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Aリーグ男子2021/22シーズン閉幕。

まえがき
めっちゃ長くなってしまったのでダイジェスト版とするなら
・ベストゴール集の動画
・Here Comes the Future斜め読み
・名勝負のセクション
だけでもよろしくお願いします

紆余曲折が色んな時点で生じ、駆け足なようで長いような不思議な、でもとてもエキサイティングなAリーグ男子のシーズンが終わりました。
まずはリーグを首位でフィニッシュしたPremiersのメルボルン・シティ、そしてファイナルシリーズを制したChampionsのウェスタン・ユナイテッドにおめでとうを。
ウェスタン・ユナイテッドはこれがクラブの短い歴史で初タイトルですし、とにかくファイナルシリーズで圧倒的に強く、レギュラーシーズンからは想像できなかった強い力をもって両手で優勝をもぎ取っていった感があります。

今シーズンは大変なこともありましたがとにかく全体を通して楽しいこと面白いことすごいこと目玉が飛び出ることたくさんありましたね。ベストゴール集をまとめればあれもこれも入れないのが惜しくなるしハイライトを見れば「でももっともっとあったよ」と足したくなる、語りたくなる。楽しくて終わるのが勿体ない気もするけど同時にグランドファイナル終了時点で満足も感じるシーズンでした。
なにはともあれ今期ベストゴール候補コレクションだけでも見てってください。

ちゃんとしたレビューに入る前に一つ:シーズンを通してNSW州での試合での悪天候率かなり高かった!自然災害になった時期もありましたがそうでないときもまあ頻繁に雨が降る。メルボルンは全然そんなことなかったのに。夏期のシーズンでこれとはやっぱり気候変動の足音なのか、来シーズンはこちらもある程度備えておかなければいけないかも。

男子のシーズンもやっぱりカオス

Aリーグ女子のシーズンの大変さにはその短さと忙しさが少なからず関係してたような印象だったので、男子はもうちょっと期間に余裕があるのでさすがにそこまでじゃないだろうと思ってたのですが見通し全然甘かったですね(汗)
コロナに関係あること関係ないこと色々あって日程的にスムーズに行かない部分もありましたし、本拠を一時移転したウェリントンやパースを筆頭に各クラブの状況がそれぞれ違うイレギュラーで改めて振り返ってみると厳密に公平じゃない部分もあったと思われます。
マッカーサーが中断期間の後に調子を落として戻れなかったことやパースがパースに戻ってから怪我人が続出したのを見ると全体的にコロナの影響はむしろ男子の方が大きかったのかな。

何度か書いているようにAリーグはリーグ内での格差が少なく元々どこがどこに勝ってもおかしくない環境でありますが4月上旬のカオスは特にすごかった。

4月5日:セントラルコーストvsウェリントン 5-0
4月6日:シティvsシドニー 4-0
4月9日:ウェスタン・ユナイテッドvsウェリントン 1-4
4月9日:ヴィクトリーvsシティ 3-0
4月9日:セントラルコーストvsシドニー 0-5

数日の間で割とハイスコアでどこが食うか食われるかわからない、なんじゃこりゃな展開でした。

そして現在Aリーグは昇格・降格のシステムはないのですが、

・1~6位がファイナルシリーズ参加
・1~4位はファイナルシリーズのなんらかの試合を確実にホーム開催できる
・1~3位くらいまでがなんらかのアジアの大会参加(詳細未定)
・9~12位がカップ戦のプレーオフ(うち2チームが脱落)

とほとんどの順位に様々な意義がある仕組みになっています。特に今期は12位は早々に決定したものの順位表の一番上あたりと真ん中あたりが終盤まで混戦だったこともあっていわゆる「pointy end」の各試合の重みがすごく、最後まで色んな方向に転び続けるドタバタのシーズン展開となりました。

Here Comes the Future

放送・配信局が新しくなった今シーズンのAリーグのキャッチフレーズは「Here Comes the Future」(未来がやってくる)でした。
コロナの影響が始まった前シーズンに引き続き今期も今後が楽しみになるような若い選手たちが起用されスポットライトを浴びる、というメッセージ。
そのキャッチフレーズに見合うシーズンだったか、というと少なくとも自分にとっては予想以上のシーズンでした。

クラブ単位の話ではアデレードやセントラルコーストのような地元の若手を多く起用するクラブが上位に入りかなり手強かったこと、そしてそういう環境で躍動する監督達の存在という「組織」の部分も大きかったですが、「個人」の部分でもセントラルコーストのGarang Kuol君やアデレードのNestory Irankunda君のように交代で入って凄まじいインパクトを残す16歳とか17歳の選手の登場、そしてウェリントンの選手たちを初めとしたチームの命運まで背負う活躍をした若い選手達の働きも目にすることに。

3月くらいだったかな、世界&アジア各国の国内リーグでの若手の出場時間がデータとして発表されてAリーグがその界隈で結構先進的であることが数字で出たときは色んな方面でどよめきましたね。Aリーグは若手に出場機会を与えていないというのが定説でしたし実際コロナ禍まではそうだったはずでしたが、必要性もあったとはいえ短期間でこんなに変わるとは。

それを反映するように直近のU23代表ではAリーグに出場してしっかり経験を積んだ選手達が多く招集されていますし、ACLグループステージ中に公式アカウントが取り上げてたのもこの世代。
それに加えてギリギリ若いといえる?20代半ば近くの選手の成長も(ヴィクトリーの場合この世代が「若い」のメイン)わくわくするものがあり。

ついでにというかおまけというかダメ押しのようにAリーグオールスターがFCバルセロナを迎えた試合(このエキシビションマッチについてはまた後日)でこんなものも見れたんですから。やっぱり未来は本当にやって来ているようです。

監督達もまた主役

シーズン後半において順位が決まらないままぐるぐるしてたのと同じくらい今年の最優秀監督の候補も絞りきれないままファイナルに突入していたのも今期をよく表す現象だったと思います。
補強からコロナ関連諸々の対応から戦術からメディア対応まで、ピッチ内外の様々な事柄で監督が注目されるシーズンでした。
Aリーグで監督に返り咲いてチャンピオンとなったチームを率いたJohn Aloisi、最下位に落ちたビッグクラブを2位(+タイトル1つ)まで引き上げた我らがTony Popovic、若手の力を引き出して強いスカッドに仕立てたCarl VeartやNick MontgomeryやUfuk Talayなど、様々な意味ですごい監督がこのリーグにはたくさんいます。そして監督達も選手と変わらないドラマとストーリーを背負っている。(来シーズンのプレビューを書くのが楽しみです)

同時にAnte Milicicさんが監督業から身を引くこととなったのはとても惜しいです。あれだけの監督が、と思うのですが彼の監督としてのキャリアは様々なクラブの立ち上げに関わったり突然女子W杯でチームを率いることになったりコロナ禍の諸々もあったり、全部足してみると積もる大変さが他の人とはちょっと違ったのかも、という印象があります。オーストラリアでサッカー、特に監督をやるのは割に合わない部分も少なからずあってなんとかしなきゃいけない課題もまだまだたくさんあることを突きつけられたような出来事でした。

放送に関するエトセトラ

今期はAリーグの放映権がChannel 10系列の地上波・サブチャンネル・有料配信サービスに変わった1年目で、ここでは詳細を省きますが様々な側面でファンが不満に思うことも色々とありました。技術的な面や広告、プロモーションなどこれからなんとかしていってもらえればいいなあと思うことたくさん。ピッチの上で選手や監督ができることはできる限りやってることが示されたシーズンだったので今後はもっと周りからサポートが欲しい。
みんなが望んでいるであろう分かりやすい諸々改善以外だと海外配信用のアドレスを毎回宣伝して欲しいなとかも私は願ってます(引用RTして紹介したいので)。そもそもコンテンツ全般のアクセスの改善が急務ですけどね。

でも今シーズンはAリーグの放送周りの関係者、主に実況解説コメンテーターの皆さんをすごく好きになったシーズンでした。Channel 10は本当にオーストラリアのサッカー界隈でAリーグへの愛を積極的に発信してくれる実況・解説・コメンテーターの皆さんをそろえてくれましたし、試合前・後番組などを含めても関わる人たちみんなのファミリー感があって楽しかったです。
次のシーズンでメディア関連プレビューも(海外向け配信で反映されない可能性もわかってますが)書こうと思っています。

あとAリーグ公式周りの諸々番組も楽しみが色々。ハイライト番組で諸々チェックするのはもちろん、公式ポッドキャストもRound Ball Rulesも素晴らしいコンテンツだと思います。Aリーグをもうちょっとよく知るのにオススメ。

今期生まれた名勝負

こないだ今シーズン生まれたすごいゴールについて記事を書いて(そしてその後も色々発生した)、素晴らしかった・楽しかった試合についても独立した記事を書くべきかと思ったのですがレビューに含めることに。

でもとにかく内容だったり背景のストーリーだったりハプニングだったりスピリットだったり、見応えがあって楽しい、色々な意味で面白い試合がたくさんありました。あえて自分にとってのベストをあげるなら(リンク先は可能な場合は長めのハイライト):

・2021年12月18日 メルボルン・シティvsメルボルン・ヴィクトリー 「史上最高」とも言われたクリスマスメルボルンダービー
・2022年4月23日 ニューカッスル・ジェッツvsセントラルコースト・マリナーズ 白熱のF3ダービー
・2022年4月13日 ウェスタン・シドニー・ワンダラーズvsセントラルコースト・マリナーズ 10人での怒濤の追い上げ
・2022年2月10日 セントラルコースト・マリナーズvsマッカーサーFC スーパーゴール2発が生まれた試合
・2022年4月24日 ウェリントン・フィーニックスvsウェスタン・シドニー・ワンダラーズ NZ帰還したNixに天が微笑む
(おまけ1)2022年2月5日 メルボルン・ヴィクトリーvsセントラルコースト・マリナーズ がっぷり四つのFFAカップ決勝
(おまけ2)2022年5月25日 AリーグオールスターvsFCバルセロナ 寄せ集めのチームとデビュー監督がスター軍団に挑む

なぜかチームが偏ってその結果シドニーダービーがどうしても外れてしまったので次のシーズンはもっと熱いシドニーダービーをお願いします。

これからに向けての観客の話

充実する要素、楽しめる理由がたくさんあるAリーグのシーズンではあったのですが今後に向けて課題も山積みなのは確かなこと。
でもまずはシンプルにスタジアムに見に来る観客、そしてテレビなどで試合を観る人を増やすことは急務と言われています。

マッカーサーやウェスタン・ユナイテッドみたいな新しいクラブはまあしょうがないんですけど、今期は本当にヴィクトリーのサポーターの存在感が圧倒的だったというか。数だけでなく声の大きさもそうですし。よくサポーターのことを「12人目の選手」みたいに言いますがうちだけもう1人分くらいアドバンテージになる場合もある気がしました。

それが一風変わった形で現れたのが最終節のメルボルン・シティvsウェリントンの試合で、シティが引き分けor負けでヴィクトリーが首位フィニッシュになるということでウェリントンの応援にヴィクトリーサポが多数駆けつけてこの2チームの試合では観られない雰囲気を提供することになった珍事件(?)。
ヴィクトリーサポーターがよくメルボルンの他のクラブのサポーターが少ないことを煽るのは「こっちに頼らずそっちももっと数集めてサポーター同士も対等な勝負してメルボルンでの試合もっと盛り上げようぜ」みたいな精神もちょびっとはあると思うんですよね(普通に単に煽ってる部分もあるとは思いますが)。同じ事はAリーグの他のクラブ(主にシドニー方面)にも言えること。NinkovicさんにAAMI Parkに来たときに「こういう雰囲気がホームでも欲しい」とか言わせなさんな。

あと次のシーズンに向けての展望にはまだ早いですが最後に一つだけ。
Twitterでも書いたとおりシドニー周りのクラブ(シドニー、ウェスタンシドニー、マッカーサー)はこれからのオフシーズンの間にかなりの変化を迎えると思いますがメルボルンの3クラブは来期もかなり強いはずなのでちゃんとやらないとファイナルシリーズの試合をメルボルン勢がまた独占することになりますよ、ということはこちらでも言っておきたいです。

来季も小さくても競争力のあるリーグで(もちろんヴィクトリーも強くなって)白熱する試合とわくわくするプレーがたくさん観れますように。