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メルボルン・ヴィクトリー女子2021/22シーズン振り返り

レギュラーシーズン最後の5試合勝ちなし。
ファイナルトーナメントには得失点差のみでギリギリ4位に滑り込み。
そこから3位アデレードに勝ち、2位メルボルン・シティに勝ち、そして圧倒されそうになりながらもグランドファイナルで1位のシドニーに勝つ。
誰がこんなシーズンになると予想しただろう。
でも終わってみればこれぞヴィクトリーというチャンピオン防衛でした。

苦しかった、でも強かった

そもそも去年の今頃、ヴィクトリー女子の皆さんがチャンピオンとしてトロフィーを掲げた後、次のシーズンはどういう感じになるか私個人が一サポーターとして頭の中に描いてたのは:
選手のほとんどを2021/22シーズンもキープ、入れ替わりも多少はあり→リーグでなるべく高い順位をキープして「チャンピオン防衛」をしっかり背負ったままリーグ優勝を狙う+AAMI Parkでファイナルを戦えるようにする
・・・だったのですが。
何一つ予定通り行かなかったですね(笑)

もう色々ありすぎて、なんとか簡単にまとめるとキーになる選手複数に長期怪我、コロナ、それによる試合延期、大量の試合を短期間で消化、その最中にまた主力に怪我、代表招集、あと他にも何かあったような。

2月の過密日程(21日間で7試合とか)の間に落とした勝ち点だったり怪我で離脱した選手だったり、実際のプレーだったり、様々な側面を考慮してヴィクトリーは多くの人の優勝候補から外れていたような気がします。
彼女達の力を信じているとはいえ私も「ホームでファイナル」の部分は早めに諦めていました。
でもファイナルトーナメントに滑り込んでからは1週間しっかりリカバリする身体的・精神的な余裕、純粋なストライカーの復帰、そして本職のセンターバックが2人揃っている、という本来普通にあるはずの要素がやっと揃ったことでこのチームに力を発揮させ、さらに「前回チャンピオンでありながら格下としてのファイナル挑戦」という奇妙な、でもこのチームにとっておそらく最も奮起しやすい立ち位置で一発勝負のファイナルトーナメントを迎えることとなり。

なのでアデレード戦とシティ戦でのプレーを色々見てると「もっと早くこれが見たかった!」と思うことがもう百ほどもあって。でも一番必要とされる一番良い時にベストなプレーが見れてよかったですし、ベストにたどり着くまでの過程でも4位までに(ギリギリ)フィニッシュできたのはヴィクトリーの底力。こんなに苦労するはずじゃなかったけどなんとかできてよかった。

ヴィクトリーらしさ、についてはまた別の機会の話なのですが強いのに下から挑む感じとかメンタリティとか監督含めた強固な結束力とか、今期のファイナルトーナメントのヴィクトリー女子はなんか「すごいヴィクトリーっぽいなあ」みたいなイメージでした。コメンテーターやってる男子のレジェンドArchie Thompsonがむしろ2017/18にチャンピオンになった男子チームに立ち位置が似てるって以前言ってたのですがグランドファイナルでゴールキーパーが極限まで身体張ってるところまで同じとは。
(あとPreliminary Finalの女子メルボルンダービー(3月20日)も前の日の男子のメルボルンダービーと続けて見てみるとちょっと似てる場面が結構あって面白いです)

今期印象に残った選手から一人

そんな波乱のシーズンでベンチの選手層の厚さもかなり試されたり緊急補強もあったりした結果ヴィクトリー女子のファミリーが増え、そしてたくさんの選手のプレーが見れました。
その中から一人選ぶなら今期ヒーローとなった様々な選手を差し置いてAlana Murphyの話をしたいです。

彼女はヴィクトリーのアカデミーからトップチームに登録されたMFでまだ16歳なのですが、今年中盤のベテラン選手を守備に回さなきゃ行けない状況下でいわゆる「holding midfielder」の役割を立派に務めました。
数字に関しても1ゴール1アシスト。しかもなかなかのゴールです(クロスじゃないのとか言ってはいけません)。

それ以外のプレーに関しても中盤の底を1人で担うのを安心して任せられるのはびっくりしました。落ち着いてる。判断もいい。あと筋肉もすごいらしい(?)。
特にAリーグ男子に関して若い選手の質が、試合出場時間が、という話が出るときに私が理想の若手選手としてイメージするのがAlanaなんですよね。16歳であのポジションであれだけ堂々とプレーできて試合経験も積めて、そんなケースが女子でも男子でも増えればなあと思います。
(そしてAlanaはその活躍が認められU20女子代表にも選出!U20女子のワールドカップにも選ばれるといいな)

禍を転じて福と為す

長い話にどうしてもなっちゃいますが、今期のヴィクトリー女子のシーズンを語る上で結果やプレー以上に大事だったことがあります。
それは第1節の前半で膝に大怪我を負いシーズンアウトとなったキャプテンKayla Morrisonを取り巻く環境。
リハビリの過程で一日も欠かさず練習の場に参加し、試合でに出られない中チームとクラブに可能な形で貢献し続けた彼女をチームメイトのみんなもまた支え。優勝トロフィーを掲げるときにはキャプテン代理だったLia PrivitelliがKaylaをステージに呼んで自分のメダルをかけた場面(Instagramリンク)や、ロッカールームで皆が肩を組んでStand by meを歌った場面にはチームワークや選手同士の結束の強さという言葉では語り尽くせないこのチームの精神を感じます。

Kaylaのリハビリの日々は続きますがシーズンを振り返って彼女はこんなことを言っています。
大怪我を負うのはひどい事だけど、この怪我を負ったのがヴィクトリーにいるときでよかった、と。
チームにとっての危機、そして一選手の怪我にチームが、そしてクラブとして最良の形で対応できたこと、そしてKaylaがヴィクトリーにいて幸せなことがサポーターとして嬉しい。ヴィクトリーを応援しててよかったし、この経験を糧としてさらに選手に愛されるクラブとなって欲しいです。
あとKaylaのメディアパーソンとしての開花も見れてよかったです(笑)それこそ文章よしポッドキャストよし映像よし、油断してると選手として現役のうちにChannel 10に拾い上げられるかも・・・?

次のシーズン・・・どうでしょうね、いつ始まるかもまだ未定らしいですし、そのため海外移籍からシーズン開始に間に合うよう戻ってくる選手がいるのかも分かりませんがすでに「来季ヴィクトリーに戻る」と明言している選手が何人かいるのでとりあえず今は分からないなりにガールズの帰還を楽しみにします。
そして懲りずに言いますが来シーズンこそは本当にホームでファイナルを!