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A-Leagues All Accessエピソード06~10見どころなど

A-Leagues All Access各エピソード紹介記事、第2弾です。
エピソード01~05はこちら。

そしてエピソード11、John Aloisi主役の回だそうですが1月26日夜に公開。こちらのKeepUp公式Youtubeチャンネルで是非。

エピソード06:Milos Ninkovic「Pressure is a Privilege」

このエピソードの主役:
Aリーグに外国からやってきてスーパースターじゃないけど長年リーグのトップクラスの外国人助っ人として成功して定着して、という選手の最たる例として挙げられるのが元セルビア代表MFのMilos Ninkovic。彼の名前と功績はシドニーの東側であるシドニーFCと同義的に語られてきましたが2022/23シーズンを前にして契約延長にトラブルが発生し、なんとライバルクラブであるウェスタン・シドニー・ワンダラーズに禁断の移籍をすることとなりました。
このエピソードで取り上げられた試合は男子第6節(11月12日)、Ninkovicさんが西側に移って初めてのシドニーダービー。しかもシドニーFCのホームです。ちなみにシドニーFCのアクティブサポーターであるThe Coveはコレオの規模と完成度がぶっちぎりでリーグ最高で、彼らがこの試合に準備した作品は必見です。

注目ポイント:
シドニーの東と西がぶつかるシドニーダービーはAリーグで一番盛り上がるダービーと伝統的に言われています。ここ数年色んな理由で若干おとなしかったことはありますがワンダラーズが強さを見せたこと、この禁断の移籍、シドニーFCにとっての新しいスタジアム完成などで今シーズンは勢いを取り戻した感があってそれがこのエピソードでもひしひし伝わってきます。昔から移民が多くこの国のフットボールの中心地域とされてきたのは西側で、ワンダラーズがその魂と情熱を担うチームであり、それを体現する必要があることはMarko Rudan監督の試合前のスピーチにも強く現れています。
そして実はセルビア人であるNinkovicさんもその「西の魂」をそもそも持っている事もまたこのエピソードで仄めかされています。彼が試合の前に精神の拠り所として教会にいっているシーンがとても象徴的で、シドニーの西側に今もある「旧いフットボールの価値観」と同じところにあるというか。シドニーFCの水色を纏って華麗にフィールドを支配した姿と、赤と黒を着て荒々しさのあるワンダラーズのサポーターと間近に喜びを分かちあう姿の二面性を特に長らくAリーグを追っている人に突きつけるようですごいエピソードだと思いました。

エピソード07:Chloe Logarzo「Be Strong Girl」

このエピソードの主役:
オーストラリア女子代表Matildasの主力MFとして国内で、そして海外は主にアメリカで活躍してきたChloe Logarzo。2021年9月の怪我以来長期離脱を経てクラブ、そして代表チームに復帰した彼女が2023年の自国開催ワールドカップに向けて挑戦の場に選んだのはAリーグ女子に新しく女子チームができたウェスタン・ユナイテッドでした。
そしてこのエピソードで注目するのはそのウェスタン・ユナイテッド女子の史上初の試合(第1節、2022年11月19日)。ベースになったヴィクトリア州NPLのコルダー・ユナイテッド時代からホームグラウンドとしていたCity Vista Reserveでコルダーを良く知る選手が何人もいるメルボルン・ヴィクトリーを迎えます。

注目ポイント:
Chloe Logarzoといえば生まれも育ちもシドニーで、Wリーグ(旧称)時代はシドニーFCの選手として名を馳せていました。そんな彼女がW杯に向けた大事な期間にシドニーではなくメルボルンのクラブを選んだ理由がこのエピソードで語られています。怪我を負ったその時からW杯に向けてひとときも無駄に出来ないと語っていましたがピッチに復帰してからの思いはストイックさをさらに増し、全身全霊フットボールに集中するめに家族やパートナー(彼女のセクシュアリティに関しても触れています)から離れて「人生を一旦保留」する、その決意の強さとその大変さ。まだ毎試合90分とはいきませんがクラブでの活躍が次の代表期間に実るか注目です。
そして先ほど書きましたがウェスタン・ユナイテッドの女子チームはメルボルンの西の強豪コルダー・ユナイテッドを基盤に、プロクラブとして米代表のベテランJessica McDonaldを筆頭にChloeや他の代表級の選手で補強増し増ししています。その結果が今シーズンの成績に直で現れてることもすごいのですが、新しいチームらしい(=ウェリントン女子で見たような)初々しさが全くないのもすごい。選手の名前の並びを見ても思いましたしこのエピソードで映像で視覚的にも実感しました。これはもう強者でしかないチーム。アメリカ方面から期限付き移籍で来た選手が何人か去る中このチームがシーズン後半どこまでいけるか楽しみに追ってみて欲しいです。

エピソード08:Kayla Morrison「As You Are」

このエピソードの主役:
メルボルン・ヴィクトリー女子チームのキャプテンであり守備の要、アメリカ生まれのKayla Morrisonが今回の主役です。
ヴィクトリーに来て最初の年(2020~21)にVictory Medalを受賞し、次のシーズンはキャプテンに任命されたものの開幕節の30分頃に前十字靭帯断裂損傷によりシーズンアウトになってしまいました。
長いリハビリ中もチームと共にいたもののヴィクトリー女子がチャンピオンになった際には喜びもありながら複雑な思いがあったことも語っていて、2022~23シーズンは思いも新たに再びキャプテンとしてヴィクトリーをタイトルに導こうとしています。
題材になった試合は第2節、アウェーでのシドニー戦(11月26日)。これまでシドニーとはレギュラーシーズンだとシーズン後半に1回しか対戦がなく、あとはグランドファイナルで当たる(そして過去2回勝った)だけでしたが、今期はホームもアウェーもあるのでこんなに早いタイミングでの(相手にとっての)リベンジマッチ。

注目ポイント:
Kaylaって試合で見てても堂々としてフィジカルの強さを発揮することも厭わない強い選手で、ピッチ外でも同じキャラクターで、チーム内では母親的な役割で。だからこそ彼女がこのエピソードで手術を終えて車いすに乗って出てくる場面やインタビューを受けて涙したりしているのを見るのが本当に辛かったです。基本的に1年ピッチに立てないような怪我をすると選手は表舞台にあまり出てこなくなりますが、どんなリハビリをしているか、そしてそれがどんなに大変でどう大変かという話、それからその間の孤独の話も最近はだんだん語られるようになった気が。そしてそういった期間にどうクラブやチームが負傷した選手を支えるかも大事になってきていて、その一部としての前期のグランドファイナルでの話もこのエピソードで触れられています。
試合のシーンでちょっと面白いなと思ったのがヴィクトリー女子監督のJeff Hopkinsと副審のピッチサイドの会話がしっかり聞けたこと。監督が主審や副審に色々言ったりするのは日常的にありますがどんな内容のことをどんなスタイルで言ってるかは監督人それぞれ。Jeffはなんというかチクチク言う感じ(映像内で交代になった選手の怪我が結果けっこう重かったこともありますが)。そんな監督のあしらい方も含め審判の皆さんほんと大変なお仕事です。

エピソード09:Melissa Barbieri「Don't Look Back」

このエピソードの主役:
現在メルボルンシティのゴールキーパーでMatildasでも長らく活躍していたMelissa Barbieri。Bubsとの愛称でも知られています。Wリーグ・Aリーグの試合出場数は100を超え、数々の国際大会にも出場して今年で42歳(Aリーグ男子・女子合わせて最高齢、そして最長のキャリア記録)になりましたが未だ現役ですしGKにしてはだいぶ小柄ながらもゴールを守ってます。最近はセミプロのリーグでも実況や解説をやってたり選手として以外でも活躍の場を広げ、オーストラリアのサッカーではある種の「生ける伝説」みたいな域に達してると思っていいんじゃないかな。
そんな彼女に焦点を当てた試合が第3節のホームのブリスベン・ロアー戦(12月3日)。この試合はBubsは控えとしてベンチに居ましたが正GKの負傷で試合終盤にピッチに立つことになったため試合のシーンにしっかり出演しています。

注目ポイント:
Bubsはオーストラリアに女子サッカーの概念がなかった時代からピッチに立っていて女子サッカー選手の一番大変な全てを経験してきた偉大なパイオニア。例をあげればきっとキリが無いと思われますが、大きめの例でいえば現役選手として、そして代表選手である間に出産と子育て(娘さんちょっとだけ出てきます)を経験したこと。それから彼女は若い頃の怪我をきっかけにゴールキーパーになったこともあっていわゆる「足元の上手いゴールキーパー」が当たり前というか主流になる前にそういう存在だったり。たくさんの苦労を含めたその経歴の詳細はこちらのポッドキャストのインタビューで知ることができます。
Aリーグでまだまだバリバリ現役できるよ、といっても一応今Bubsはシティでは控えGKという立場になっています。正GKはSally Jamesという20歳の選手でU20W杯にも出場した才能あるキーパーなのですが、まだまだ学ぶことも多かったりそれからちょこちょこ怪我をしたりで(これを書いてる現在も離脱中です)控えにもかなり出番があったりします。同じチームのゴールキーパー同士の関係性やチームワークはチームによりそれぞれですがBubsとSallyの関係性やアプローチの話も色々語られて興味深いポイントでした。

エピソード10:Ruben Zadkovich「Beautiful, Not Perfect」

このエピソードの主役:
今回の主役はパース・グローリー男子チームの監督Ruben Zadkovich。このエピソードが配信された時点でAリーグで年齢・トップチームの監督経験ともに最も若い監督です(36歳、2022年就任)。オーストラリアのサッカー周りで選手時代から知られている名前ですが監督としてどうなのかという話も出たり、すでに名を馳せている他のクラブの監督に比べると全般的に知られていないことも多いため主役としてはなかなか面白いチョイス。
そんな彼に密着する試合は男子第7節、12月10日のウェスタン・ユナイテッド戦。217日ぶりにパースで開催されるホームゲームで、新しく仮のホームとなったMacedonia Parkというグラウンドでの初めての試合です。

注目ポイント:
州ごとに法規制が異なるオーストラリアの中でパースがある西オーストラリア州は特にコロナ禍で渡航関連で厳しい規制を受けました。なのでAリーグが再開してもパースを離れて何連戦もアウェーゲームを続けたり、州外の拠点をホームとしたり、多々の苦労がありました。そして今シーズンが始まるタイミングで本来のホームスタジアムHBF Parkが2023年女子W杯に向けて改修となり、最初の6試合をすべてアウェーとした上で急遽Macedonia Parkを仮のホームとすることに。
Macedonia Parkはパースの中心部からちょっと離れた収容人数4500人の小さいグラウンドですがそのため観客で一杯にできる、それをZadkovichさんは「パーフェクトじゃない、でも素晴らしくて自分たちにはちょうどいい」と称しています。実際この記事を書いている時点ではこのグラウンドでの6試合無敗と完全に西の砦に。
そしてこの試合で出てくるゴールにも是非注目して欲しいです。Aリーグ(男子に限らずですが特に男子)はびっくりするようなゴールが頻発するリーグで、それが文脈を無視した状況で現れたり、その後の試合展開に大きな影響を及ぼすこともしばしば。このエピソードで出てくる3つのゴールはそんなAリーグをよく表してるように思います。
あと完全なるおまけですがサッカーとか全然関係なくZadkovichさんの奥さんがベジマイトサンドイッチを作ってるシーンは要注目。ベジマイトってあんなちょっと塗るだけでいいんです。

次回(エピソード11~15)に続く。