘されています↓

子どもを「天才」に育てるためには遊びが不可欠

AI化が進む今、子どもたちが身につけるべき能力は「学力」だけでは足りません。「自分で考えられ、独自の創造性を持って生き抜いていく能力」が必要になってきます。その能力を身につけるために必要なのが「遊び」です。

①学ぶ力を育ててくれる
子どもは遊びを通してたくさんの経験をする。そして、遊びをたくさんしてきた子の方が、「学びに向かう力」が強いという研究結果があります。「学びに向かう力」は親に決められた遊びではなく、自らが「やってみたい!」と思い、自由に遊ばせてもらったときに育つと言われている。

②運動能力を高めてくれる
体を思い切り動かして遊ぶことで、運動能力が高まり、同時に学習能力までもが高くなる。運動能力が高い子は、学習能力も高い傾向があるという研究もある。

③集中力・発想力・想像力を育ててくれる
遊びにのめり込むことで、集中力が養われる。自分で考えながら遊びを展開していくことで、発想力や創造力が育つ。「夢中になって遊ぶ」という経験を通して、脳の前頭前野が活発に働き、頭の良さにも繋がっていく。

④自己肯定感を高めてくれる
子どもは遊びから小さな成功体験を積み重ねていく。「自分でできた」と思える成功体験は、子どもの自己肯定感を高めてくれる。これによって、勉強や様々な物事に対しても自発的に行動できる子に育ちます。

⑤AI時代に負けない人間性を育ててくれる
友達と関わる遊びから、コミュニケーション能力や社会性を身につけていきます。そして自分で考えながら楽しむ遊びから、独自の発想力や人間性を育てていきます。


遊びで「数学的能力」が向上

アメリカの学習科学・発達心理学の第一人者であるキャシー・ハーシュ=パセック氏と、ロバータ・ミシュニック・ゴリンコフ氏は、「子どもにとって最高の学習ツールは “遊び”」だと明言しています。

このお二人の共著「子どもの遊びは魔法の授業」の内容もご紹介します。

まず著書の中では、「遊びが知性の発達、創造力、問題解決力の強固な基盤になるということに、世界中の研究者が同意している。」とおっしゃっています。

具体的には以下の6つの効果があると。

①子どもは遊びの中にある問題を、自力で豊かな発想と工夫で解決する。つまり、遊びは楽しく問題解決を教えることができる学習体験。

②遊びは、より豊かな創造性と想像力を促す。それだけではなく、高レベルの読解力やIQスコアとも繋がっていることが、研究で示されている。

③自由な遊びの中で、子ども達は自分の行動に、自分の責任を取ることを学んでいく。また、自ら決断することを学んでいく。子どもは自分自身で決めたことをしている時に「集中力」を発揮し、「達成感」を覚える。

④子ども達は遊びを決める時などに、交渉術や妥協の仕方を練習する。メンバー全員の要求を満たしたり、まとめ役になる方法などを学ぶことは、とても重要な社交術なのだ。また、遊びの中で感情のコントロールも学ぶ。ふてくされたら、物事が何も前に進まないことを理解する。仲間同士の遊びは、子どもを幸せで知的にするだけではなく、将来に役立つ社交術の基盤作りにも貢献する。

⑤子ども達は遊びを通して、新しい疑問を生み出す。新しい答えが求められる遊びでは、柔軟な知的能力を育て上げる。

⑥長年にも渡る研究によって、遊びは幼い子にとって、車のガソリンのようなものだという結論に達した。遊びは子ども達のあらゆる知的活動を支える燃料そのもの。

他にも、子どもの時に遊んだ人ほど、大人になってから遊びを通してストレス解消するのが上手。遊びは「これはどう使えるのだろう?」「こうしたら、どうなるのだろう?」と、子ども達の探究心を刺激する。遊びの中で子ども達は、ルールを作り出せること、ルールを守ることも学ぶなどが書かれてます。

ロシアの心理学者ヴィゴツキーは、「子どもは遊んでいる時、最高パフォーマスを発揮する」と言っている。(例えば、教室では3分とじっとしてられない子が、友達とのごっこ遊びだと10分も集中して座ってられるなど。)
以下の「遊びの3つの機能」によって、子どものパフォーマンスが高まる。

【遊びの3つの機能】

①子どもが友達や大人の助けを借りたりして、一人では少し難しいことができるようになる。

②子どもが思考と行動を切り離すことを助ける。(目の前にある物を抽象的に捉えて、別の何かに見立てて遊ぶなど。)

③子どもの自己制御の発達を促す。(遊ぶために規律を守ったり、遊びの中で何かを達成するために友達と上手くやっていったり。)

「子どもの遊びは時間の無駄である」という神話は、「親には子ども達の知能を増大させる義務がある」というメディアの宣伝と密接に繋がっている。その不安によって、親は過密なスケジュールで子ども達をがんじがらめにし、心の底では大切だと分かっている価値観を放棄してしまう。

しかし、知性は遊びによって強烈に後押しされる。遊びは幸せで知的な子どもを育てる鍵になる。

例えば、遊びは数学的概念を理解する上で、とても重要な役割を果たす。「遊び」と「数学的な理解力、数学的能力の向上」との間に強い繋がりがあることを、実証的研究で明らかになっている。遊びがなければ、子どもの数学的な推理力は全くといいほど発達しない。

そして、それはフラッシュカードなどでは得られない。子ども達が物を使って遊ぶときにやっている、探求する、操作する、分類する、分割する、組み立て直すといった日々の遊びが必要である。

遊びの中で子ども達は、ちょっとした実験をしながら、「これで何ができて、何ができないのか?それはなぜなのか?」などと考えながなら、その物の仕組みや世の中のことを理解していく。子どもは遊びの中で物質を探求している。彼らは物質の性質を試す小さな科学者である。

遊びはたくさんの領域で発達を促す。遊びは「問題解決能力」や「創造性」の発達、「持続的な集中力」を養う、「情緒の発達」や「社交能力の発達」を促す手段であると言っています。

そしてなにより、遊びの一番の恩恵は、「遊べば遊ぶほどハッピーになること」だと。


遊びは「非認知能力」を向上させる(文部科学省)

これは文部科学省の研究で、平成13年に出生した子供とその保護者を18年間追跡した調査データを用いて、時系列的な観点から、体験活動がその後の成長に及ぼす影響を分析し、その関連性を明らかにしたもの。

小学生の頃に異年齢の人とよく遊んだり、自然の場所や空き地・路地などでよく遊んだりした経験があると、高校生の時に、
・「自己肯定感」
・「外向性」
・「精神的な回復力」
・「新しいことに興味を持つ」
・「自分の感情を調整する」
・「将来に対して前向き」
などといった項目の得点が高くなる傾向が見られた。


遊びは「協調性」と「頑張る力」を高める(ベネッセ)

ベネッセ教育総合研究所が「遊び」と「学びに向かう力」との関連性を調査し分析した結果、「遊び込む経験」が多かった子どもの方が、「色んなことに自信をもって取り組める」などの「学びに向かう力」が高い傾向がみられたそうです。

「学びに向かう力」は「よりよい人生を生きるための土台」とも言われている。具体的には「好奇心、協調性、自己主張、自己抑制、頑張る力」などの非認知的スキルと言われるもの。

幼児期だけでなくその後の人生にも大きな影響を与えることが海外の研究から明らかになりつつある。私たちの調査でも、「学びに向かう力」は「文字・数・思考」の力や「学習態度」とも関係していることが分かっている。

「遊び込む経験」は、子ども自身の「こうしてみたい!」とか「こうなったら楽しそう!」という思いを出発点として、どうすればいいのかを考え、試し、友だちや大人に自分の気持ちを言葉で伝え、ときには思い通りにならない悔しさや葛藤を味わいながらも、やりたいことを実現するために粘り強く取り組む。

そのプロセスで、思いを実現して手応えや自信を持ったり、友だちと協力して目標に向かう楽しさや充実感を得たりすることが、次の新しい目標に向けてがんばる力や協調性などの「学びに向かう力」となる。


遊びは大人になってからの「成功」につながる

子どもの頃から、遊びを通じて学ぶことで、「不確実性を受け入れ、好奇心を高め、何度も物事を試してやり直す中で課題に取り組む新しい方法を見出し、それがイノベーションを起こすこと」につながります。

研究によると、遊びを通じた学びは「子どものウェルビーイング(幸福)と成長の鍵」であり、「大人になってからの成功の重要な原動力となるコアスキル(創造的、社会的、身体的、情緒的、認知的)」を身につけるのに役立つ。

また、遊びは脳の柔軟性を高め、有害なストレスを抑制し、注意散漫を防いで、目標に向かって進むのを助けてくれます。


遊びについての「面白い研究」を紹介

●テレビゲームで遊ぶとうつ病のリスクを減らす

●パズルやブロック、積み木などの遊びで伸びると言われている「空間的スキル」は、数学能力を高めめる


以上、「遊びは学び」についてでした。

どうでしたか?子どもにとって遊びは学びであり、必要不可欠であるということを感じられましたか?

というか、ここまで辿り着いている人はいるのでしょうか…?(笑)

きっとここまで読んでいる方は、普通じゃない。異常なくらい心から子どもの幸せを願う方なのでしょう。そんなあなたに出会える子ども達は超大吉ですね!

最後までお読み頂きありがとうとざいました!


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