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大遅刻したAリーグ男子2022/23レビュー、またの名をカオスを説明しようとする試み

タイトル通り大遅刻です。本当は6月頭のグランドファイナルが終わって女子ワールドカップが7月下旬に始まる前の間の時期か、ワールドカップが始まって遠征に行くまでになんとか・・・と思っていたのですがNPL試合観戦や遠征準備やワールドカップをめいっぱい楽しんでしまったことによりこんなタイミングに。
それでもまだAリーグのシーズンは10月中旬まで始まらないので改めてゆっくり書けるのがありがたいような、やっぱりプレシーズン長すぎるような。

オーストラリアとニュージーランドで開催されたワールドカップもカオスでしたが(NZより豪での試合にカオスが多かった気がするのは私の気のせいじゃないはず)、その前のAリーグのシーズンも相当カオスでした。きっとやっぱりこのオーストラリアという国の大地でフットボールをある程度の期間続けてやると何かあるんじゃないか、そう思うには十分な、そしてずっと追いかけてきて楽しいけどくたくたになるような1年でした。
ただ少なくともAリーグのカオスに関しては例年とは違う要素が数々あってこうなった、みたいな心当たりがいくつかあって、それを解明とまではいかなくてももしかして関係していたかもしれないよ、くらいのトーンでシーズン振り返りに代えてまとめてみたいと思います。
なおこの記事に書く要素の少なくとも一部はAリーグの女子の方にも共通することがありますがそちらの振り返りは別に書いていますので女子に関してはとりあえず参考資料として。

そもそもAリーグは、という話になるのですがこのリーグは元々サラリーキャップがあるので経済的にクラブ間に多大な差はない(少なくともサラリーキャップがない外国のリーグほどはない)という前提があります。実際その力関係の決まらなさはファイナルシリーズというシステムの存在によって「Champions」を獲るチームがほぼ毎年変わることにも現れていますし、あと今期のグランドファイナルこそが予算の大小は最終的な結果に関係ないことを語るのに何より良い例となっています。

今シーズンに特異的な要素として最初に挙げられるのはカタールで2022年末に開催された男子ワールドカップ。通常とは違うタイミングで開催されるためシーズン開幕を早くずらして、ワールドカップの間はリーグを中断して、さらに激闘を経て帰ってきた選手達をプレシーズンなしでチームに組み入れ、というでっかいイレギュラーを受け入れる必要があったのはAリーグも例外ではありません。
元々プレシーズンが余計に長いとはいえそれがいつもより短くなったらシーズン開幕への準備にも影響がでそうですし、中断の間も(その期間の過ごし方はクラブそれぞれだったようですが)やっとリーグ戦のリズムに乗ってきたようなタイミングでまたイレギュラーになる、というのは大変だったはず。
さらにその結果実質シーズンが長くなり、そしてその長くなったシーズンを(中にはワールドカップ参戦した選手達を抱えて)走りきる体力がどれくらいあるか、というところまで含めてこのシーズンの流れに影響があったと思います。

そしてこれまある程度はオーストラリアにつきものですが、天候もまた一つの要素だと思います。
試合の延期につながるような天候不良は少なかったような印象ですがあることはありましたし、序盤に雨が多かったり、一つ前のシーズンより暑い日が多かったり、あと10月とかにブリスベンに試合行くと向こうはもう暑くなってたりで気候の差があったり、そういうことがピッチや選手のコンディションを左右する部分は少なからずあると思います。
ところで暑い日の昼の試合に関しては男子・女子合わせてウェスタン・シドニー・ワンダラーズが絡むのが目立って多かったような気がするのですが実際どうだったんだろう。

ただ選手のコンディションで言えば州外遠征が本格的に戻ってきたのはかなり大きいと思います。コロナ禍の制限が全部なくなってパースとウェリントンがそれぞれのホームで試合を出来るようになったことで日常的に長い遠征が発生するようになりましたし、その他MudgeeとかWolllongongとかBarallatとかタスマニア各地とか含め州内外で移動距離はがっつり増えてるはず。実際(特にウェリントン方面から)遠征による疲れの影響が選手自身により語られたりしています。

そして同様にコロナ禍の諸々がなくなったことで今期は過去数シーズンより大きい補強に各クラブが挑むような傾向もありました。リーグ・アンから来ちゃうの!?とかいうネームバリューの面ももちろんですが、実際に試合に投入したときの個人のインパクトもより大きかったと断定できます。
それと並行して若手を多く起用するクラブも増えて、若手を元々多く起用しているアデレードなんかはさらに若いアカデミーの選手を試合に出すことも多くなり。
この2つの要素はどちらも「試合の中で起こるプレーを予測しにくくする」要素で、カオスにつながるミクロの要素だと私は思います。

そして今期は多く発生する怪我のタイプにもかなり特徴があったように思います。筋肉系の怪我ではなく長引くような靱帯の怪我がシーズン開始前から多めにあった上に数週間試合に出られないような脳震盪も何件かありました。
それに加えて今期はレッドカードが多く、複数試合出場停止になるようなものもいくつかあり。
その結果スタメンやスカッドがシーズンを通して安定しないチームが多く、あまり試合に出ていない選手の起用も増えてさらにプレーの予測しにくさに影響したのではないかと思います。

そこに拍車をかける、といったら大げさかもしれませんが今年は1月の移籍期間に外国人枠を使うなど大きく変化を与えるための補強をしたチームが多くありました。そしてその補強が実際に後半戦にインパクトを与えていたり。
それでプレーの予測しにくさがさらに増し、チーム同士の力関係がシーズン後半も絶えず変化し続ける、という状況になったような印象を受けました。

どうしてもファイナルステージが始まった時点で忘却の彼方になりがちなのですがファイナルに進出できるトップ6とそのすぐ下の数チームの順位がかなり遅くまで激動していたのはちゃんと書き残しておきたいこと。元々(昇格降格があるリーグよりある意味)順位の多くに細かい意味があるリーグなので一喜一憂しやすい背景はありますが後半になっても(1位以外は)どうなるか全く分からない、というAリーグのどんでん返しをめいっぱい味わうシーズンに。それは楽しいからいいんですけどね。

それもきっと上に挙げたような様々な要素が関係して一つ一つのプレーの不確定要素が増え、それが積み重なることによる試合の展開の振れ幅の大きさ、さらにシーズンを通したダイナミクスのカオスにつながった、ということじゃないかなと私は思っています。きっと個々の要素についてはまだ今回言及してないものもいくつかあるかもですがだいたいのメカニズムはきっとこんな感じ。
文中に書いたとおりこれらの要素の数々はそもそもAリーグに本来備わっているものもあり、女子のリーグの方にも影響してるものもあり、ということで必ずしも今期だけの話ではないのですが、男子W杯の影響やコロナ禍の時と比べてかなり、という部分もあったはず。

そして男子も女子もそうですがこのシーズンはカオスをものともせず強いチーム、あるいはカオスを味方につけるチームが強かったような全般的な印象があります。前者だとシティ男子やシドニー女子みたいな安定をベースにした何が何でもオールラウンドに強いチーム、後者だとセントラルコーストやワンダラーズ男子、あとキャンベラやパース男子・女子も最終的な結果は届かないにしても後者の特徴があったかな。シドニー男子はカオスに強くないイメージがあったので今期は相当がんばったことになるはず(でもその本質自体はこれからも変わらない気がしますがどうかな)。

2023/24シーズンは少しは安定するのか、カオスが続くのか、という展望についてですが。
このオフシーズンは前代未聞といったレベルで選手の出入り(特に若い主力の海外移籍など)が激しくて、特に前述のシティ男子やシドニー女子みたいに安定した顔ぶれで積み上げてきたチームにも大きな変化の時がきています。どっちも補強に間違いはないチームなので弱くなるようなことはないと思いますがこの記事の視点ではそれでも変化とみなします。
さらにウェリントンの補強ルール変更があったり(端的に言えば前の不自由がかなりとっぱらわれた)、女子チームのスカッド構成に変化があったり、さらに一部のチームにACLやAFCカップがホーム&アウェーで開催されたり、北半球の夏と諸々気象関係の記事をみるともしかしたらオーストラリアも今夏は暑いかもしれないという予測もすでにあり、すでに今ある材料だけ観ても安定したシーズンではないと断言できそうです。

補強の選手の名前を見ても現在進行中のカップ戦の試合を見てもきっとふたを開けるまで予想できないAリーグシーズンが待っています。
女子は10月14日、男子は10月20日のリーグ開幕が楽しみ。