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Aリーグ男子2022/23シーズンプレビュー

オフシーズンが長いで有名(?)なオーストラリアのAリーグですがやっと開幕が迫ってきました。 
まずは男子リーグ、10月7日の開幕に向けて補強や練習試合などどこのクラブも忙しいです。(女子の補強も多くのクラブが着実に進めています)
本来通りプレシーズンに開催されている(FFAカップ改め)オーストラリアカップも大いに盛り上がっていますがヴィクトリーが早々に敗退したため私はプレシーズンの練習試合の方を楽しむことに。

さて、クラブ別にプレビューする前に今期のリーグ全体の注意点から。

・カタールW杯の中断期間があるため早め(それでも10月7日)に開幕
・オーストラリアカップの決勝はその前の週末(10月1日)
・グランドファイナルは来年の5月26日か27日
・今期はW杯以外の代表ウィークにもちゃんとリーグ戦が中断する
・シーズン全体の日程が既に発表されている
・同時放送にならない試合開始時刻設定
・Channel 10での放送がサブチャンネル行きになってしまった代わりにサブチャンネルで無料放送の試合数が増えた(それ以外の試合は今期も変わらずParamount+で配信)
・極力平日の試合開催を避けるように日程が設定
・ウェリントンがちゃんとNZでホームの試合をする(そしてディスタンスダービーも復活)
・女子の試合とのダブルヘッダーが減った様子?

主要な仕様変更はこんな感じかな。だいたい本来のシーズン運営に戻ったといっていいと思います。

クラブ別プレビュー

(2021/22シーズンの順位の降順になっています)

メルボルン・シティ

前期のPremier。ファイナルシリーズはグランドファイナルまで勝ち抜くもウェスタン・ユナイテッドに敗れ2冠を連続は叶わず。
豪代表のアタッカーLeckie、MacLaren(今期も得点王)、Nabboutの「LMN」(と私は勝手に呼んでる)を擁し26試合のシーズンを通じて55得点もリーグ最多だったものの、途中までは失点の多さもリーグトップクラスだった上に(これを言うと監督に怒られるけど)トップ4相手に勝ちがなかったこと、さらにACLで別試合の結果により惜しくもグループステージ敗退したことでリーグの結果からは意外だけど改善点は色々ある様子。

勝ち点損失に繋がった失点に関してはプレースタイルからある程度はしょうがないもの、個人のミス両方結構あって(好きな選手なんであんまりこんなこと言いたくないけど)ゴールキーパーのGlover君が調子を落としがちだったのは影響がありました。こういうチームだからこそ最後の砦は超人的であって欲しいです。いちおう守備の補強はしてるので今期はちゃんと失点を減らせるか。強いチームなのは間違いないと思うのだけどそこが心配(ヴィクトリーサポとしての言葉なので本気の心配ではないですが)。

補強についてはここ数年新加入の外国人選手で当たりだった選手が少ないので外国人枠の選手の評価はシーズンが始まってみないとわからないかな。本当はGlover君が背後を気にするようなGKを獲った方がよかったと思うんだけどそんな気配は無い様子。スタメンも主力も概ね前期と同じと思っていいかな。そしてやっぱり選手交代に保守的なのも変わらなさそう(でも前シーズンみたいに過密日程にならなさそうなので影響は少ないか)。

そんな中注目の選手は若き天才Marco Tilio。スタメンではないものの交代の一番手だし試合に出れば結果はそこそこに出すので今年こそLMN(+Berenguer)の壁を越えられるかどうかが見物。海外移籍なり代表チームでの出番なりにつながるにはまずそこからのはず。あと主力に迫りつつある若手としては左ウィング・SBどっちもできるJordan Bosが私は好き。ACLやU23代表でも活躍してた選手です。

監督は今期も引き続きPatrick Kisnorbo。シティで指導のポジションに入ってからユース、女子、男子でタイトルを獲っていて海外からの興味についても囁かれるようになりましたが今期も引き続き強いシティを率います。現役の頃から健在のTシャツの袖殺しの隆々とした筋肉、毎試合ピッチサイドで声を枯らす熱血指導で「軍曹」的なところがある厳しい監督ですが記者会見などで見る姿とはちょっと違うキャラが練習場では見られるとか・・・?

メルボルン・ヴィクトリー

前期のカップ戦を優勝したものの僅かな勝ち点の差でPremierを逃し、ファイナルシリーズは準決勝でウェスタン・ユナイテッドに敗れ、さらに今期のカップ戦もRound of 32でウェスタン・ユナイテッド相手に敗退。その前のシーズンから大きな飛躍を見せたものの悔しいこと続き。
単純に順位とか結果とかでいうと1シーズンで最下位から2位まで上り詰めたことやクラブ記録になった16戦無敗連続記録やリーグ最少失点(25失点)、レギュラーシーズンとカップ戦でいかに負けなかったかを考えるとChampion・Premierに手が届かなかったのは厳しい。

メルボルンの他2クラブがほぼ同じスカッドを維持しているのと比べるとヴィクトリーは主力だった選手の海外移籍も含め出入りが多かったです。ただプレシーズンで何試合か見たところ大体うまく補完しているかな?あと前からいる選手も前期のプレシーズンよりいい現在地にいるように見えます。なんだかんだで前期は良かったのでより得点できるか、より失点を減らせるか、より勝ち点を獲れるか。難しいなあ。

注目の選手は前期のAリーグ最優秀選手のJake Brimmer。自分で決めるゴラッソからセットプレーからカウンターからヴィクトリーのプレーの多くで鍵となる若きマエストロ。そしてもちろんスーパースターのNaniさんも。プレシーズンから攻撃面でこのチームに色々与える片鱗が見えてわくわくしています。

そんなヴィクトリーを引き続き率いるのはTony Popovic(祝・最優秀監督賞受賞!)。3点獲るよりもクリーンシートが大事で知られていますが、今期は前期のリーグ最少失点をさらに減らしたいそうで。Aリーグの監督が獲得できるタイトルで唯一手にしていないChampionの座を今期こそ勝ち取るため完璧に近いチームをさらに強くできるか。

(ヴィクトリーの男子・女子どちらもカバーしたクラブ全体の詳細レビューはまた今度。)

ウェスタン・ユナイテッド

前期のChampionで強力なDF陣と超理不尽ストッパーJamie Youngがゴールを守る「ウノゼロ」の王。今期はAリーグのどのチームもこの緑の要塞を崩すのが最大の試練になりそう。
ボールを持たないことに関してはリーグで一番でカウンターも強力ですがDiamanti、Kilkenny辺りが主力に戻ってくるとボールを持ってもできることが増えるはず。補強は最小限ですがDiamantiの復帰、前期で調子を上げたPrijovicの続投は「良い補強」に匹敵するんじゃないかというのがAリーグ周りの総意のようです。

とはいえこのチームの要は30歳オーバーのベテラン勢。新しいシーズンを迎えてみんなそれぞれ1歳年をとっています。前期みたいなイレギュラーな状況はないとはいえもしかしたら何らかの影響はでてくるかも。
あとは万が一失点した場合点が取れるかはこういうタイプのチーム全般の課題だと思うのですがそこは主にPrijovicに期待があるかな。前シーズン後半の感じだったらチームとしての心配が減るどころか得点王まで狙えそう。

注目したい、というかおそらく今期も注目してしまいそうなのがゴールキーパーJamie Young。理不尽に超人的なセーブはカップ戦でもすでに見られています。そして東京五輪以来ちょこちょこブレイクしかけてるLachlan Walesが安定して大活躍できるか。ウィンガーなので今年のW杯に向けての競争は厳しいですがそろそろ代表候補の上の方に来てもいいかも・・・?

そして今期も監督は豪代表のヒーローだったJohn Aloisi。Aリーグの監督としてはしばらく無職でしたが前期ドラマチックな復帰を果たし「監督の黄金世代」候補に名乗りをあげました。ちなみにAloisi兄弟はどちらもなんらかの指導者になっていますが兄Rossは現役時代DFだったのにアデレードからマリノスに行ってアタッキングフットボールに携わっててJohnの方はストライカーだったのにAリーグでウノゼロの要塞やってるのはちょっと不思議。

アデレード・ユナイテッド

前シーズンの開幕からしばらく引き分けが続いたこともあって最終的にこの順位ですが安定して強く、しかも若手の爆発力があって試合終了前に勝ち点を得るゴールを決めることが多いことからFergie timeならぬVeart timeという言葉が使われるように。

元々アデレードは(メルボルンとかと比べて)サッカーが地域に根付いていて、そこにポゼッションベースのサッカー、安定して強いスカッド、地元で育った若手選手、熱い観客、いいサイズのスタジアムと揃った上での最後の最後まで盛り上がる試合展開はAリーグの良いところが詰まってる良い組み合わせ。ヴィクトリーサポとしては今年も向こうで開催されるOriginal Rivalryが良い勝負になるといいなと願っています。

今期も若い選手が何人か海外に売れましたが他はスカッドに大きな変動はなく、そこにウィンガーのBen Halloranが戻ってきたのは鬼に金棒。プレイメーカーである左ウィングのGoodwinの負担を減らしたりコンビプレーも強力になりそう。アデレードは真ん中よりサイドにスターがいるチームです。
そういうわけでベテラン達がスタメンの座を今期さらに確固にすると思われる中でどんな若い選手が出てくるかにも注目。

注目の選手は、というとやっぱり対戦相手として一番厄介なのはCraig Goodwin。過去にヴィクトリーとの試合でボレーシュートやらフリーキックやら色々痛い目に遭わされ過ぎて去年AAMI Parkで代表戦で目の前でゴール決めた時反射神経で胃が「ウッ」てなったくらい。豪代表といえば前期Socceroosのトレーニングに呼ばれたGKのJoe Gauciも。22歳なので正式な招集はまだ先だろうけど将来を期待されてる感満載。既にすごいキーパーなんだけどAリーグでは余所の人間やめた系GK達ほど派手に賞賛されなかった印象もあります。

アデレードの監督は先ほどのVeart timeという言葉の由来になったCarl Veart。若手の起用、ベテランのクラスチェンジ、サイドの破壊力を生かす攻撃、さらにアシスタントの育成(?)まで。今期だと現役時代は国内リーグ史に残るくらいたくさん得点していたDamian Mori、そして元豪代表のMark Milliganがアシスタントにいます。ちょこちょこ中継に映ると思うのでお楽しみに。

セントラルコースト・マリナーズ

シドニーより北のGosford辺りを本拠として長らく代表クラスの選手を世に、そして世界に送り出してきたクラブもここ数年はファイナルシリーズに連続で進出、さらに(旧)FFAカップではファイナリストにもなりました。
前期は一時期試合終了直前の失点で勝ち点を失ってばかりだった時期が謎にあったのはなんだったのか、終盤では大分落ち着いてこの順位に。

アデレードと同じく若手が売れるクラブなので毎年ある程度主力が出ていくのは想定内ながらも今年はRowles、Millerという代表・アンダー代表級の穴埋めしにくいDF2人がスコットランドに移籍したことは監督のMontyを悩ませているはず。ただここで危機を救える人材がローカルで出てきたらほんとすごい。
実は前期のGKだったBirighittiも同じくスコットランドに行ったのですがそお穴を埋めるべくしっかり補強するとMontyが約束した結果がDanny Vukovicの帰還。最高にかっこいい約束の守り方です。なので守備もなんとかなるといいな。

とはいえあくまで「三歩進んで二歩下がる」に近いところがあるのでタイトルが獲れる可能性に関しては厳しいかも。でもクラブのスローガン「Won't back down」の通りどのチームが相手でも易々とは勝たせないだろうし、またファイナルシリーズに進出しようとものすごいファイトを見せるはず。今シーズンも期待を上回る強さを見せるのではと思います。

注目したいのは、というかすでに注目の的になっている若きスターGarang Kuol。バルセロナの守備陣を一人でぶっちぎった17歳で9月の代表期間には飛び飛び級でSocceroosに選出、さらに近いうちに大きな移籍の噂があるので今のうちにじっくり間近で見たい。そして同じく今回Socceroosに選出されたJason Cummings。Socceroos志望でスコットランドからAリーグに来た彼にとってもワールドカップに至るシーズン序盤は同様に大事な時期。クラブでの責任・負担も増えた中で前期の活躍に上乗せできるか。

オフシーズンに海外に引き抜かれそうになったという話もあったみたいですが監督は引き続きMontyことNick Montgomery。若い選手達が舞い上がらず、そして責任を重く感じすぎずチームの重要なポジションや局面で生き生き活躍できるのも彼のおかげ。なので前期(明らかな誤審を含む)判定がことごとく相手の方に行ったときの「もう誰も信じない」みたいな顔はできるだけ今期は見たくないです。

ウェリントン・フィーニックス

ニュージーランドのクラブながらオーストラリアのリーグに所属し、母国で試合が開催できずラリアにほぼ2シーズンの間駐屯、ACLにも出られなければOFCの大会にも出られずカップ戦もホーム開催権が’無く、代表ウィークになればチームからかなりの人数が招集されていなくなったという様々な理不尽がつきまとうクラブ。でもその境遇になる前からずっとAリーグファンの多くに「自分のとこの次に好きなクラブ」として愛されているクラブです。

様々な困難があったウェリントンも6位フィニッシュ。ただ得失点差が-15とかむしろなぜこの順位にとどまれたか不思議。ウェリントンは若い選手が中盤・守備まで多いことが関係しているのか一度失点すると「泣きっ面に蜂」どころか「泣きっ面に蜂・虻・蚊」みたいな失点の仕方をしていた印象があります。今期は粘り強く踏ん張れるようになりたい。

今期はちゃんと安定してニュージーランド国内でホーム試合が出来ることとなり、家族連れが来やすい時間帯の試合開催、それから夏(南半球の)にサッカー以外でインバウンドが見込めるメジャーイベントがいくつかあるらしくその効果で集客を多くできるような試合スケジュールを組んでもらっているのが功を奏すといいな。数年本当の意味でのホームの観客が入れなかった分是非。どんな試合でも可能性を感じるというウェリントンの特徴はホームで真価を発揮するはず。多分。

今期は諸々の状況が落ち着いたこともあり補強は色々工夫している感があります。某緑のチームにボール持たされて苦労して負けたこともあり保持の部分を改善したいのかも?というところは中盤の補強を見るとあるかな。それでも今期もカウンターが主な得点源なのは変わらなさそう。

そして余談ですがパースもウェリントンもそれぞれの都市で試合ができるということでパースとのディスタンス・ダービーも復活。ただし行き来すること自体には規制はないもののヴィクトリーが前期パースに行った時みたいに数時間フライトが遅れたりするアクシデントがウェリントンに降りかかったら地獄になるおそれも。

ウェリントンの精鋭はニュージーランド代表(&アンダー代表)の若い精鋭たちなのでそういう意味でも楽しみに見れますがやっぱりBen Waine君は今期も特に見守りたい。今の所安定して得点してるし得点できるシチュエーションもじわじわ広がってるような気がする。 そしてブルガリア人MFのBozhidar Kraevはなんとなく「あの辺りのポジションにああいう感じの選手いなかったよな」という視点で今期のキー補強のような印象があります。

そしてAリーグのどこかのクラブで監督の座が危うくなると名前が真っ先に挙がってしまう監督であるUfuk Talayが今期もまだまだウェリントンの監督を続けます。去年は大いなる困難のシーズンでこのチームを率いてファイナルシリーズに導きました。本人が去ることを選ぶまでとりあえずウェリントンにいると思うのですが将来的にもっと大きなクラブを率いたらどうなるか、海外進出を目指してるのかなどどういう道を進むのかちょっと気になる監督。

マッカーサーFC

今期に向けて誰よりもリフレッシュが必要だったかもしれないマッカーサー。2022/23シーズンに向けて監督が変わったAリーグ唯一のクラブであり、さらにオーストラリアの生態系の外から監督を任命した唯一のクラブ。この国は基本的にプロで指揮する機会が限られるのでラリアの監督を優先したいけどたまにこうやって違ったものが入ってこないと環境が停滞すると思うのでポジティブに捉えたいですね。
まだまだクラブとしても新しくなかなか監督で観客が増えるということはないかもしれませんが成績と安定したホームグラウンドとプレーで試合に来てカウベルを鳴らすサポーターが増えるといいな。

マッカーサーは前シーズンの後半にかけてものすごく調子を落としていました。コロナ関係の中断や過密日程が関係していたと思われますが断定までは至らず。なので前期はあんまり比較対象として考えないほうがいいかも。スカッドは刷新とまでは行かないもののかなり出入りがあり、でもキーとなる選手は残留しています。守備陣は相変わらずでかい選手が多く前期見た重戦車的なプレースタイルを続けるような雰囲気はありますが、中盤のDavila・Da Silva・Arzaniの組み合わせは華麗なプレーが見れそうな予感。結構楽しみです。

なので注目の選手も中盤から。前回のW杯でブレイクして以来海外で諸々上手くいかずリスタートをもくろむ若き天才Daniel Arzaniのプレーが国内で見れるのは見逃せない。復活する過程も是非見届けたい。そしてオフシーズンに大変なことがあったにも関わらずオーストラリアに残ってくれるらしいUlises Davila。ここ数年リーグトップクラスのMFで常に大きな存在で居続けるのを脅威に思いながらも応援したいです。

そしてある意味どんな選手より注目が前述通り今期からこのチームを率いるDwight Yorke。プレミアリーグのレジェンドとはいえいきなりオーストラリアで監督の座(Aリーグオールスター→マッカーサー)を与えられて懐疑的な人は少なくないようですがとりあえず今の所は順調。カップ戦も(対戦相手の抽選運はあるとはいえ)順調に勝ち進んでいます。最終的にファイナルシリーズに届けば成功といえるかも?ついでにArzani君の復活をどう支えるかも見物。

シドニーFC

シドニーがファイナルシリーズに手が届かないというのはAリーグでは未曾有に近い事態でしたが前期はとにかく冴えなかった。シドニーの強みは「なんだかんだで安定している」だと思っているのですがACLでもリーグでもカップでもとにかく安定して微妙に不調でした。

そして今期は新しくなったスタジアムで試合を開催することになっているシドニー。元々メンバーシップの人数に対して現地観戦の人数がちょっと少ないかな(隣のライバルクラブと比較して)というところはあり、前期の結果もふるわず、観客層・数を増やすような類いのスーパースター補強をしたわけではないので観客増はどうなるか。ただ禁断の移籍(相互)によりシドニーダービーにはさらに火が付くはずだし比較的大型の補強がはまって結果が出ればもしかしたら・・・?

今期に向けた大幅な選手の入れ替わりはフォーメーション変更のためにバランスを変えなきゃいけなかった分も込み。Arnold政権の頃から続いた4-2-2-2を4-3-3に変える過程なのでカップ戦の敗退含めまだまとまらないのはある程度しょうがない。ただその変化の中で強力な外国人ウィンガーを連れてきているので新しいフォーメーションに落ち着いたらまた安定して強いシドニーになれるかも。ちなみに開幕節はその新しいスタジアムでヴィクトリーとのthe Big Blueですけど間に合いますかね?

Aリーグに欧州から来る選手はちょっと有名な選手でもあんまり知らない私ですがRobert Makに関しては向こうの色んな試合で対戦相手として何度も見たことがあって今回もシドニー所属という変な縁。そしてW杯大陸間プレーオフのPK戦のヒーロー、「Grey Wiggle」ことAndrew Redmayneもシドニーで元気にやってます、というかもうカップ戦のPK戦でその能力を発揮しています。リーグ戦でもシドニーがPK献上するたびに盛り上がること間違いなし(さすがにそんなに多くはないと思いますが)。

現豪代表監督Graeme Arnoldの弟子としてシドニーのチームを受け継ぎ維持してきたSteve Corica監督は前期の成績と最近のカップ戦敗退から既にかなりプレッシャーがかかっている状況ですが、全ては先ほど説明した改革の出来次第。これまでの「親の七光り」に似た評価を自分の手で覆すことができるか。

ニューカッスル・ジェッツ

前期のジェッツは調子がいい時は良いフットボールで見る人を魅惑したものの調子に少なからず波があり、さらに調子が良かろうが悪かろうが失点はほぼ不可避だったのでこの順位に。できることは皆見てわかった分勿体ない。でも調子が悪いときのプレーを見るとこの順位で納得してしまう。

単純に上積みするには入れ替わりが結構ありましたが補強も結構良い仕事しています。他のAリーグクラブから移籍してきた選手に良い選手が結構いたり。そして今期はとにかく足の速い選手が多い。ただ守備はあんまり手を入れてない印象。なので総じて結果はどうなるかわかりませんが前期より伸びるポテンシャルはあると思いますし、結果に関わらず引き続きジェッツのエキサイティングなアタッキングフットボールが見れそうな雰囲気はあります。

そもそもが見てて楽しいスタイルと呼ばれるジェッツのプレースタイルですが彼らにとって最大の(唯一の?)ダービーであるセントラルコーストとのF3ダービーはさらに熱が増して盛り上がるので配信・放送という形でも是非観てみてください。(ダービーについては別に記事書きたいな)

補強について「守備にあんまり手を入れてない」と言いましたがCarl Jenkinsonは比較的大きな参入。ただセンターバックの補強はしないのかな。
アタッカーは他のAリーグクラブから新しい機会を求めてやってきた選手が多い中全くのニューフェイスも。前期のサプライズは得点王に迫ったジョージア人FWのBeka Mikeltadzeでしたが今期のサプライズは同じくジョージア人のBeka Dartsmelia。二匹目のどじょう?鏡像体?同じ名前で相手を惑わせる戦略?答えはシーズンが始まってから目にすることとなりそうです。

基本的にはチーム全体の動きを中心に見たいですが選手個人で注目したいのはウェリントンから加入したReno Piscopo。東京五輪世代の良い選手なんですけど小さい怪我(=途中で交代するけど次の試合は問題なく出る、みたいな)で出場がちょこちょこ途切れてなかなか真価が見られなかったのですがオールスターvsバルセロナでの1ゴール1アシストはきっとこれからの飛躍の序章。あと生え抜きで前からいるAngus Thurgateもここ数シーズン中盤で躍動してる若い選手なのですがプレーも見た目も若さが少なめだったりどこか地味なところがあるのかスポットライトを浴びない傾向が。 アンダー世代の代表とか選ばれててもいいくらいなのに。みんなもっと注目してあげて。

なんとかジェッツでの1年目を終えた監督のArthur Papasさん、前期も選手をリクルートする際に自ら獲得候補の選手のビデオを見まくって吟味したそうですが今期も海外からの補強の発表が遅めだったのできっと同じことをしてたのかな。前もMikeltadzeやPenhaなど良い補強をしてたので見る目は確かです。目指してるフットボールもエキサイティングですし、あとはPapasさんとAリーグファンが見たい試合像が今期はどれくらい実現できるか。

ウェスタン・シドニー・ワンダラーズ

去年の記事まで遡るのも面倒ですが多分ワンダラーズがこうなることは私もだいたい予想していた記憶があります。
で、今期に向けた予測もだいたいそのままコピペで良いような気がします。
要点は:
①今年もスカッド総入れ替えに近い
②個人の能力としてはまた良い選手がそろってる
③でもチームとして機能するかどうかは分からない
くらいかな。ただ守備方面も結構補強してるのはとりあえず評価したい。

サッカー自体のところからちょっと逸れる話になりますがワンダラーズのメディアスタッフ陣はチームの調子に関わらず素晴らしい仕事をしていて、今年のプレシーズンは結構選手達の和気藹々とした様子や地域での社会活動の様子なども積極的に発信していて透明性だったり地域密着&絆作りに力を入れていることがうかがえます。とりあえずそこら辺を長期的に続けてくれるならクラブ文化の醸成から他にも良い影響があるかも・・・?

上記③を念頭に置くのは大前提ですが今期(も)ワンダラーズは結構良い補強をしています。各ポジションにちゃんと活躍すればリーグでトップクラスの選手がそろってる上にシドニーから禁断の移籍で来たNinkovicはAリーグ史上トップクラスのMFですし代表での座を取り戻したいBrandon Borrelloなんかも獲得。正直どんなチームになるのか誰がスタメンになるのかどんなフォーメーションか想像もつかないですが、多分基本方針としてはポゼッションベースのスタイルを続けることになるはず。

未知な要素が多い中とにかくストライカーとしてKusini Yengi君にある程度の期待があるのは間違いない。アデレードからの移籍は本人に良い事なのかちょっと疑問なのですがそれで化ければ言うことなし。クラシカルなフィジカル強い若いストライカーは貴重です。あとは何度も言いますが禁断の移籍のMilos Ninkovic。この新生ワンダラーズのチームが去年と変わるとしたらその中心には彼がいること間違いなし。変わらなくてもダービーの台風の目になるはず。熱くなる要素満載のシドニーダービーは必見ですね。

そして最終的にこのチームが変われるどうかは監督Mark Rudanの手腕に一番かかっています。Aリーグでタイトルを獲ったこととかあるわけではないけどある程度実力があって、かつキャラ的にも特徴がある監督。以前監督だったウェリントンやウェスタン・ユナイテッドとの試合では何かちょこちょこ起こる可能性があるのでちょっと注目。あと地元出身であることは何かにカウントされないかな。

ブリスベン・ロアー

ブリスベンはプレシーズンのプレミアリーグクラブ相手の試合でもなかなか見所があり、さらにカップ戦準決勝まで行って結構好調ではあるので前期のこの順位から話を始めるのもちょっと変な気持ちですがまあしょうがない。
前期のブリスベンは失点の多さより得点の少なさを嘆いたシーズンだと思います。良いプレーはしていたのだけど上手いことフィットして爆発力が発揮できるストライカーがいなかったのが主な要因だと思われます。

そんな中プレシーズンのかなり初期にCharlie Austinを獲得したのはどんぴしゃだったようです。既にカップ戦でゴールにアシストにPK戦でスポットライトを浴びて、ピッチ内だけでなくピッチ外でのキャラクターもAリーグファンの心を掴んでいます。今後も安定的に得点して得点に絡んでくれそう。
そうなるとおそらく次は守備陣の不安が顕在化してくるかな。ベテランでキーの選手は怪我も多いので。

ブリスベンは基本的に自分の身の丈を良いところに設定しているクラブで明確なライバル関係になる他クラブもまだいなく、チーム内の選手達が広く仲が良い和気藹々したチームなのに今年も変なところでクラブが揉めているのは残念。せっかくカップ戦も強いし成績も向上しそうだしQLD州唯一のプロサッカークラブなのでなんとかちゃんとしていただきたい。

注目の選手はまず先ほど書いたCharlie Austin。ピッチ上でのプレーだけでなく観客やメディアに対する振る舞い、若い選手たちの指導、さらにさらにTwitterでの発言も含め見所たくさん。そして前期からしっかり主力に定着した若手MFのRahmat Akbari。自身の成長ももちろん、前に頼れる選手がいることでさらに評価が上がる可能性が。

そして監督Warren Moonも今シーズン続投。前よりも手札がそろっているし色々なイレギュラーがない分監督としてもきちんと評価できるかな。とりあえずブリスベンのみならず広いQLD州の様々な場所から若い選手を登用してAリーグで世に出すことについては引き続き期待です。きっとブリスベンから海外に行ける人材も近いうちに出てくるはず。

パース・グローリー

この記事の最後に紹介するクラブ、ということは前期最下位だったパース。WA州がオーストラリアの他の州と比べてかなり厳しいコロナ対策をとっていたことから起因した本拠パースに帰れない日々、上手く行かなかった目玉補強、主力の多くを怪我で失った終盤など困難ばかりだった苦しいシーズンでした。でもそんな中でも最後の方でシティ(ACL帰りでも)を打ち破った底力は忘れたくない。

そういった経緯でスカッドに大幅な入れ替わりがあったことは必然でしたが、その状況下でも残っている選手たちには上位のチームでも主力になれるような選手がいます。
さらにスカッドが薄かった時期にアカデミーから上がってきた有能株、それから他のクラブや海外挑戦からより多くの試合時間を求めて来た選手、さらにここぞという所を狙って呼んだ海外選手が集まって今期のパースは(特にホームのファン達に)蘇った姿を見せるため戦います。

ただシーズン前半のホームゲームをどこでするかということで今期もちょっとごたごたしているという話も聞いているのでなんとかなって欲しい。本当にこのチームは安定することだけでもだいぶ伸びるはずなのでここでまた不安材料が出てくるのはチームにもファンにも大変。今期こそホームで観客を集めて地の利を活かすためにも小さめのグラウンドでもちゃんとしたところで落ち着いて試合ができることを願うのみ。

今期のパースの選手をみると補強に「まかない飯」的なフレーバーがどことなくある気がしますが材料としてはなかなか良い選手もそろっています。あとはまかない飯を作る料理人の腕ですが(前期の困難もあり)Zadkovichさんがどういった腕がある監督かあんまり見られていません。他のクラブは安定も良い選手も前期より大きな補強も既にそろっているので最終的にはパースの命運は監督の良し悪しにかかってくるかも・・・?

パースで今期私が特に注目しているのがStefan Colakovski。彼は子供の頃からメルボルンシティのアクティブサポーターでアカデミーからトップチームまで上り詰めて代表組が不在だった年のグランドファイナルでも活躍、でも前述LMNの壁を越えられず惜しまれながらも今期から試合時間を求めてパースへ。まとまった出場時間を得て(得られるはず)どう成長するか、そして中断前にシティでの凱旋(?)試合があるのでそこで何を見せられるか。そしてシドニーから移籍したMustafa Aminiも好きな選手。Aリーグ復帰前の長い怪我の影響が前期はあったと思われるけど活躍できそうな徴候はあったので今期は本来の姿に近いフィジカルとテクニカルを両方楽しめるプレーが見られるはず。

前期の途中からパースを指揮しているRuben Zadkovich監督は先ほど書いた通りチームの不調やスカッドの不十分さもありまだなかなか評価できないでいますが巷の評価もそんなに高くないみたいです。ちなみに36歳とAリーグの監督では最年少で(私より年下・・・)、チームの中に監督より年上の選手が2人ほどいるのもまたレアな現象。

さて、他にAリーグ男子周りでカバーしておきたいことだとまずW杯中断したての時にシドニーで開催されるシドニースーパーカップの事。
Aリーグからはシドニーとウェスタン・シドニーが参加、それぞれセルティックとエヴァートンと対戦し、その間にセルティックとエヴァートンの試合があります。
この4チームで最近好調だったのはセルティックだけか(汗)シドニーの2クラブはまだ復活の可能性もあり(ブリスベンだってあの成績ながらプレシーズンでリーズ相手に頑張ってたましたし)、なんとか面白い試合になるといいなと思ってます。
ちなみに私はシドニーとセルティックの試合に現地参戦予定です。

毎年恒例ですが今シーズンの順位を予想するのは難しすぎるのでしないでおきます。ただ今年もChampionとPremierが割れる可能性は高いかな。1シーズンで二冠は最近本当に難しいので。
得点王は・・・Jamie MacLarenが常にベンチマークなので(前期は16得点)それを超える選手が現れるかですね。あるとしたら外国人選手か。MikeltadzeだったりPrijovicあたりがある程度点が取れるチームでその中でも得点源が集中しそうなストライカーという印象があります。

リーグ全体を見ても大物獲り含めかなり攻撃の補強が目立つ中、守備の補強はそこまでなクラブが多いので守備に力を入れたクラブとそうでないクラブの差が出るかどうかにも少し注目しています。

あと守備でいえば前期はJamie Young(ウェスタン・ユナイテッド)、Mark Birighitti(セントラルコースト)、Oli Sail(ウェリントン)をAリーグ男子の三大GKと私は勝手に呼んでいたのですがBirighittiが移籍したので今期その空いた座に入るのは誰になるかも楽しみ。やっぱりオーストラリアはゴールキーパーで盛り上がりたい。

そしてAリーグ男子がワールドカップ中断に入るとほぼ同時にAリーグ女子が開幕します(11月18日)。そちらも情報がもうちょっとそろってからまた別のシーズンプレビューを書くのでしばしお待ちを。
そしてメルボルン・ヴィクトリーのクラブとしてのプレビューも女子の補強が概ね落ち着き次第書き始めますのでまたよろしくお願いします。