English Air:オーストラリアで今も愛され続けるイギリス音楽

以前オーストラリアのサッカー環境におけるヨーロッパ諸国からの移民の話についてこちらの記事で書きましたが、なんだかなんだ言っても移民人口の数は(歴史的に見ても現在も)イングランド系が圧倒的に多いですしその影響はサッカーに限らず大きいです。
特にクラシック音楽では大分前にイギリスの音楽とは全く違うオーストラリアのアイデンティティが芽生え発展していますが、それでも音楽に触れる環境においてはイギリス音楽が深く根付いているのが日々感じられます。

例えば同じラジオ媒体での人気曲投票である英Classic FMのHall of Fameと豪ABC Classic FMのカウントダウンに出てくる曲を比べると違いも少なからずあるもののエルガーやヴォーン=ウィリアムズなどイギリスの作曲家の人気は共通していたり。そんなオーストラリアの音楽文化環境で出会って「もしかしたらこれは日本で音楽やってたらこんなに気軽に出会えなかったかもしれないぞ」というイギリス音楽の作品をいくつか紹介したいと思います。

ヘンリー・パーセル ディドとエネアス
まだ私が学校において音楽で頭角っぽいなにかを表していなかった中学1年生に学校のコンサートで演奏されて出会った曲。その音楽の良さに気づいたのは大分経ってからでしたが(それでも声楽が強い学校でやるにしても大分渋い曲だと思う)上記カウントダウンでちょこちょこランクインするくらいには有名で人気の曲。こないだもネットで声楽の人と最後のアリア(リンクしたトラック)素晴らしいよねーって話になりました。

ヒューバート・パリー 「エルサレム」
イギリスの夏の音楽の祭典BBC Promsの最後のコンサート(ラスト・ナイト)で歌われる曲(リンクしたのもBBCの録音)。イギリスではこの歌の他にもいくつか第2の国歌的な位置づけで斉唱される歌があるのですがオーストラリアの人(少なくともクラシック音楽ファン)もそういう歌を結構知ってることにびっくりしました。こちらでもイギリスに合わせてラスト・ナイトコンサートやるとき会場の雰囲気は普段感じるよりずっとイギリスなんだろうなあ。

エドワード・エルガー エニグマ変奏曲
この曲が英国文化圏外でどういう立ち位置か分からないのですがカウントダウン企画ではいつも予想よりさらに上位だしライトなコンサートでも弾かれるし広く人気なのがうかがわれます。一番有名な第9変奏「Nimrod」(リンクしたトラック)の部分の限りなくイギリス的なメロディーの美しさが人気の鍵とは思いますが、実はこの曲の第13変奏はオーストラリアへ船で旅立つ友人に向けたものとも言われていて予期せぬ縁がこんなところに。

ベンジャミン・ブリテン 四つの海の前奏曲(「ピーター・グライムズ」より)
この曲は他の4曲とちょっと違って泣かせにくるようなメロディーがあるわけでもなく、特別好きだとかポピュラーだという声を聞かないながらも定期的にコンサートのプログラムに登場する印象があります。ひょっとしてブリテンの作品で一番弾かれている?曲の良さはもちろんですがオーストラリアは主要都市の多くが海岸沿いにあって海が日常生活・文化で身近なため題材としても馴染みやすいとかあったりするのかな?

ヴォーン=ウィリアムズ トマス・タリスの主題による幻想曲
自分がイギリス音楽に「沼落ち」したきっかけの曲です。学校でも弾きましたし大学でも他の機会でも何度も再会した作品。出会う頻度は多めですがまだまだ飽きなく最高に美しいと思えます(少なくとも私は)。天井の高い場所でまた聴きたい。ただ同じヴォーン=ウィリアムズでも交響曲はオーストラリアでもまだ演奏頻度が少ないのでもっと愛されて欲しい・・・

ここまで色々曲選びにかなり頭を抱えて結局歌曲をほぼ選ばずに終わったのですが詩をはじめとした文学もまたオーストラリアで浸透しているイギリス文化でそこを広げ始めるとまた別の話になってしまいそうなので機会があればまた。
それよりも「じゃあオーストラリアのクラシック音楽はイギリス音楽とどう違う方向に進化したのか」の方が書きたい気がするのでそちらを次回書けたらなと思います。