見出し画像

Aリーグ男子2023/24シーズン振り返り: 荒波に揉まれて波に乗ることができたか

Aリーグ男子もシーズンが終わり、世界一長いとも呼ばれるオフシーズンとともにAリーグが週末に全くない日々が始まりました。すでにちょっと寂しいのでオーストラリアカップが始まるまでにシーズンを振り返るように試合をいくつか選んで見返しています。

今期もまたカオスやドラマに満ちたシーズンでしたが最初の数試合を負けで始めながらPremier、Champion、Club Championship、そしてAFCカップと四冠を達成したセントラルコースト・マリナーズにおめでとう、から始めたいと思います。とにかく強かった。不思議なことにチームとして完全ではないところはあったものの国内でも国外でも完璧なチームという感じでした。女子のチームも似たような印象ということで再現性と一貫性もある、クラブとしての大きな勝利でした。

毎年毎年色んなことがあってどこから振り返ればいいのか難しいですが今年Aリーグの順位を分けたのは「チームとしての集合の力」だったと思います。短いシーズンではありますがリーグに馴染む外国人選手が来たり若手が台頭したりしてもなかなか総合力がないと継続して戦えない。今期の得点王は最下位のパースから出てますし、同じくパースはGKが15本(!)セーブした中での7-1負けとかしてますし、個人が超人的な働きをするだけでは難しいリーグ模様をよく表していました。特に1~3位とその下、そして7位までと8位以下にそのチームとしての力の差が現れているような気がします。

そのチームとしての力が特に強いと思われるトップ3がセントラルコースト、ウェリントン、ヴィクトリーだったわけですが、何よりセントラルコーストとウェリントンのチームとしての成熟度がこのリーグにまた深みをもたらしてくれたというか、腹が立つほど手強かったですが必要な手強さだと思いました。この2チームは若い選手も多い中でこのしたたかさというのも凄いポイント。そういうチームにもっと勝てるようになりたいですし、難しい相手が増えるにしてももっとしたたかなチームがリーグに増えて欲しい。

Aリーグは毎年カオス、といってもスコアの数字にこれほどカオスが現れたシーズンは自分が見始めてからなかった気がします。7-0とか8-0みたいな一方的なスコアも少なからずあり、そういう試合はピッチ内以外での要因が得点に表れてしまったところもあったりします。
中でもメルボルン・シティの振れ幅がひどい。8-1、7-0、8-0で勝った試合がある反面6-0とか5-1で負けたりもしている(しかも8-1勝と5-1負は同じ相手)。まるで海を泳ぐサメのごとく弱って血を流しているようなチームには徹底的に襲いかかる習性があるのは分かっていましたがある程度の一貫性があるチームだったので今期に向けたチームの面子の大きな変化などに煽られ落ち着くことがなかった、ということだったのかな。来期も結構出入りがあるようなのでどうなるか。

そんなこともありとにかくリーグ全体での得点数が多いシーズンでしたが特に終盤・アディショナルタイムに点が入ることが多く一つの見所でした。パースみたいに純粋に終盤に強くなるチームもいればマッカーサーみたいにオープンな試合展開上等!みたいなチームもあり。ヴィクトリーも終盤に失点したり得点したりしますがそれはちょっと別かな。そこはヴィクトリーのレビューでまた。
あと以前はどこも交代で若い選手を終盤に出して勢いを、みたいな起用法だったチームが多かった記憶がありますがスタメンクラスの若手が増えてちょっと終盤の戦術が変わったようなところがある気もします。来期もフルタイムまでチャンネルはそのままで。

得点数が増えたことに反映されているようにフォワード(ストライカー)の台頭が目立ったシーズンではありましたが、今こうやってシーズン全体・リーグ全体をゆっくり見回してみると中盤の選手に彩りがある環境だった気がします。最優秀選手賞Johnny Warren Medalに輝いた小さなマエストロJosh Nisbet君だったりフィジカルとテクニカルの融合でパワフルに活躍したZinedine Machach、冷静なプレーと感情の爆発で魅せたTolgay Arslan、ハードワークの塊のAlex Ruferなど以前にも増してバラエティに富んだ面々が揃っています。このリーグにおける正解は一つでないこと、多様な選手の活躍を楽しめることの喜びを改めて噛みしめています。

ヴィクトリーにとっては惜しくも負けて悲しい試合になりましたが、それでもセントラルコーストでのグランドファイナルは今シーズンの集大成であり、そしてAリーグの素晴らしいところが詰まった一大イベントだったと断言できます。シドニーにあるような規模のスタジアムではないものの満員御礼+αの盛り上がり、優勝の喜び、そしてそれ以前にこの最大の試合をホームで開催する権利を勝ち取った喜び。これがAリーグでみんなが戦う目的でAリーグの魂なんだ、というのを体現した試合だったと思います。あとグランドファイナルではないですがニュージーランドで開催されたセミファイナル(こちらも満席)もファイナルシリーズの試合(そして2レグの準決勝)の力強さを感じました。
あと改めてグランドファイナルは毎回違って毎回面白い。次回は勝ちたいな。

ということで内容がてんこ盛りでしかも方向性が多岐に渡ったシーズンだったので今期一番印象に残った試合を一つに絞るのは難しい。Elimination finalのメルボルンダービーはもちろん候補ですが他所の試合も色々選びたいものたくさん。ウェスタン・ユナイテッドの新しいホームでのどんでん返し(vsマッカーサー、4月)やUnite Roundの大雨の中での中立地ディスタンスダービー、あと3月のシティvsジェッツ0-0の試合とか(ハイライトで伝わりにくいですがハイライト貼りました)。これからももっと笑ってもっと驚いてAリーグを楽しみたいです。

ただ今期はヴィクトリーの調子や経緯も色々あった上に前述通り他所の試合も経緯もみんなすごく面白くて楽しみすぎた、というかエモーショナルな要素がこれまでと比べてもだいぶ増しだったのが関係してnoteももちろんですがそれ以外の各所でも語ることやまとめることにだいぶフットワークが重くなってしまったことは個人的に一番反省したい部分です。ついでに言えばAll Accessも実はそれで見てないエピソードがちらほら。グランドファイナル負けを経験したから、ではないですが一通り経験したのを心構えの糧にしてフットワークを改善するのを来期の目標にしたいです。2024/25シーズンもAリーグやオーストラリアのサッカーをお届けできるよう頑張ります。