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お題でプレイリストその2「木の音楽」

メルボルンもすっかり秋です・・・とも言い切れないのがこの街の気候で。(というか今年はもうちょっと残暑的なものがあっていいと願っている人も多いはず)
気温がまだここからどうなるかは分かりませんが日はだんだん短くなり、そこここで木がめいめいのタイミングで紅葉し始めているあたり間違いなく秋は来ているようです。

日本の紅葉とはもちろん違いますがメルボルンでもそういった紅葉する樹木は色々あります。ただ植生全体でいうとやっぱりオーストラリアは独特。こちらで育ってクラシック音楽にはまって地味に(でもかなり強烈に)難しく感じるのはその植生の違いから作品が書かれたヨーロッパ他諸国の風景を音楽から頭の中に絵として描くことだったりします。音楽だけだと難しい部分は文学や絵画作品で補完している部分がかなりあるかも。それに加えて特定の樹木に関する象徴やイメージもなかなかピンとこない。

ということで「木」にまつわる曲を集めてプレイリストを作ってみました。

このプレイリストはそもそも「ヨーロッパの芸術家Cypress(糸杉)好きだな!」と思ったところから作り始めたのでリストやフィンジ(歌詞はシェイクスピアの「十二夜」)が入ってます。この3曲だけでも糸杉にどんなイメージがあるか分かりやすいですね。(音楽作品以外も含めるならゴッホの諸作品やアガサ・クリスティの「杉の柩」も足したいところ)
Alec Rothの漢詩を題材にした歌曲集「Songs in Times of War」にもCypressという言葉が見られますがこの楽章の元ネタは杜甫の「蜀相」なので本来糸杉ではなく「柏」を指しているはず。

この手のプレイリストに続きものの(=各楽章が途切れず演奏される)作品から楽章をぶった切って入れることはあんまりしたくないのですが、レスピーギの「ローマの松」はこのトピックでは最高峰の作品なのでどうしても外せない。ところで陳其鋼の「五行」の「木」の楽章でローマの松の第3楽章がちょっとだけ引用されているように思うのですが私の思い違いでしょうか?(という問いかけも含め並べて入れてみました)

このプレイリストは基本タイトルか歌詞に木が使われていますがクラムのMadrigalsのは少し説明が必要ですね。歌詞の元になった詩はフェデリコ・ガルシア・ロルカの「Casida de los Ramos」なのですがこの曲に使われている部分は主語である「枝」が抜けています。曲も詩も好きなのでちょっと分かりにくても入れたかった。

そしてプレイリストの最後の方にヨーロッパ以外の木や植生を描いた曲をちょっとだけ入れておきました。作品の母数が少ないのと気候が多彩なので一概には言えないながらも南米周りは植生的にもなんとなく親近感を覚えます。アルゼンチンの詩人ホルヘ・ルイス・ボルヘスの作品にもジャカランダやユーカリが出てきますし、オーストラリアにとって実は風景的に近いのかも。

ちなみにヘッダー画像にしたのがジャカランダの木です(メルボルン中心街のFlagstaff Garden)。オーストラリアの自然風景を題材にした音楽作品は「木がない景色」を描くものも多いですが先住民コミュニティに関する話をちょっと聞きかじる程度でも樹木を大事にしている話が出てくるので音楽でもオーストラリアの植生を扱った作品がもっと増えて欲しい(そしてもっと出会いたい)です。