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音楽をやる人にバレエを勧めたいいくつかの理由

クラシック音楽とバレエはそもそもがものすごく近いジャンル同士で、特にオケ関連の知り合いなんかはよくバレエの方でも演奏したり、ピアノ関連の知り合いはたまにバレエレッスンでのピアニストをやった経験がある人がいたり、観劇に関してもクラシックのコンサートもバレエも観るよー、という人が結構いるのですが、意外と音楽方面の知り合いでバレエを実際に踊る人は少ないのがたまに不思議に思います。

多分「言語」の問題というか、私にとって絵を描くことや作曲することが自分の表現の言語でないように踊りが表現の言語でない人は結構いるのかなと思いますがそもそも「踊る」ということを自分ですることまで考えなり行動なりがたどり着かない人もいるのかと思われ。
でもバレエを(8年くらい前に)再開したことでどれくらい音楽面でも影響があったかを改めて考えると他の人にもちょっと勧めたくなったり。
ということで音楽を多少なりやる人としてバレエをやっててここが良かった(そして逆方向も)ということをちょっとばかりまとめることにしてみました。

1つ目は音楽と自分が繋がる感覚がまるで違うこと。楽器を弾いているときのメンタルのつながり+筋肉を通じた繋がりのバランスがまず違って後者の割合が圧倒的に大きく、しかも(おそらくどんな楽器でも)楽器を弾く時とは違う筋肉にまで音楽が届くのが感じられるのがすごく面白いし気持ち良い。もちろんまだそんな域では自分も全然ないのですが、それでも全身で音楽を感じ表現できるような感じ。
特に朝のレッスンに行くと朝から身体も起きますしなにより耳ががっつり覚めるのがすごい。音楽をただ聴くのとも朝から練習するのともちょっと違うレベルで覚醒します。

毎回バレエのレッスンに行くと(録音を使う場合でも)ほぼ毎回違う音楽に合わせてレッスンをするのでその分だけ違う音楽に出会います。クラシック音楽やポピュラー音楽のアレンジなんかも使われててたりして、踊りながら自分の中で曲当てクイズが始まったり。もちろん「これそんな風でいいのかー?」というアレンジにも出会いますが気の利いたアレンジも数ありますし、予期しない好きな歌に出会って密かににやりとしたり、「この曲に合わせて踊れるんだ!」とちょっと感動できたりもします。シベリウスのバイオリン協奏曲とか、本来バレエ用じゃない素敵な曲を踊りとして楽しむこともできたり、色々新鮮な体験。

そして踊ってると弾いたり聴いたりしてるのとまた違う音楽の見方、解釈の仕方を多々するようになります。テンポだったりリズムだったりはもちろん、特にフレーズの始めをどう見るか、同じ音楽・同じ振りでもいくつか違う音楽と時間の使い方ができることに気づいたり、それを試してみたり(レッスンのほとんどが同じことを右側・左側で繰り返すのでちょっと音楽の捉え方を変えたりみたいなことが割と手軽に出来たり)。
いかに自分の動きのディテールを突き詰めて音楽にもっと合うようにできるか、ということもモチベーションになります。
あとビギナー特有の特殊なケースかもしれませんがたまに「無理して音楽に合わせることをせず音楽の拍を完全に無視して自分のできるスピードで踊る」というスキルを身につけるのも興味深いプロセスでした。

そうやって音楽に合わせて踊っているうちに気づくのが「いつも思っているより音楽の中に時間がある」ということで、これが多分自分にとってバレエをやってて得られた物で一番大きなきづきでした。レッスンのほとんどの場面で、教わった動きを普通にすると目的のポジションやポーズに至ったあと時間が余って、それをどうするかが表現のうちで。ゆっくりの踊りではポジションをキープすることの難しさ、そしてキープするだけじゃいけないことを身を以て学びます。それから速い踊りでせわしい音楽を使っていても踊ってみると音と音の間にも結構時間があることが感じられるようになったり。そういった経験が弾く方でもフレーズの終わりをより大事にしたり、焦らないことに繋がるという意味で特に自分にとっては意義がものすごくありました。

バレエを踊るというのはビギナーレベルでも結構総合的で複雑な身体の動きで似たようなアクティビティってあんまりない、経験ゼロから始めるには全部新しいことばかりという人が多いと思われますが、楽器なり歌なり音楽をやっている人の耳は必ず助けになります。これまでの先生みんな私が音楽やってることすぐ分かったらしいですからやっぱり「音楽に合わせて」動くというところでアドバンテージは存在する。というか動きが音楽に合っているということだけでちょっとうまく見えることは少なからずあると思います。

10代半ばくらいから長いことバレエをやってなくて運動神経は人並みでスタミナもなく私ですが再開して以来「ほぼ耳でバレエ踊ってる」「音楽の奴隷」とか自虐的に言いながらここ8年近く毎週楽しく踊っています。
やっぱり音楽が好きで、聞くだけじゃなく何らかの形で音楽を自分の手(身体)でなんとか扱いたいという欲が強いのかな。
そして6月の発表会で今度は他人が踊るのに合わせてピアノを弾くことによってまた違う方向からバレエと音楽を見ることになるのがまた楽しみです。
引き続きうまいことバレエとピアノをつなげて両方の成長と楽しみになるようしていきたい。もちろん身体の方が続く限りですが。